上 下
957 / 2,557
第三世代

鋭編 仲間

しおりを挟む
再び時間を遡って……

新暦〇〇三十一年三月二十日。



えいは、マンティアンであるめいかくの息子である。つまり俺の実の<孫>だ。

しかし、マンティアンとしては非常に大人しい(あくまでもマンティアンとしてはである)彼は、自身の種族としての生き方を貫くことができなかった。

そういう意味では、<脱落者>、<不適合者>、という風に言えるのかもしれない。

だが、俺はえいをそういう目では見たいとは思わない。マンティアンとしては確かに脱落者であり不適合者かもしれないが、少なくとも彼は、マンティアンでありながら俺達の群れで穏やかに生きることができてる。

しかも、自分の手で自分の食い扶持を稼ぎ、自分のことは自分でできてる。

まあ、<家>については俺達が提供してるわけだが、たぶん、それがなくても彼は軒下でも不満は抱かないだろう。彼に家と言うか部屋を提供してるのは、俺達の側の気分の問題だ。

『自分の孫を軒下で寝かせてる』

というのは、さすがに非常に気持ちが落ち着かない。

それだけの話だ。

正直、ホントに簡易の仮設の小屋って感じの部屋だからな。

そんな部屋で文句も言わずに過ごしてくれてるえいは、非常にマイペースでもある。気が付いたら部屋におらず、しかし次に気が付いたらいつの間にか帰っている。

それでも、ドローンのカメラには、森の中での狩りの様子が映ってもいた。

はっきり言って、レッド達や駿しゅん達を狙えば手っ取り早く餌にありつけるはずが、えいは、レッド達どころか駿しゅん達も狙わなかった。

彼にとっては家族に準ずる存在という認識なのかもしれない。もっとも、駿しゅん達の群れの場合は若干意味合いが違う可能性も有り得るな。

その一方で、目の前をちょろちょろされると反射的に手が出てしまうというのはあるらしい。

だから、狩りの時以外には部屋から出ず、目に入らないようにしてるのかもな。

そして、狩りに出る時にはすぐさま森に入ってしまって、しかも駿しゅん達の縄張りよりも奥に。それを自覚的にやってるみたいだから、えいはすごく頭がいいんだ。

が、そこで捕えてるボクサー竜ボクサーが本当に駿しゅんの群れの仲間ではないという確証はないのも事実なんだよ。一応、駿しゅんの群れの周辺には常にドーベルマンDK-aのろく号機がいるから、ろく号機が傍にいれば間違いなく駿しゅんの仲間なんだが、中にはどうしても群れからはぐれるのも出てくるし。

もうその辺りについては、レッド達の子が駿しゅんの縄張りに入り込んで犠牲になったのと同じで、割り切るしかないんだろう。なるべく避けようとしてくれてるだけでもすごいことだと思う。

えいの方も、駿しゅんの群れの近くにはろく号機がいるから、

『家にいつもいるおかしなのと同じ奴がいつも一緒にいる=仲間』

という認識になってるのかもしれない。

……いや、単に不気味なのが傍にいるから避けてるだけかもだが。

家でも、ドーベルマンDK-aには決して近付こうとしないし。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

処理中です...