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第三世代

鋭編 仲間

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再び時間を遡って……

新暦〇〇三十一年三月二十日。



えいは、マンティアンであるめいかくの息子である。つまり俺の実の<孫>だ。

しかし、マンティアンとしては非常に大人しい(あくまでもマンティアンとしてはである)彼は、自身の種族としての生き方を貫くことができなかった。

そういう意味では、<脱落者>、<不適合者>、という風に言えるのかもしれない。

だが、俺はえいをそういう目では見たいとは思わない。マンティアンとしては確かに脱落者であり不適合者かもしれないが、少なくとも彼は、マンティアンでありながら俺達の群れで穏やかに生きることができてる。

しかも、自分の手で自分の食い扶持を稼ぎ、自分のことは自分でできてる。

まあ、<家>については俺達が提供してるわけだが、たぶん、それがなくても彼は軒下でも不満は抱かないだろう。彼に家と言うか部屋を提供してるのは、俺達の側の気分の問題だ。

『自分の孫を軒下で寝かせてる』

というのは、さすがに非常に気持ちが落ち着かない。

それだけの話だ。

正直、ホントに簡易の仮設の小屋って感じの部屋だからな。

そんな部屋で文句も言わずに過ごしてくれてるえいは、非常にマイペースでもある。気が付いたら部屋におらず、しかし次に気が付いたらいつの間にか帰っている。

それでも、ドローンのカメラには、森の中での狩りの様子が映ってもいた。

はっきり言って、レッド達や駿しゅん達を狙えば手っ取り早く餌にありつけるはずが、えいは、レッド達どころか駿しゅん達も狙わなかった。

彼にとっては家族に準ずる存在という認識なのかもしれない。もっとも、駿しゅん達の群れの場合は若干意味合いが違う可能性も有り得るな。

その一方で、目の前をちょろちょろされると反射的に手が出てしまうというのはあるらしい。

だから、狩りの時以外には部屋から出ず、目に入らないようにしてるのかもな。

そして、狩りに出る時にはすぐさま森に入ってしまって、しかも駿しゅん達の縄張りよりも奥に。それを自覚的にやってるみたいだから、えいはすごく頭がいいんだ。

が、そこで捕えてるボクサー竜ボクサーが本当に駿しゅんの群れの仲間ではないという確証はないのも事実なんだよ。一応、駿しゅんの群れの周辺には常にドーベルマンDK-aのろく号機がいるから、ろく号機が傍にいれば間違いなく駿しゅんの仲間なんだが、中にはどうしても群れからはぐれるのも出てくるし。

もうその辺りについては、レッド達の子が駿しゅんの縄張りに入り込んで犠牲になったのと同じで、割り切るしかないんだろう。なるべく避けようとしてくれてるだけでもすごいことだと思う。

えいの方も、駿しゅんの群れの近くにはろく号機がいるから、

『家にいつもいるおかしなのと同じ奴がいつも一緒にいる=仲間』

という認識になってるのかもしれない。

……いや、単に不気味なのが傍にいるから避けてるだけかもだが。

家でも、ドーベルマンDK-aには決して近付こうとしないし。

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