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4章

104話 財産銃撃

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「それで、銃弾関係の情報とは?」
「修正を受けてガンナーの取り回しが悪くなったのは周知の事実だと思うけど、どこまで知ってる?」
「……銃弾の販売無し、専門ギルドが抜けおちてる点って所ですね、とにかく人口が少ない上にアカメ様からもらった銃剣の情報を流しても、と言った所で」
「でしょうねぇ……二次職とサブ職でガンナーの選択は、ないみたいだし」

 ぷぁっと煙草の紫煙を輪にして吐き出してみる。お、こんなことも出来るのが、ちょっと楽しい。

「とにかく、此方でも分かっているのはとにかく銃弾の扱いが無いだけでほぼ全滅するって位の大事と言う事です」
「やっぱりねぇ……ちなみに私がアルコール買った理由って察せてる?」
「いえ、その銃弾を見るまでは」

 鼠色の鈍い光沢を放っている銃弾をちらりと見て軽く目を伏せてからグラスを磨き始める。

「クランで掴んでる情報で作ろうとかは?今の相場で1発3万はする代物だし」

 ふふんと自慢げに言いながら銃弾を摘まんでぐるりと見て確かめる。自作とは言えやっぱりいい出来よね。3万何て言わずにもうちょっと吹っ掛けてもいいくらいだ。そうじゃないと私の苦労が見合わないしな。

「どちらにせよ私どものクランでも製造は成功……というよりも、製造する必要が無かったので試していないのが本音ですね」
「そりゃ売れない代物作るより売れる物とか価値のある情報集めた方がいいしなあ……それで、作っても試作してもなかったわけね」

 その通り、というような無言の肯定とグラスの磨く音で察する。それにしても案外後手に回りすぎじゃないの、この情報クラン。

「で、こいつ1発のメリット結構でかいんだけどさ、どれくらいだせる?」
「どれくらいの物か、ですね」
「これからのガンナー全員必須って位にはやばいものね」

 そういいながら手で転がしていた銃弾をガンベルトに仕舞いつつ、グラスを磨く手を止めたバーテンダーがまっすぐこっちを向いてくる。どうやらマジな話だから本腰入れたみたいじゃない?

「最低でも10万、最高で100万では?」
「じゃあそれで」

 んふーっと煙草を咥えたままにんまり笑ってからぽつぽつと話し始める。

「まず銃弾ね、レシピまでは教えないけど自作出来るのはさっき言った通り。そのうえで銃弾を作成するメリットが二つ」

 指を2本立ててから人差し指だけを立てて順繰り説明を始める。いちいちもったいぶって話す方が雰囲気出るよね。

「銃弾に使うであろう素材の割引権利ね、5,000Zの木炭が大分安く買えたりするし、かなり割引率は高いんじゃないかしらね」

 本当は詳しい割引率も分かってるけど、敢えて言わないで事実と既存の販売価格だけ言っておく。信憑性的にはちょっと薄れるだろうけど、それでも大きい情報なのは変わりない。

「……割引、ですか」
「そ、やけに高い素材とか使い道が薄そうだった関係なさそうなやつね。黒色火薬の情報はそっちに流したから知ってると思うけど、あれ絡みの材料価格は4桁切ってたわ」
「なるほど……購入しやすくなるだけで十分なものですね」
「でしょー?」

 そりゃもう自慢げに話す。見聞きする限りではこの情報を持ってきたのは確実に私が初めてっぽいな。たまには優越感に浸っておきたいって事もあるのさ。

「私はやんないけど、高騰している今のうちに作ってうっぱらって今後の糧にするのがいいんだろうね、それをやらなくても安定さえしちゃえば買って時短にもなる、いい塩梅よ」
「しかし自作するのは変わらずですがね」
「って思うじゃん?私も最初はそう思ってたんだけどさ」

 まあぶっちゃけ割引権に関しては何一つ期待してないと言うか、全部取りに行く気持ちでやってるから私には無縁の長物ではあるので、目玉は2個目の方だ。

「自作するって言ってもハードルは高いのよね、ガンナー自体の補正とかがどうなってるかまではわかんないけど、2枠のスキル複数個取ったうえでって考えると苦労に見合わないと思うのよ」
「そりゃそうですが……?」
「で、その上で重要になるんだけど、二つ目の権利が『銃弾の取引』なのよ」
「『取引』ですか」
「そ、『取引』……しかも個人に付与されるものなのよね」
「販売されないって公式で公開されてるので眉唾物ですが?」
「そこがポイントでね、自作銃弾は『売買不可』なわけよ」

 それが?という様に首をかしげるバーテンダーを「やれやれ」と言う様にため息交じりに煙草の紫煙を吐き出して一息ついて。

「取引って事は売買じゃない?質のいい銃弾なら可能って可能性もあるし、そもそも販売はしないって言ってるのに取引できるって矛盾は?」
「言われてみれば、確かに……」
「運営がどういう采配をしたか分からないけど、銃弾を作る事が銃弾を買える権利になるって思えない?」
「アンロック方式、と言う事ですか」
「簡単に言えば苦労した人に対してのご褒美処置ね、後はどこで売られてるかって問題はあるけど」
「……見つけてからの方が良かったんじゃ?」
「あんたたちが他のガンナーの情報を売る前に私が高額で売って儲ける方が大事なのよ、地下室の増設とかしなきゃならんし」

 2本目の煙草に火を……付けられてから深く煙を吸って、大きく吐き出す。

「それで、幾ら出す?」
「そう、ですね……情報が不明瞭な部分やレシピがない点、確認が取れない所を加味して……30万」
「あら、結構出すじゃない」
「いくら修正されたとしても瞬間DPSはいまだに最強のガンナーですからね」

 これは事実だ。
 Dボアでも6連射すれば固定ダメ150+通常攻撃、G4も全弾打ち込めば固定ダメ195の上で通常攻撃13発分を即時叩き込めるのだから弱いわけがない。
 どっちも装填で即時リロードをしたら単純計算でこの2倍数値を出せるわけだから弱いはずがない。
 今はそこそこの要求ステータスだが、今以上に要求が高い銃が出れば固定ダメが薄くなっても火力は上がるわけだし、戦闘能力は決して低くない。
 まあ……銃弾があればって言う条件だが。

「いいわ、今回はそれで手を打ってあげる」
「もうちょっと明確であれば高額なんですが」
「いいのよ、今は急務で金掛かる事してるし」
「……うちに置いてあるのはファーマーから仕入れた穀物や果物から作った酒ですよ」

 おっと、おまけかな?
 大体は気が付いてたと言うかそんな気はしてたけど、やっぱりアルコールは私の思った通りで大丈夫のようだな。

「発酵、醸造に関しては秘密ですが、ヒントは錬金ですよ」
「……このゲーム錬金の比重高すぎでしょ」
「魔法と化学を合わせるには必須ですから、薬草拾ってポーションにするだけでも価値のあるスキルですよ」
「やっぱ戦闘ばっかやってる奴らにはたどり着けない領域だろうけど、ちょっと不公平な感じ」
「戦闘だけ、攻略だけじゃ全部楽しめないって運営のアンチテーゼですかね」

 かもねえと、言いながら30万の硬貨データを受け取ってからステータス画面でも確認する。しっかり自分の所持金が増えているのを確認し、ステータス画面を閉じる。

「すぐに広めるんじゃないわよ」
「元が取れるまでは、ですがね」

 商売上手めと心の中で吐き捨てつつ、カウンターから席を立って、いつもの様に酒場を後にする。
 これで地下室と酒蔵の用意が出来るだろうけど、醸造樽とか必要になるんだろうな。そっちはそっちで自作すればいいか、でかい密閉できる樽でも作れれば問題ないだろ。
 とりあえず、今の手持ちで地下2Fくらいまで早速ぶち抜いてこよう。
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