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第四世代
凛編 遠吠え
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凛は、レオンである。
レオンでありながら、実の兄でもあるパパニアンの新と結ばれて、俺達の集落で一緒に暮らしていた。いたんだが、やがて<考え方の違い>から二人の間に溝ができていき、そして破綻。彼女は新の下を去って、レオン本来の生息域である草原へと帰っていった。
新との子供を欲した凛と、子供にはまったく拘らなかった新とでは、歩む道が違っていたんだ。
こうして、走や凱達とはコーネリアス号を挟んで反対側に縄張りを持った凛は、かつては走や凱の群れの一員だった侑と出逢い、按、萌、朗という三人の子を迎え、群れを作った。
今ではその萌は、走と釈の息子である彪と番って子を生し、朗は、一度は巣立ったもののパートナーを連れて群れに戻り合流、侑の次のボス候補として頼もしい姿を見せている。
一方で、凛と侑の長子である按は、<性分化疾患>と思しき先天的な特徴を持ったことで『雌でも雄でもない』状態なこともあってか、レオンのパートナーは持たず、ドーベルマンDK-a伍号機を実質的なパートナーのようにして穏やかな日々を過ごしていた。
母親であり、群れの<実質的なボス>である凛が<普通じゃない生き方>をしてきたからか、なかなかにいろいろありつつも、群れ自体はおおむね安泰だと言えるだろうな。
それでも、生きている以上は『まったく何も起こらない』ということはなく、凛の群れそのものじゃないが、お隣さんである走と凱の群れにおいて、凱の三人目のパートナーである枚が、その生涯を閉じた。
いくら血の繋がった兄妹であっても、巣立ってそれぞれ群れを作れば、
<生存競争を争うライバル>
となるはずの野生ではありつつ、
「……」
コーネリアス号の陰から、凛が様子を窺っていたんだ。
その視線の先で、
「うおおおお~、おおおお~ん……」
命を閉じた枚の体を抱いて、凱が悲し気に遠吠えを上げていた。だから凛も様子を見に来たんだろな。とは思うものの、必ずしもそれだけではないような印象もある。俺が彼女の実の父親だからそう感じてしまうだけという可能性もあるが、パートナーを喪って悲しむ兄を案じているような気もしてしまうんだよ。
それが事実かどうかは確かめようもないものの、凱の様子を窺っている凛もまた、すっかり<おばあちゃん>な姿になっていた。さすがに血の繋がった姉妹だけあって、深の晩年によく似た感じになっている印象もある。
走や凱もまた、<おじいちゃん>になってるけどな。
<その時>は間違いなく迫ってきてるってことだ。
レオンでありながら、実の兄でもあるパパニアンの新と結ばれて、俺達の集落で一緒に暮らしていた。いたんだが、やがて<考え方の違い>から二人の間に溝ができていき、そして破綻。彼女は新の下を去って、レオン本来の生息域である草原へと帰っていった。
新との子供を欲した凛と、子供にはまったく拘らなかった新とでは、歩む道が違っていたんだ。
こうして、走や凱達とはコーネリアス号を挟んで反対側に縄張りを持った凛は、かつては走や凱の群れの一員だった侑と出逢い、按、萌、朗という三人の子を迎え、群れを作った。
今ではその萌は、走と釈の息子である彪と番って子を生し、朗は、一度は巣立ったもののパートナーを連れて群れに戻り合流、侑の次のボス候補として頼もしい姿を見せている。
一方で、凛と侑の長子である按は、<性分化疾患>と思しき先天的な特徴を持ったことで『雌でも雄でもない』状態なこともあってか、レオンのパートナーは持たず、ドーベルマンDK-a伍号機を実質的なパートナーのようにして穏やかな日々を過ごしていた。
母親であり、群れの<実質的なボス>である凛が<普通じゃない生き方>をしてきたからか、なかなかにいろいろありつつも、群れ自体はおおむね安泰だと言えるだろうな。
それでも、生きている以上は『まったく何も起こらない』ということはなく、凛の群れそのものじゃないが、お隣さんである走と凱の群れにおいて、凱の三人目のパートナーである枚が、その生涯を閉じた。
いくら血の繋がった兄妹であっても、巣立ってそれぞれ群れを作れば、
<生存競争を争うライバル>
となるはずの野生ではありつつ、
「……」
コーネリアス号の陰から、凛が様子を窺っていたんだ。
その視線の先で、
「うおおおお~、おおおお~ん……」
命を閉じた枚の体を抱いて、凱が悲し気に遠吠えを上げていた。だから凛も様子を見に来たんだろな。とは思うものの、必ずしもそれだけではないような印象もある。俺が彼女の実の父親だからそう感じてしまうだけという可能性もあるが、パートナーを喪って悲しむ兄を案じているような気もしてしまうんだよ。
それが事実かどうかは確かめようもないものの、凱の様子を窺っている凛もまた、すっかり<おばあちゃん>な姿になっていた。さすがに血の繋がった姉妹だけあって、深の晩年によく似た感じになっている印象もある。
走や凱もまた、<おじいちゃん>になってるけどな。
<その時>は間違いなく迫ってきてるってことだ。
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