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第三世代

保編 きっかけ

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そうして疲れ果てて、同時に苛立ちどころじゃなくなって、たもつはゆっくりと体を起こした。

すると、みどりを抱き留めていたあおが彼女を離して、みどりたもつのところへと駆け寄った。

自分に抱き付いてくる彼女に、今度はたもつも苛立ちをぶつけることはなかった。

いやはや、大人達の見事な連携プレイに称賛を禁じ得ない。

みどりの不安を受け止めるあお

たもつの苛立ちを受け止めるとどろき

それらをしっかりと見守り、見届けるほまれ

正直、俺にも同じことができるかと言われると、自信がない。

俺なんかよりほまれ達の方がよっぽど<大人>だと思う。

いくらパパニアンの社会が、人間のそれほどは複雑じゃないからといってもな。








新暦〇〇三十一年四月五日。



とは言え、それですべてが一気に変わるほど、この世の中ってのは単純じゃない。

たもつも、みどりに苛立ちをぶつけるようなことはしなかったが、それでも複雑な思いは抱いていたようだ。

ただ、間違いなく<きっかけ>にはなった。

たもつが、茉穂まほに顔を見せるようになったんだ。

茉穂まほは、たもつに会いたくて度々、縄張りの境界線近くまできていたらしい。たもつも、それ自体は知っていたんだろうな。

すると茉穂まほは、縄張りを超えてたもつのところへとやってきた。

普通は縄張りを侵す行為として衝突になるところではあるものの、相手が雌で、しかも、小集団のリーダーだったたもつが彼女を敵認定しなかったことで、他の若い雄達は戸惑いながらも遠巻きに二人の様子を見てた。

この日はこうして顔を合わせただけだったが、それから何度も逢瀬を繰り返し、互いに毛繕いをするようになり、キスをするようになり……

そしてある日を境に、たもつは群れに戻らなくなった。

その時の様子を、ドローンのカメラが捉えている。

茉穂まほと共に彼女の群れへと行って、その場で<土下座>に似た服従の姿勢を見せて、自身に攻撃の意志がないことを示したんだ。

もっとも、それがすぐに信用されるわけでもなく、その群れの兵隊である若い雄達に小突かれたり蹴られたりしていた。

けれどたもつは抵抗することなく、ボスが現れてもその姿勢を保った。彼の名の通りに。

こうして半日、自身の想いが本物であることを伝えるために服従の姿勢を取り続け、結果、たもつはその群れに加わることとなった。

たもつはようやく、妹離れができて、巣立つ決心がついたんだろうな。

茉穂まほとして見れば、十五年間想い続けた、もはや<執念>と呼んでもおかしくない気持ちが報われた瞬間だったわけだ。

たもつにしても、みどりのことがあったからそっちを優先してただけで、茉穂まほのことは悪からず想ってたんだろう。

が、突然、大好きな兄を失うことになったみどりと言えば、たもつの姿を求めて縄張りの境界線の辺りまで来て、

「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」

と何度もたもつを(もちろん<パパニアンの言葉>でだが)呼んでいた。

さすがにその姿には胸も痛んだものの、俺も口出しはしなかった。

そこに、すばるの姿が。

何度も毛繕いをしてもらって、さすがに気になるようにもなっていたようだ。

「……」

すごく不器用な感じで、みどりの頭を撫でていたのだった。

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