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第三世代

ビアンカ編 職人の村

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現在、ビクキアテグ村で使っている農具や刃物の多くは、久利生くりうの手によるものだ。彼自身が、この作業場で、自ら鋼を焼きそれに鎚を振るって鍛え、形にしたものである。

コーネリアス号に備えられていたものを使えばもちろん楽だし早いし精度も高いが、

『自らの手で、自分達が使うものを作る』

ということを心掛けていこうという久利生くりうの考え方なんだ。

で、<鍛冶>といえば、アリニドラニ村でも、高炉で精製した鉄をドラニが鍛えて<鋼>にしている。それをワイバーンで空輸。ビクキアテグ村に届けて、久利生くりうが仕上げているというのが今の状態だな。

そうそう、アリニドラニ村に住み着いたルプシアンの<斗真とうま>も、いよいよ、焼いた鉄を打つ作業に入ってるぞ。最初は、

『子供が大人の真似をして<やっとこ>で掴んだ鉄に鎚を叩きつけてるだけ』

的なそれだったのが、まだまだ拙さはあるものの、ちゃんと、

『焼いた鉄を鎚で打つ』

ってのを理解してやってるんだ。もっとも、まだ、その作業の<意味>までは理解できてなさそうだけどな。

とは言え、焼いた鉄の細かい破片が飛び散ることから身を守るために、面、手袋、エプロン、靴を着けることもできるようになった。だからこそ、ドラニにも、面と手袋とエプロンと靴を着けさせた。この作業をするのにそれが必要なんだと理解させるためにな。

まあ、それについても最初はやっぱりただの<真似>として入ってもらったんだが。

作業前にドラニがそれらを身に着ける様子を見てて、斗真とうまも真似をし始めた。すると、斗真とうま自身、それらを身に着けてると焼けた鉄が発する<痛み(輻射熱によるそれ)>が緩和されることを察したようだ。本当に利口なやつだな。

そんな<斗真とうま>だからこそ、任せることができる。むしろ、そうじゃなきゃ危なくてさせられない。

そして、今、アリニドラニ村では、毎日四時間ほど、鎚の音が響いている。他は、高炉での製鉄が主な作業だ。加えて、ちゃんと休息を取ることも学んでもらうために、敢えて半日は何もせずに<家>で斗真とうまと一緒に過ごす。ただし、基本的には夜行性であるルプシアンの習性に従って昼夜逆転しているが。そのせいもあって、鍛冶の作業は『日没少し前から宵のうちにかけて』ということにしてるんだ。まあ、『遅くても夜の十時前くらいまで』って感じかな。

いずれ<職人の村>として発展していく可能性があることで、今のうちにおおまかな基準を作っておこうと思ってる。細かい部分とかについては実際に職人の村として機能し始めてから詰めていってもらうことになるだろう。

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