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4章

105話 3人目

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 さて、情報クランに結構な爆弾と言うか文字通り銃弾を撃ち込んで、ほくほく顔のまま冒険者ギルドに行って自室の地下を拡張する。ついでに新事実だったのだが、地下1F増えるごとに5万ずつ金額が上がる。いくら地下を掘り進めることが出来るって言っても限度があるって事だな。そもそもそこまで地下を掘り進めるっていう予定はなかったので問題ないと言えば問題ないのだが。

「後は醸造用の樽を用意だけど……失敗したな、木工ギルド抜ける前にギルドショップのレシピ見ておくべきだった」

 後で気が付いて後悔するタイプ。……言うほど後悔してないので、さくっと入りなおしとかショップ確認するだけでいいので大した痛手でもないのだけど、こう言う所が微妙に効率厨としてダメな所だよな。
 とにかくこれで準備は結構進んでいるわけだし、ジャガイモを増やして焼酎というか酒造で、スピリタス製造までが望ましい。それでも96%までしかアルコール純度がいかないけど、それぐらいあれば十分だろう。

「さてと、やっぱり木工かあ……っていうか樽って金属パーツも使うから鍛冶もいるんだったりして」

 やろうとするとそれに対して必要な物がぽつぽつと出てくるのが問題と言うか、いつもの事になってる気がする。厄介な星の元というか、厄介な事に足を思い切り突っ込んでやってるってだけなんだろうな。とは言えそれが億劫だったり、面倒だとは思ってないが。

「思いついたそばからやってるから失敗するって学ぶべきなんだろうけど」

 今まで計画通りに進んだ事あったかな?あっち行ったりこっち行ったり遠回りしながら結局辿り着いてはいるけど、あれがいるこれがいるでぽこぽこと問題が湧いてるし、すぱっと一発で言った事って錬金で火薬やら雷管を作れた時とか、試作していい感じにいった時くらいか。

「まあ、クエスト受けてさくさくレベル上がって楽に進むMMOに比べりゃ全然マシか」

 最近は自動狩とかもあるみたいだし?MMOもスマホとかでも出来る程だし、ユーザーを逃さないような作りにするのは必然なんだろうけど。その代わりガチャとか課金要素持ったりとか方向性がおかしくなるのも散々見てきたな。

「とりあえず売ってるかどうかも確認するとして……やっぱ生産職の知り合い増やすしかないなあ」
「僕とのフレンド交わす事もしなかったですし、無理じゃないですか」

 いつもの様に煙草を吹かしている所を話しかけられる。
 私の目線の先には誰もいないので声の元へと目線を下げていくと、低身長の声の主を視認する。

「私の知ってる相手にこんな金属の塊みてーなやつはいねーぞ」
「イベント終って数日で忘れる方がどうかしてると思いますけど?」

 金属塊、以前見たときよりもかなり重厚にかつ、歪になった鎧や盾を持っているドワーフであろう人物がぷりぷりと文句を言っている。
 そうしてしばらく無意味というか無駄な会話をしていると、じゃこんとフルフェイスヘルムのバイザーをあげて不満げな顔で此方を見上げてくるチェルシーの顔が見れる。

「なんか前よりごつくなってない?」
「用途に合わせて変える様にしてるだけですよ」

 目の前で装備の変更が行われ、軽装にタワーシールドの状態になってからふんすと得意げな顔を浮かべる。イベント中は頼りなさ過ぎたくせに。

「ちょっと、なんですか!」
「べっつにー?」

 頭を掴んでわっしゃわっしゃと撫で繰り回そうと思ったが、ハラスメントブロックで阻まれる。そういやフレンド結んでないんだった。

「それで、何でこんな所にいるのよ、メインタンク様は」
「クラメンの紹介を受けにこっちにきたんですよ。アカメさんがリーダーだっていうせいで今までより大変なんですから」
「いーじゃん、イベントの時の連中と仲良くやってんでしょ?」

 立ち話も疲れるので手頃にあったベンチに座って煙草の煙をぷはーっと吐き出す。このゲーム街中にベンチがかなり多く置いてあるの、すげえいい。別に立ちっぱなしでも何でもいいけど、こういうちょっとした会話をしたり、何かする時にベンチ1つあると結構使えるし。

「今じゃクラメン100人規模の大所帯ですよ……ちょっと手伝ってくれてもいいんじゃないですか?」
「やーよ、気楽にゲームしたい派なのよ、私……そもそもマイカの奴もいるんだから誘えばいいでしょ」
「あの人はアカメさんと一緒ですよ、自分の事と言うか強い相手にしか興味ないですから」
「あんなバトルジャンキーと一緒にすんじゃないわよ」
 
 近くにいるチェルに向かって紫煙をふーっと吹きかける。煙草特有の嫌な臭いではなく、香草の匂いを掛けられ軽く咳き込みつつ微妙な顔をする。

「んぷっ……って言うか煙草なんて持ってなかったのに何で急に……」
「銃とキャットスーツと煙草の3点セットの美人って素敵でしょ」

 コートをめくって腰に下げている銃を見せてから得意げに。

「否定しきれないのが悔しいですね……それで人がどうこう言ってましたけど」
「ああ、そうそう、今さあ醸造と畑に手出してんだけど、そっち関係のそれなりにやりこんでるのを探そうとか思ってるのよね」
「醸造と畑って……また怪しい事に手出してるんですか?」
「いやー?家と畑買っただけだし」
「……僕たちまだクランハウスさえ持ってないんですけど」
「120万ぽんと出せる財力持ってるのすごくねえ?ねえ、すごくねえ?」
「なんか腹立つんですけど」

 そういいながらも別ウィンドウでクラメンにファーマーについて聞いている辺り、手際が良いな。ちょっとしか私と組んでない割に私の事を理解しているって点ではかなり偉い。

「とりあえずメンバーに聞いてみましたけど、しばらくかかりそうですよ」
「まー、いいわよ、時間かけてやろうと思ってた計画だし」
「ならいいですけど、あと捕まえた理由はこっちです」

 通知音が響くのでさくっとメニューを開いて確認するとフレンド登録の申請が飛んでくる。一回拒否していじわるしてみたら結構ぷんすこ怒ってきたので2回目で登録しておいた。何だろうな、この虐めたくなる衝動。別にそういう趣味はないけど。

「それにしてもいつクランなんて作ったのよ」
「あれからすぐですよ、結局担ぎ上げられて大変だったんですから」
「そのおかげで私は目立たずに気楽に色々できたわ」
「……目立たない……?いや、そんなことは……」
「じゃあ連絡待ってるから」

 ちょうど吸い終わった煙草をいつもの様にぴんっと投げ捨て、ベンチから立ち上がって伸びをする。とりあえずこれからやる事としては木工ギルドかショップに行って樽を探して、それを大型化するかどうかを考えないとな。それにしてもやる事多いと大変だよ、まったく。

「え、ああ、はい」
「じゃ、よろしく」

 手をぷらぷらと振って頼んでからその場を後にする。それにしてもいつの間に3倍の大きさになったんだ、あいつのクランは。まあMMOのクランとか派閥ってネズミ講みたいなもんだから、そのうち千人規模とかになって大手になったりして。

「そうなったらのっとってやるってのも楽しいかもしれないわねえ」

 物凄い人数を捌いているのに私に頭が上がらないとか翻弄されるっていうのはちょっと絵面的に面白い。本人がそこまでやれるかどうかってのは別の問題だけど。
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