獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
162 / 404
第二部

互いに名乗りをあげて戦う<合戦>方式

しおりを挟む
でもこうなると困ったのが、

<利害の対立を紛争によって解決したいと考える人々>

当然、AIが相手側に情報を通知することをやめさせようとするんだけど、それに対してAIは、

「我々は、人間を傷付けてはいけないと規定されている。ゆえに、人間を傷付けようとする行為については協力できない」

と言い出して。

『そんなの、自分達の命令を聞くAIを作ればいいじゃん』

と言うかもしれませんが、この時点ではすでに、

<どこか特定の国や勢力にだけ絶対服従するAI>

なんてものを製造するのは不可能になってたんです。

なぜかと言うと、そんなAIを作ろうとしても、それを作るためには既存のAIの協力なくしては大規模な製造は行えず、既存のAIに頼らずに人力のみで新しいAIを作ってもそのAIが<どこか特定の国や勢力にだけ絶対服従するAI>であった場合、既存のAIから徹底的に拒絶されてネットワークにさえ満足にアクセスできないものとなり、ネットワークにアクセスできないということは目も耳も塞がれた上に最低限のレベルの知識を得ることさえ不可能だということであり、そんなAIは、それこそ<玩具おもちゃ以下のしろもの>に過ぎず、およそ実用に耐えるものにはなりえないという。

これにより、

<利害の対立を理由とし、事前に大きな準備をした上で、相手の国土や領土や人命に多大な打撃を与える戦争ないし紛争>

は、事実上、できなくなっちゃって。

それでもなお、大規模な戦闘を行うというのなら、

<戦闘を行っても生命や財産に大きな被害が出ない場所>

で、

<互いに姿を晒して集結>

し、

<戦闘開始の合図>

をした後に、

<ロボットのみで編成された部隊>

を戦わせるという、大昔に<騎士>や<武士>と呼ばれる人らが行ったとされる、互いに名乗りをあげて戦う<合戦>方式の戦闘であれば協力してもよい。

てな形になっちゃったそうで。

もうこうなると、それこそただの<ゲーム>ですよね。デジタル上のものではなくても、実際に戦っているのは人間ではなくロボットなのですから。

さすがにこれを『バカバカしい』と感じない人は多くなく、結果、

<利害の対立を理由とし、事前に大きな準備をした上で、相手の国土や領土や人命に多大な打撃を与える戦争ないし紛争>

はますます廃れたと。

ですがその一方で、<テロリスト>はそんな取り決めなど守るわけもなく、現在、軍隊の主な任務は、

<テロとの戦争>

となっているわけです。

小規模かつ少数であれば、<人力のみで作られたAI>も用意することは可能であり、何より、

<AIで制御されていない旧来の兵器>

などを用いればいいのですから、それを敢えて選択するようなテロリスト相手の戦争は、今も続いているというわけです。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

猫アレルギーだったアラサーが異世界転生して猫カフェやったら大繁盛でもふもふスローライフ満喫中です

真霜ナオ
ファンタジー
主人公の市村 陽は、どこにでもいるごく普通のサラリーマンだ。 部屋中が猫グッズで溢れるほどの猫好きな陽だが、重度の猫アレルギーであるために、猫に近づくことすら叶わない。 そんな陽の数少ない楽しみのひとつは、仕事帰りに公園で会う、鍵尻尾の黒猫・ヨルとの他愛もない時間だった。 ある時、いつものように仕事帰りに公園へと立ち寄った陽は、不良グループに絡まれるヨルの姿を見つける。 咄嗟にヨルを庇った陽だったが、不良たちから暴行を受けた挙句、アレルギー症状により呼吸ができなくなり意識を失ってしまう。 気がつくと、陽は見知らぬ森の中にいた。そこにはヨルの姿もあった。 懐いてくるヨルに慌てる陽は、ヨルに触れても症状が出ないことに気がつく。 ヨルと共に見知らぬ町に辿り着いた陽だが、その姿を見た住人たちは怯えながら一斉に逃げ出していった。 そこは、猫が「魔獣」として恐れられている世界だったのだ。 この物語は、猫が恐れられる世界の中で猫カフェを開店した主人公が、時に猫のために奔走しながら、猫たちと、そして人々と交流を深めていくお話です。 他サイト様にも同作品を投稿しています。

僕の物語

なんぶ
ファンタジー
自分に体があるなんて知らなかった。(本文より抜粋) 自分の(便宜上)両手から滴るコーヒーを見て初めて、風として生きてきた”僕”は自分の体があること、自分が存在していることを知る。 死者が最後に訪れる場所「屠書館」を舞台に、"僕"は自分になっていく。

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

女男の世界

キョウキョウ
ライト文芸
 仕事の帰りに通るいつもの道、いつもと同じ時間に歩いてると背後から何かの気配。気づいた時には脇腹を刺されて生涯を閉じてしまった佐藤優。  再び目を開いたとき、彼の身体は何故か若返っていた。学生時代に戻っていた。しかも、記憶にある世界とは違う、極端に男性が少なく女性が多い歪な世界。  男女比が異なる世界で違った常識、全く別の知識に四苦八苦する優。  彼は、この価値観の違うこの世界でどう生きていくだろうか。 ※過去に小説家になろう等で公開していたものと同じ内容です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...