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第四世代
凛編 ここで生きていく適性
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新暦〇〇四十年一月四日
日付が変わった頃、ひとしきり遠吠えをしてようやく落ち着いたらしい凱は、自らの命を終えた枚の体を抱えて、コーネリアス号の貨物室のハッチ前までやってきた。
それをアンデルセンが出迎え、枚の遺体を恭しく預かり、
「それでは丁重に弔わせていただきます」
深々と頭を下げた。すると凱も同じように頭を下げる。
彼にはその意味は分かってないだろうが、アンデルセンらの真似をするようになったんだ。
そうして自分の巣に戻った凱を見届けて、アンデルセンは枚の遺体を抱えたままコーネリアス号の船体の脇に移動した。
そこは、凛達の巣がある側ではありつつ、緩いカーブを描く船体の陰になっていて直接は見えない位置で、いくつもの墓標が並んでいた。
<墓地>だ。
墓地として利用している区画だった。
走のパートナーの一人だった沢や、凱のパートナーの一人だった阪をはじめとして、走や凱の群れの仲間達を弔うための、な。
途中から群れに加わった者達については、レオンの群れではそれ自体が珍しいことでもなかったのもあって、あまり詳細には触れてこなかったんだよ。
そして、そうやって仲間に加わった者達の中には、狩りの最中に獲物に反撃されて当たり所が悪かったり病気などで命を落とした者もいる。
加えて、深にとっての連のように、死産だったりということも。
こうして命を終えた者、生まれてくることができなかった者達を弔う場として、設けたんだ。
まあ、必ず遺体が埋葬されてるわけじゃないけどな。狩りの最中に命を落とした者は連れ帰れなかったし、死産だった者は、連と同じように胎盤と一緒に母親に食われてしまったりで。
だが、野生に生きるレオンにとってはそれ自体が<日常>なんだ。連のことにしたって、俺のすぐ身近での話で、初めての経験だったからこそ、俺自身にとっても大きな衝撃があったってだけで、これが二度三度となってくると、さすがに。
決して『慣れて』しまったわけじゃないとは思うものの、毎度毎度、連の時と同じように動揺していてはここで暮らしていくことなんてできないさ。
そう自分に言い聞かせてきたし、そう割り切ることもできてきた。
それができたってのは、俺に<ここで生きていく適性>があったってことだろうな。
これは『良い悪い』じゃない。
『生きていくにあたってその方が適してる』
というだけの話だ。これを『薄情だ』と言う人間もいるだろうが、そんな風に感じるのも自由だろうが、現実問題としてそこを受け止められるかどうかは、『生きる』ということそのものを受け止められるかどうかに大きく影響してくると俺は思うよ。
日付が変わった頃、ひとしきり遠吠えをしてようやく落ち着いたらしい凱は、自らの命を終えた枚の体を抱えて、コーネリアス号の貨物室のハッチ前までやってきた。
それをアンデルセンが出迎え、枚の遺体を恭しく預かり、
「それでは丁重に弔わせていただきます」
深々と頭を下げた。すると凱も同じように頭を下げる。
彼にはその意味は分かってないだろうが、アンデルセンらの真似をするようになったんだ。
そうして自分の巣に戻った凱を見届けて、アンデルセンは枚の遺体を抱えたままコーネリアス号の船体の脇に移動した。
そこは、凛達の巣がある側ではありつつ、緩いカーブを描く船体の陰になっていて直接は見えない位置で、いくつもの墓標が並んでいた。
<墓地>だ。
墓地として利用している区画だった。
走のパートナーの一人だった沢や、凱のパートナーの一人だった阪をはじめとして、走や凱の群れの仲間達を弔うための、な。
途中から群れに加わった者達については、レオンの群れではそれ自体が珍しいことでもなかったのもあって、あまり詳細には触れてこなかったんだよ。
そして、そうやって仲間に加わった者達の中には、狩りの最中に獲物に反撃されて当たり所が悪かったり病気などで命を落とした者もいる。
加えて、深にとっての連のように、死産だったりということも。
こうして命を終えた者、生まれてくることができなかった者達を弔う場として、設けたんだ。
まあ、必ず遺体が埋葬されてるわけじゃないけどな。狩りの最中に命を落とした者は連れ帰れなかったし、死産だった者は、連と同じように胎盤と一緒に母親に食われてしまったりで。
だが、野生に生きるレオンにとってはそれ自体が<日常>なんだ。連のことにしたって、俺のすぐ身近での話で、初めての経験だったからこそ、俺自身にとっても大きな衝撃があったってだけで、これが二度三度となってくると、さすがに。
決して『慣れて』しまったわけじゃないとは思うものの、毎度毎度、連の時と同じように動揺していてはここで暮らしていくことなんてできないさ。
そう自分に言い聞かせてきたし、そう割り切ることもできてきた。
それができたってのは、俺に<ここで生きていく適性>があったってことだろうな。
これは『良い悪い』じゃない。
『生きていくにあたってその方が適してる』
というだけの話だ。これを『薄情だ』と言う人間もいるだろうが、そんな風に感じるのも自由だろうが、現実問題としてそこを受け止められるかどうかは、『生きる』ということそのものを受け止められるかどうかに大きく影響してくると俺は思うよ。
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