未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます（Ver.02）

第四世代

深編 自制心を根こそぎ

新暦〇〇三八年三月十五日



そうだ。治療法すらない難病によって怪物のように変わり果てていく光莉ひかりを看病し、そして虚しく息を引き取ったのを見届けた俺が受けていたストレスでさえ、俺の自制心を根こそぎ奪ってしまうことはなかった。

なのに、法に触れるような行為を動画に撮ってネットにあげてそれで＜いいね＞をもらおうとする、自分達の行いを理解してくれる人間からの共感を集めようとする、耳目を集めようとする、なんてのはなぜだ？　

そうやって気持ちを盛り上げて浮かれることでしか解消できないほどのストレスが掛かっていたということなんだろう？　そこが不思議なんだ。それほどまでのストレスが掛かる状況ってなんだ？　親はいったい、何をしてたんだ？　自分の子供にそこまでのストレスが掛かるような事態になんで対処しない？

って、まあ、理由はだいたい想像つくけどな。その親自身が＜ストレス源＞になってるんだろう？　親から掛けられるストレスで、しかもその親は自分がストレス源になってることを自覚してないのがまたストレスになるんだろう？　その所為で家庭ではストレスが解消されなくてそれこそ雪だるま式に累積していくわけだ。

つらいよな。自分を勝手にこの世に送り出した親自身がストレスを掛けてくる上に、それを自覚しようともしないんだからな。

ましてやそんなことをしておいて恩まで売りつけようとしてくるとか、正気とは思えないよな。

俺なんてそれこそこんな世界に、子供達の承諾も得ずに送り出したんだぞ？　その俺が子供達に対して暴君のように君臨した上に、

『生んでやった恩を感じろ！』

『育ててやった恩を返せ！』

とか言ったらどれほどのストレスが掛かるか想像してみたら分かることもあるんじゃないか？

まあ、＜子供に対して恩を売りつけたいタイプ＞の人間は、そういう方向に頭が働かないのかもしれないが。

でもな、

『自分が望んだわけでもないことについて恩を押し付けられたらどう感じるか？』

くらいは、自分自身の経験とかに当てはめてみたらある程度は想像できる気もするんだがなあ。

それでも、＜恩を押し付けたい奴＞ってのは、自分の行いを正当化するためには、かつて自分が不快に感じた経験についてすら、

『そのおかげで自分は成長できた』

とか言い出すんだろうなあ。待て待て、それは本当に＜成長＞か？　客観的に他者から見て＜別の視点＞から見て成長に見えると思うのか？　自分では成長できてると思ってるだけだったりするんじゃないのか？