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第二幕
エンディミオンの日常 その12
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エンディミオンは、今も思っている。
『こいつらが死ねば、何もかも元通りだ。俺はまた吸血鬼共を狩る。どうせこいつらは百年も生きない。それまで茶番に付き合ってやる……』
と。
もっとも、これ自体、彼自身が自らに対して言い聞かせている<言い訳>でしかないのも事実ではあるけれど。
そう言い聞かせることで、
『自分は復讐を諦めたわけじゃない。今はただ休養を取っているだけだ』
と考えることで、自分を落ち着かせている状態だった。
だからそれにケチをつけて彼の感情を逆撫ですることもしない。そんなことをして『寝た子を起こす』ようなマネをして彼が暴走したら、誰が責任を取れるというのか。そうなれば、彼を止めるまでの間にどれだけの被害が出るだろうか。
現に抑えられているのだから、彼のことをよく知らない、彼の力をロクに知りもしない無責任な他人の身勝手な憶測に耳を貸す必要もない。
エンディミオン以外のダンピールには効果はないとしても、彼に対しては劇的な効果が出ているのだからこれ以上の成果はない。
もし、エンディミオンが復讐を再開するとしたら、その時はさくら達はもうこの世にはいないだろう。
彼が再び復讐に振り切れるようであれば、その矛先は、まず、さくら達に向かうに違いない。なにしろ彼を抑え付けていたのだから。彼の復讐を最も否定してきた者達なのだから。
さくら達は、それこそ自らの命を懸けてエンディミオンを抑えているのだ。
ミハエルが彼と闘うよりも確実に、安全に。
だからさくらは思う。
『私が生きてる間に、彼が復讐を思いとどまれる<理由>をもっとたくさん、作らなきゃ……
それが、彼を愛してしまった私の役目……』
そしてさくらは、
「エンディミオン……愛してる……世界の誰があなたを許さなくても、私はあなたを愛してる。
だからお願い。もし、あなたのほの暗い想いが抑えられなくなった時には、まず最初に私を殺して。
それが、私の覚悟だから……」
静かに、穏やかに、落ち着いて、噛み締めるようにそう言った。
そんな彼女の言葉に、エンディミオンは、視線を逸らし、ただ冷たく、硬く、
「ああ……その時は、真っ先にお前を殺してやる……こんなところに俺を閉じ込めたお前を、真っ先にな……」
呟くように、言い含めるように、返した。
このやり取りが、二人の関係性を何よりも雄弁に語っているのだろう。
ただの同情じゃない。ただの憐憫じゃない。ただの気まぐれじゃない。
余人には決して真似のできない、この二人だけの<愛の形>が、そこにはあったのだった。
『こいつらが死ねば、何もかも元通りだ。俺はまた吸血鬼共を狩る。どうせこいつらは百年も生きない。それまで茶番に付き合ってやる……』
と。
もっとも、これ自体、彼自身が自らに対して言い聞かせている<言い訳>でしかないのも事実ではあるけれど。
そう言い聞かせることで、
『自分は復讐を諦めたわけじゃない。今はただ休養を取っているだけだ』
と考えることで、自分を落ち着かせている状態だった。
だからそれにケチをつけて彼の感情を逆撫ですることもしない。そんなことをして『寝た子を起こす』ようなマネをして彼が暴走したら、誰が責任を取れるというのか。そうなれば、彼を止めるまでの間にどれだけの被害が出るだろうか。
現に抑えられているのだから、彼のことをよく知らない、彼の力をロクに知りもしない無責任な他人の身勝手な憶測に耳を貸す必要もない。
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もし、エンディミオンが復讐を再開するとしたら、その時はさくら達はもうこの世にはいないだろう。
彼が再び復讐に振り切れるようであれば、その矛先は、まず、さくら達に向かうに違いない。なにしろ彼を抑え付けていたのだから。彼の復讐を最も否定してきた者達なのだから。
さくら達は、それこそ自らの命を懸けてエンディミオンを抑えているのだ。
ミハエルが彼と闘うよりも確実に、安全に。
だからさくらは思う。
『私が生きてる間に、彼が復讐を思いとどまれる<理由>をもっとたくさん、作らなきゃ……
それが、彼を愛してしまった私の役目……』
そしてさくらは、
「エンディミオン……愛してる……世界の誰があなたを許さなくても、私はあなたを愛してる。
だからお願い。もし、あなたのほの暗い想いが抑えられなくなった時には、まず最初に私を殺して。
それが、私の覚悟だから……」
静かに、穏やかに、落ち着いて、噛み締めるようにそう言った。
そんな彼女の言葉に、エンディミオンは、視線を逸らし、ただ冷たく、硬く、
「ああ……その時は、真っ先にお前を殺してやる……こんなところに俺を閉じ込めたお前を、真っ先にな……」
呟くように、言い含めるように、返した。
このやり取りが、二人の関係性を何よりも雄弁に語っているのだろう。
ただの同情じゃない。ただの憐憫じゃない。ただの気まぐれじゃない。
余人には決して真似のできない、この二人だけの<愛の形>が、そこにはあったのだった。
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