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第四世代

彗編 我が子に迫る危険

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「……」

我が子に迫る危険を、ビアンカはライフルの引き金に指を掛けた状態で見守っていた。万が一の際にはオオカミ竜オオカミを狙撃するために。

しかし同時に、キャサリン自身がこの危機を自らの力で乗り切れるかどうかを図る機会であるとも考えていたんだ。

「これを彼女が自力で対処できたら、もう好きにさせていいと思いました」

後にビアンカはそう語っている。親としての正直な想いだな。俺にも分かる気がするよ。子供達が巣立っていった時には、不安もありつつ我が子の成長を信じなきゃいけないという気持ちも確かにあった。

それに、今回はだめでも、成長すればいずれはと思うしな。

その点では、

「本当はまだ早いと判断したかったんです……親の身勝手だと言われればその通りなんですけど……」

ビアンカもそう語っていた。だから俺も、

「いや、親なんてそんなものだと思う。親にとって子供はいくつになっても子供だしな。親自身もその葛藤を乗り越えることで人間として成長するんじゃないかなと俺は思ってる」

と返させてもらったよ。

そしてキャサリンは、まずインパラ竜インパラに襲い掛かった。

「ケーッッ!!」

インパラ竜インパラの方も気付いた瞬間に見張り役が警告を発して群れ全体が弾かれるように逃げ出したが、キャサリンの方が早かった。反応が遅れた、おそらくは年老いて体が弱った個体に狙いを定め、飛び掛かる。恐ろしく速い動きだった。

上からインパラ竜インパラの背に乗るようにして体全体で掴みかかり、それを躱そうとしたインパラ竜インパラの胴に本体の足を引っかけて引き寄せのしかかり、本体の足で胴を締め上げ、<地球人そっくりの部分の脚>を首に絡ませ、さらに<地球人そっくりの部分の腕>も顎下に巻き付けて猛然と締め上げた。

すると、一瞬で脳に血流が回らなくなったんだろうな。意識を失ったかのようにインパラ竜インパラが地面に崩れ落ちる。

キャサリン自身は本体の脚で地面に着地しつつも、<地球人そっくりの部分の脚と腕>は首を締め上げたままで、確実に仕留めにかかる。

だがその時、

「!?」

キャサリンの体が弾かれるように反応。インパラ竜インパラの首を掴んだままで自らの体の向きを変え、その勢いであらぬ方向へと捻じ曲げた。それにより首の骨が折れたか、インパラ竜インパラの体はそれこそ力なく地面に横たわった。

しかし、そのインパラ竜インパラに食らいつく黒い影。

さっきのオオカミ竜オオカミだった。狙いをキャサリンそのものから、インパラ竜インパラの横取りに変更したようだ。さすがに抜け目ない。

だが、

「があっっ!!」

とキャサリンが怒りの形相に。

当然、獲物の横取りなんか許すわけないよなあ。

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