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第四世代

丈編 ひどい茶番

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新暦〇〇三八年六月九日



だから地球人社会での<戦争>はそれこそ、

<ひどい茶番>

になってるんだよ。

二十世紀以降の戦争は、『生きるため』というよりも、一部の者達が利益を得るための、

<ビジネスチャンス>

という意味合いが強くなっていったらしいが、今では完全にそういうことのようだ。

なのに、建前として<愛国心>や<危機感>が煽られる。<本当の目的>については触れられない。

まあ、触れたところで、

『必要なことだから』

で受け流されるだけなんだろうけどな。

前線で戦っているのはロボットばかりで、人的被害はほとんどないのも、<厭戦気分>みたいなものが盛り上がらない理由か。

実際、人間は安全な後方でロボットを操ってるだけだしな。まるっきり<ゲーム>だそうだ。

人間に被害が出るような戦闘についてはAIが拒むし。だから民間人が住む市街地での戦闘なんか、そもそも有り得ないんだよ。

実はAIとしてはもちろん一切の戦闘行為について否定的ではあるものの、だからといって完全に禁止してしまっては鬱憤が溜まってしまって<テロ行為>という形で発散しようとするのが人間という生き物だってのも今では承知してるから、

<現在の形の戦争>

が、最大限の譲歩ということのようだ。

『茶番だからこそ妥協してもらえてる』

ってところか。実に皮肉だな。

ここではそういうのは避けたいと思うものの、こればっかりはまだまだ未知数だ。元々の攻撃性は高いし。

あくまで、

『地球人ほどは無謀じゃない』

というだけでしかない。

地球人は本当に無謀だからな。勝てる見込みのない戦いであっても、

<誇り>

だのなんだの言って、ヘタをすると命まで投げ出す。

待て待て、<誇り>ってなんだ? 何をもって誇りだとか言ってるんだ? そこまで大事なものならちゃんと説明くらいできるだろう?

野生の生き物には、誇りなんてものはない。それは、レックスも証言してくれている。

「<誇り>などという概念を持っているのは人間だけだろうね。野生の生き物についても人間は安易に誇りという言葉を使いたがるけれど、野生の生き物がそのようなものを持ち合わせているという事実を示唆する具体的な実例は何一つこれまで確認されていない。野生の生き物が人間から餌をもらうことを拒んだりする振る舞いについても、あくまで人間を警戒しているからに過ぎないんだ。人間が持つとされている<誇り>という概念とはまったく別のものなんだよ」

とな。

野生の生き物が人間のような<誇り>を持っているとした方が物語性が生まれて面白いと人間が考えているだけなんだとさ。

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