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第四世代

深編 それが社会性というものだ

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俺は別に、

『自分の好みに合わないものでも好きになれ。それが社会性というものだ』

とか言いたいわけじゃないさ。

『多数派に迎合しその価値観に合わせて生きていける人間こそが人間らしさだ』

とか言うつもりもない。そんなのはむしろ<不自然>で<奇形>だと思う。

なるほど野生でも、その環境に適合できた大多数が獲得した習性や習慣こそが合理的なように見えることもあるだろう。しかし同時に、それがゆえに環境が激変した時には適応できずに滅んでいったような事例はなかったか? そこで生き延びたのは、敢えて特異な生き方をしていた個体だったりしなかったか? そういう事例はなかったのか?

人間も生き物である以上はそういう部分があってもおかしくないだろう? <少数派>であることは必ずしも<異端>というわけじゃなくて、それ自体が、

<生き物というものに仕組まれた生存戦略の一つ>

なんじゃないかと、俺は感じるよ。何度も言うように。

だから、

『少数派を排除してしまえば理想の社会が出来上がる』

ってわけじゃなく、

『少数派であっても過度に排除されない』

ってことこそが<生き易い社会>だと感じるんだよな。

先祖返りを起こし<地球人そのものの姿>で生まれながらもひかりと出逢って結ばれてひなた萌花ほのかという子供までできてしまったじゅんという実例があるように、少数派であること自体が問題なんじゃないんだろうさ。

それを無暗に排除しようとする社会こそが、<生き難い社会>だってだけで。

なるほど野生のパパニアンだって、ストレスをぶつけるための<サンドバッグ><スケープゴート>を作り、それによって群れの統率や健全性を保とうとする習性は持ってる。これもまた事実だ。

だが、そのことはあくまで、

『野生で生きるパパニアンだから』

という大前提があっての話のはずだ。それをそのまま人間に当てはめようだなんてのは、まともな人間のすることか? 前提条件も何もかも無視するような奴が、

<ちゃんと考えてる奴>

か? 俺にはそうは思えないけどな。

だからこそ、別に誰かが意識的にそう誘導したわけでもないにも拘わらずまどかが、

『パパニアンとしての習性にはそぐわない考え方や感じ方を持つに至った』

こと自体を<異端>だとか<異様>だとか言うつもりもないし、

『俺達の考え方や感じ方にはそぐわないから排除しよう。虐げよう』

とも思わないな。まどかまどかだ。俺じゃない。それに、

「私はまどかの気持ちの方が共感できるしね」

シモーヌもそう言ってくれる。まあ、地球人である<秋嶋シモーヌ>そのもののコピーである彼女ならそれも別におかしくない。

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