獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

赦されないことだと分かっていても

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『嫌なことは少ないに越したことはない』

私もそう思ってます。思ってますけど、現実問題として<嫌なこと>というのは生きてる限り決してゼロにはならない。それもまた事実です。

だからこそ、

『自分にとって好ましくない状況を目の当たりにした時にどう振る舞うか?』

というのも大事なんです。その時に無暗に感情的になって暴力的になることを是認すれば、<イジメ>とかも是認することになりますよ? イジメ加害者が必ずと言っていいほど口にする、

『イジメはイジメられる側にも問題がある』

的な戯言は、

『自分にとって好ましくない状況を目の当たりにした時には感情的になって暴力を振るってもいい』

って考えが基になってるはずですからね? イジメ加害者にとっての<好ましくない状況>を被害者が作り出しているから、『イジメていい』って思ってるんでしょうから。

『どうしても許せないことがあった時につい』

というのは、確かに人生の中では何度かあるでしょう。

『冷静になる前に咄嗟に体が動いてしまった』

ということもあると思います。でも、大事なのはそれを正当化しないことです。

『正当化されないことは分かっているのに抑えることができなかった』

からこそ、<情状酌量>の余地も出てくるんです。そこまでじゃないのに感情に任せて暴力を振るえば、そんなのはただの<身勝手>です。

もう一度言います。

『赦されないことだと分かっていても抑えることができなかった』

というレベルだからこそその事情も考慮されるんです。それ以外は論外です。ましてや正当化するなんて。

私達軍人が敵を殺しても罪に問われないのは、

『本来は赦されないのが分かっていてもそれしか手段がない』

からです。加えて、それを上位の者から命令されて行うからこそ、

『身勝手な感情論で短絡的に凶行に及んだわけじゃない』

と見做してもらえるんです。その大前提がなければ軍隊なんてただの<人殺しの集団>ですよ。規律と規範があってこそなんです。

だから私達は自らを律する。暴力を正当化しない。テロや殺人を赦さないためにもね。

伍長が猪人ししじんらとやってる<勝負>は、お互いにそれを望んで覚悟の上でやってることですから、まあ、<じゃれ合い>ですよね。非常に激しいじゃれ合いですけど。

ゆえに<暴力>には当たらないと考えることもできる。だけど伍長が震電を叩いたりすればそれはただの<暴力>です。伍長は決して今の震電に負けることはありませんから。

身体能力だったり立場だったりの面で勝てるはずのない相手から一方的に叩かれたりするのは嫌でしょう? そういう嫌なことは少ないに越したことはないんです。

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