上 下
1,449 / 2,556
第三世代

蛮編 パルディア

しおりを挟む
アサシン竜アサシンを下しその体を貪りつつ、ヒト蛇ラミアは侵攻する。それを察してパパニアンなどはそれこそ必死で逃げた。それはレトがいた群れだった。幸いにも気付くのが早かったらしく、全員、無事に逃げ延びたようだ。が、逃げ遅れた者もいた。パパニアンではなく、パルディアだったが。子を抱えていたことで素早く逃げられなかったか。ゆえに、抗戦する構えのようだった。

だが、パルディアの戦い方というのは、気配を殺して近付き必殺の一撃をお見舞いするというのが基本で、かつ、自身の身体能力を活かした力業というのが一般的だった。だからそれこそ、確実に勝てると思った時しか戦わないという、実にスタンダードな戦法だ。

ゆえに、すでに相手に察知されてしかも力でも圧倒的に上という条件ではあまりに不利だった。むしろ勝てる要素が見当たらない。どうやって勝てばいいのかが分からない。

それこそ奇跡にでも頼るほかにないとしても、諦めはしない。諦めなければ奇跡も起こるかもしれない。だから戦う。

掴みかかってくるヒト蛇ラミアの手を払い除け、身を躱す。その際、少しでもダメージを与えようと爪を立てるが、

ガリッ!!

ギャリッッ!!

と金属音がするばかりで、まったく通用していない。ヒト蛇ラミアの腕の皮膚が裂けて剝がれていくものの、それは鱗を覆っているビニールカバー程度の役目しかしていないようだ。多少の痛みはあるのかもしれないにしても、怯ませることすらできていないんだ。

とは言え、胸に子をしがみつかせたままヒト蛇ラミアの攻撃を凌げているだけでもすごい。それだけパルディアの方も必死ってことか。

ヒト蛇ラミアの手を払い除けつつ木々を飛び移り、何とか間合いを取ろうとする。もちろん、木の幹や枝を盾として距離を取ることもする。密林に生きる者としては当たり前の戦術。

しかしそれがヒト蛇ラミアにとっては気に入らないらしく、激しく苛立っている。自身の腕よりも太い枝さえ、

『邪魔だ!!』

と言わんばかりに力尽くで払い除けてへし折っていくんだ。細い木などは、体ごとぶつかって根元から折ってしまったりも。

そのあまりにとてつもない姿に、パルディアにも怯えが見え始める。が、当然、そんなことでは諦めない。

それこそクモの糸のような頼りなく細い、

<生き残る道>

を手繰り寄せようとしてるんだ。

体を回転させ足でもヒト蛇ラミアの攻撃を掃い、その反動で向きを変える。

だが、ここまでですでにパルディアの体のあちこちには血が滲んでいた。ヒト蛇ラミアの体を覆う鱗はまるで刃物だから、迂闊に触れると皮膚が裂け肉が抉り取られるんだ。

パルディアの方も極限状態にあることでほとんど痛みを感じていないようではあるものの、その姿はとても痛々しい。

『がんばれ! 負けるな!』

と声を掛けてしまいそうになるくらいにはな……

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...