上 下
1,153 / 2,556
第三世代

モニカとハートマン編 人生ってのは

しおりを挟む
<公園>で真っ赤な夕日が山の稜線に差し掛かる頃、

「ビアンカ様が戻られました」

モニカが告げた。

すると、

「!」

ルコアは手で涙を拭って、ぱあっと笑顔になって振り返り、

「分かった…!」

声を上げて公園を出、するすると滑る様に廊下を急いだ。完全に<サーペンティアンとしての自分の体>を使いこなせているのがそれでも分かる。

人間が二本の足で歩くのとはわけが違う動き。

しかも、蛇には似ていても<地球の蛇>とは違うサーペンティアンとしてのそれは、蛇のように鱗を活かしたものじゃなかった。胴体そのものが非常に細かく複雑にうねっていてそれによって体を前に送り出すんだ。

正直、よくそんなことができるもんだと、説明を受けて唸ってしまったよ。

おそらく、元々体の使い方についてはある程度は頭に入っていたんだろうが、それでも人間の感覚とはまったく違っていることが影響してだろう、最初はまともに動くこともできなかった。その所為で、発見された時はじっとしてた感じか。人間が普通に這いずるような形でやっとあそこまで移動したらしい。

その間、よく他の肉食獣達に襲われなかったものだと思う。

まあ、川からコーネリアス号までの範囲については<安全圏>という形で、ドーベルマンDK-aらを哨戒に当たらせてたけどな。それにも発見されずりん達のテリトリーの近くまで這いずってきたわけだ。

そうやって這いずっていた時のルコアの気持ちを想像すると、胸が締め付けられる。

たった一人でこんな場所に突然放り出され、まともに動かせない体を引きずりつつ、だぞ? 自分に置き換えて考えてみたら、頭がおかしくなりそうだよ。

それを考えたら、光莉ひかり号で不時着し、エレクシアをつれていた俺なんて、恵まれすぎていて本当に申し訳ない。

そういう意味でも、俺がシモーヌやビアンカや久利生くりうやルコアを気遣うのは、むしろ人間(地球人)として自然なことだと思う。

すると、モニカのカメラが捉える光景を映し出すタブレット越しに俺が見守る中で、ルコアは、

「おかえりなさい!」

コーネリアス号のカーゴスペースのハッチを開けてビアンカを出迎えた。それこそ、母親の帰りを待ちわびていた娘のように。そんな彼女に、ビアンカも、

「ただいま」

母親のように笑顔を向けてくれる。

つくづく思う。

ルコアを見付けたのがあんじゃなくりんだったら?

ビアンカがいなかったら?

ってな。

見付けたのがりんだったら、ルコアは食われていたかもしれない。

母親役を引き受けたのがアラニーズであるビアンカじゃなくシモーヌだったら、今みたいに心を開いてはくれなかったかもしれない。

それを考えると、人生ってのは本当に<出逢い>に左右されるんだなって実感するよ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...