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第三世代

ビアンカ編 この世での生き方

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親が、自分の子供について、自分にとって都合のいい部分しか考えず、

<人間としての在り方>

という点については他人や運任せにしてて、それで偉そうにしてるというのが、俺には分からない。

『生んでやった』

とか、

『育ててやってる』

とか、いやいや、

『<人間としての在り方>という、最も大事な部分をおざなりにしてて何言ってんだ?』

って印象しかないんだよ。

自分の子供に対して<人間としての在り方>をまともに教える気もないクセに勝手に生むとか、無責任に過ぎるだろう?

<人間としての在り方>をまともに教える気もないクセに育ててるとか、それこそ、

『死なせたら面倒なことになるから死なせないようにしよう』

としてるだけにしか思えないぞ?

俺達は、こんな世界に俺達の勝手で生み出してしまった以上は、すべての責任が自分にあるとしか思わない。

俺も、久利生くりうもな。

一方、ビアンカにしてみれば、未来みらいは、

<自分の愛する男性が他の女性と作った子供>

でしかないが、

<自分の愛する男性の子供>

って形で見ることができてるそうだ。

もちろん、心のすべてで全肯定できてるわけじゃないにしても、そもそも、人間関係ってそういうもんだしな。相手が百パーセント自分にとって都合のいい存在であることはまずないんだ。ビアンカにとっての久利生くりうでさえ、一欠片も不満がないというわけじゃないそうだし。

「少佐は、周りに気を遣いすぎなんです」

とは言ってたし。

自分との関係を、周囲に気遣うことで積極的になってくれなかったのは、本音では恨んでいるらしい。彼が抱える事情を考えれば仕方ないのは分かってるから納得しようと自分自身に言い聞かせているだけで。

そういう、

<自分にとって都合の悪い部分との折り合い方>

というのが、結局は、

<この世での生き方>

になるんだろうなと俺は思う。

その意味じゃ、ビアンカはすごく頑張ってくれてるよ。そんな彼女を、俺も応援してる。

「私が未来みらいを見てますから、少佐はご自身の作業をなさってください」

自身の担当箇所の点検を終えたビアンカが、川で遊ぶ未来みらいを見守りながらデータの整理を行っていた久利生くりうに声を掛ける。

「ああ、ありがとう。頼むよ」

応えた久利生くりうは、ドーベルマンMPMの一機を従えて作業用の小屋に入る。<鍛冶>としての仕事のためだ。

ドーベルマンMPMのカメラに捉えられたその小屋は、すっかり、<鍛冶のための作業場>として整備されていた。<炉>やら<水槽>やら<鉄床かなとこ>やらが設えられているんだ。

これらも全部、コーネリアス号の工作室で作ったものだ。

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