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第四世代

深編 ライラ

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新暦〇〇三八年二月二十四日



なんてことを考えてる中、

「うきゃーっ♡」

まどかひなたうららに遊んでもらってた萌花ほのかが吹っ飛んできて、いつものように『俺で遊んでいた』錬慈れんじにぶつかりそうになった。

それを、<ライラ>が庇ってくれる。

マニピュレータを差し伸べて萌花ほのかの体を受け止めて、錬慈れんじにぶつかるのを防いでくれたんだ。

イレーネも錬慈れんじの前に立ってくれたが、その前にな。

だが、これにより、ホビットMk-Ⅱ水泳部仕様ゆえに生身の地球人よりわずかに強い程度の強度しか持たないライラのマニピュレータが破損してしまった。

「ごめん……」

肘にあたる関節部分が負荷に耐え切れずに折れてぶらんとなってしまったのを見て、萌花ほのかが泣きそうな顔で謝ってきてくれた。彼女にとってロボットはあくまで<仲間>だからな。

『道具に過ぎない』

という認識は敢えて今の時点では持たせてない。それは成長して、物事を客観的に捉えられるようになってからでいいと思う。幼いうちはとにかく、

<共感性>

を磨くことを重視するんだ。それによって、

『<他者の痛み>を想像する』

ことができるようになる。<理解>まではしなくていいし、理解なんて完全にはできるはずもないから、まずは<想像>することを覚えてもらうんだよ。

だから萌花ほのかは、

<ライラが感じてるかもしれない痛み>

を想像してしまったんだよな。

それに対してライラは、

「問題アリマセン。ワタシハロボットデスカラ、修理スレバ直リマス」

と応えてくれる。それでもなお、萌花ほのかは、

「ホント……?」

不安そうに、傍にいたイレーネに問い掛けた。

「はい。本当です。綺麗に直りますよ」

イレーネも、諭すように丁寧に応えてくれた。

「私の腕と同じです」

言いながら義手になっている右手を掲げて。

イレーネやエレクシアの<義手>も、今ではすっかり人間ができる程度の作業をする分には問題なくなっている。オリジナルの性能には届かなくても、日常の範囲内では不便を感じることもない。

「……」

イレーネに応えてもらってもまだ不安そうに母親のひかりを見ると、騒ぎに気付いて駆けつけてくれたひかりも、

「ライラやイレーネの言うとおりだよ。だから萌花ほのかが『ごめんなさい』をしてくれたらもう大丈夫なんだ」

やはり丁寧に諭してくれる。そこでようやく、

「よかった……!」

萌花ほのかも納得できたようだ。

俺達はこうやって子供を育てていく。

<人間の子供>

をな。

すいが育ててるフォルトナや、清良せいらが育てているカルラとは違うものの、これはそれぞれの生き方の違いだから、そのこともまたきちんと現実として受け止めた上でそれぞれに対応するんだ。

「……」

ふと気配を感じて俺が視線を向けると、そんな騒ぎにしんが自分の部屋からこちらを窺っていたのだった。

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