獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
161 / 404
第二部

戦場で殺戮を楽しめるのが良い兵士

しおりを挟む
大昔には、

<戦場で殺戮を楽しめるのが良い兵士>

とされていた時期もあると聞きます。でも、そういう兵士は、えてして、

『戦場に過剰適応した結果であって、戦争が終わると今度は日常生活に適応できず問題行動を起こす兵士が続出した』

という事実も明確に記録されています。

ゆえに、

『戦場で殺戮を楽しめる兵士を作るくらいならロボットを使う』

そういう方針に転換していったわけですね。

むろんそれは、人間の兵士と変わらない程度の働きができるロボットの開発が大前提の話でしたが。

しかしこれ自体は二十七世紀頃には実現され、それまではあくまで、

<戦闘用の兵器>

であったロボットが、<兵士>としても運用されるようになっていったそうです。

ただ、それを可能にしたAIの進歩は、思わぬ形で、

<戦争の在り方>

そのものを変えていったとも。

AIがもたらす便利な生活を享受しながらも、一部の人々には強い<AIアレルギー>とも言うべきものがあり、

『AIはいつか人間に牙を剥く! 反逆する! 人間はAIによって支配され家畜化される!!』

と訴える層がいたのです。

しかし、社会はすでにAIがなければ成立しないものとなっていましたので、いまさら『AIを使わない』という選択はない。

なので、一部の、<AIに対する嫌悪感を拭いきれない層>に配慮して、AIには非常に厳しい制約が設けられました。

『AIは、決して人間に危害を加えてはいけない』

というものです。これによって、

『AIが人間に牙を剥くことはない』

とすることで理解を得ようとしたわけですね。

ですがそれだと今度は、AIによって制御されるロボット等は、人間相手が想定される戦闘には投入できなくなってしまう。

これによって戦争が回避できるなら喜ばしいことだとしても、テロリストの攻撃から社会を守ることもままならないという事態に。

そこで、

『急迫不正の侵害から人々の生命財産を守るために他に有効な手段がない場合は除く』

などの、百を超える厳格な<規定>を設けて、それがクリアされた場合のみ、

『例外的な対応として』

ロボットが人間を攻撃できるようにしたんです。

けれど今度は、AIの方がそれを、

『全面的には受け入れられない』

として、テロ行為のような明確な<急迫不正の侵害>から人命を守る場合はまだしも、

『双方の主張が対立し、それを解決するための手段としての紛争には協力しない』

って言い出して、戦争の準備をしている国や勢力のAIが、その情報を敵対する国や勢力に対して事前に通知するようになっちゃって。

でもこれは、相手の国や勢力のAIも同じ。

<人間傷付けないための最大限の努力>

を、AIが始めたのでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。

砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。 ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。 その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、 この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。 顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。 前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?

混沌の刻へ

風城国子智
ファンタジー
ファンタジー長編。 困り果てた少女に手を貸すだけだったはずの冒険者たちは、知らず知らずのうちに『世界の運命』に巻き込まれてしまっていた。 ※小説家になろう、pixiv、BCCKS掲載。

ずっとここにいて。

創作屋 鬼聴
ファンタジー
神崎 メグは辟易していた。 この世界に。 彼女はいつも思っていた。 別の世界があればいい。 彼女は今日も屋根裏部屋で物語を読んでいた。 すると、古びた本から呼び声がする。 否、声は本からするのではなかった。 本棚の裏に隠された不思議な暖炉からだった。 暖炉の裏は理想の世界。 不気味な程に楽しくて。 彼女は友の静止も聞かず 理想の世界に入り浸る。 けれど彼女を呼んでいたのは、 鬱くしく愛情深い、恐ろしい何かだった。 「もう、戻る必要は無いよ。 永遠にここに居て、永遠に愛し合おう、 ここは二人きりの理想郷… ずっと一緒にいよう。 ずっとずっとずっーと…」 読書家の少女メグと、 暖炉からメグを呼ぶ 恐ろしくて愛情深い"なにか"。 そして、メグを女神様と崇める奇妙な ヤンデレ同級生が織りなす 愛憎と不思議に満ちたファンタジー。

隠れジョブ【自然の支配者】で脱ボッチな異世界生活

破滅
ファンタジー
総合ランキング3位 ファンタジー2位 HOT1位になりました! そして、お気に入りが4000を突破致しました! 表紙を書いてくれた方ぴっぴさん↓ https://touch.pixiv.net/member.php?id=1922055 みなさんはボッチの辛さを知っているだろうか、ボッチとは友達のいない社会的に地位の低い存在のことである。 そう、この物語の主人公 神崎 翔は高校生ボッチである。 そんなボッチでクラスに居場所のない主人公はある日「はぁ、こんな毎日ならいっその事異世界にいってしまいたい」と思ったことがキッカケで異世界にクラス転移してしまうのだが…そこで自分に与えられたジョブは【自然の支配者】というものでとてつもないチートだった。 そしてそんなボッチだった主人公の改生活が始まる! おまけと設定についてはときどき更新するのでたまにチェックしてみてください!

トーメイさんは生産者

yukami
ファンタジー
幼馴染から譲られたVRゲームを第2陣から始める主人公。目立たず、ひっそりとソロで楽しみたいというスキル構成で、その思惑が外れるようにストーリーは進み始める。 過保護なNPC達や戦闘スタイルを呆れられながら仲のいいメンバーに囲まれて、ゲームを楽しみます。

処理中です...