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新世代

閑話休題 「灯 FLY HIGH」前編

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新暦〇〇三十二年四月二十日。



コーネリアス号とアリニドラニ村を結ぶ定期便が就航して半年以上。すでに七百回を超えたフライトにより蓄積されたデータは、いよいよ十分なものになったと思う。

「と言うわけで、有人飛行が可能なライトプレーンを作る」

「やった~っ♡」

俺の宣言に、あかりは飛び上がって喜んだ。

待ちに待った<空への切符>だもんな。

実はここまで、あかり自身もライトプレーンの操縦法をエレクシアから教わっていた。

「いいなあ~……」

羨ましそうに指をくわえるビアンカの隣で。

さすがに体重二百キロ近いクモ人間アラニーズであるビアンカを乗せて飛ぶことができるものとなれば、<ライトプレーン>じゃいくらなんでも危なっかしすぎる。理論上は可能らしいが、ちょっと横風を受けただけでバランスを保てなくなるという話だし、重量が増えればそれだけ離陸も着陸も距離が必要になる上に滑走路も今みたいな<ただの空き地>じゃ危険すぎる。

だから申し訳ないがビアンカを飛ばすのは、現状では計画も立てられない。

「残念ですけど、ボスの判断に従います」

ビアンカはそう言ってくれる。それがまた申し訳ないが、こればっかりはな。

一方、あかり用のライトプレーン<ミレニアムファルコン号>は、準備さえ整えばすぐに製作できた。

ちなみに名前はもちろんあかりがつけた。コーネリアス号のライブラリの中にあった古いスペースオペラ映画に出てくる宇宙船の名前から付けたそうだ。

で、実機は、万が一に備えてワイバーン一型の設計をベースにしたロボットマイクロプレーンとして製作する。

『アクシーズとして空を飛んでいる』感じに近付けるため、『椅子に座る』形ではなく、ハンググライダーのそれに近い、

『機体下部に寝そべった状態で搭乗する』

方式とした。

しかも、寝そべったままでも離着陸できるし、アクシーズの血を受け継いだあかりの身体能力を活かして、自分の脚で地面を走って離着陸もできるようにする。

この辺りの融通はドーベルマンDK-aやワイバーン一型で培ったロボットとしてのマニピュレータを応用すれば簡単に実装できる。

そうして完成したものを、もちろん、あかりを想定したダミーを搭載して何度か飛行させ、各部の負荷などを測定。十分な強度が確保されているかを、応力は許容範囲内かを実地で計測する。

有人飛行なら万が一のことがあってもダメだからな。

で、五日後、いよいよ、あかりにより初フライトに至った。

ビアンカ、イレーネと一緒にコーネリアス号に行き、ミレニアムファルコン号の実物と対面。

「ぎゃーっ! カッコいい~っ!!」

と大興奮だ。

「こらこら、興奮するのはいいが、操縦は落ち着いてな」

俺の言葉に、

「わ~かってる、分かってるって~♡」

まったく。本当に分かってるのかねえ……

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