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新世代
翔編 格闘家のデータ
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エレクシアは決して相手を『舐める』ということをしない。ロボットだからな。あくまで人間の命令どおりの対処をするだけだ。
殺さずにおこうと考える俺が甘いんだろう。しかしいつも言ってる通り、殺さずに済むなら殺したくない。
だからこれで懲りて来なくなって欲しいと思う。
が、龍然はエレクシアを相手にしてさえ、引き下がろうとしなかった。
人間の一流格闘家を優に凌ぐすさまじい蹴りがエレクシアの頭を捉える。人間ならまず間違いなくこの一撃で昏倒するだろうな。
何しろエレクシアが、通信で、
「ただいまの蹴りの威力は、私が持つ人間の格闘家のデータを大きく上回っています」
と伝えてきたくらいだし。
まったく。どんだけだよ。非常識過ぎんだろ。
しかし、要人警護仕様のエレクシアにそんなものは通じない。攻撃の一切が通じないことを分からせるためにエレクシアはわざと受けたんだ。ただし、インパクトの瞬間にごくわずかに体を動かして衝撃を緩和してるのも事実だ。決して無防備に食らってるわけじゃない。
それでもお構いなしに龍然は自分から飛び込んできて、頭をぶつけてくる。頭突きだ。
エレクシアはそれを肘で受ける。
これまた、人間なら攻撃してきた方が大きなダメージを受けるやつだ。下手したら頭蓋骨骨折で命にかかわるぞ。
その上でエレクシアは左膝で顔面を狙う。なのに龍然は体をひねってそれを躱しやがる。
だがやっぱりエレクシアの方が上手で、跳ね上げた左膝の反動を活かして自分の体をひねりそのまま左回し蹴りへと移行、不安定な体勢になった龍然を蹴り飛ばす。
それなのにあいつは、再び派手に吹っ飛ばされつつも空中で体勢を整え、今度は木の幹に着地してみせた。
と思った瞬間、龍然の頭がガツン!と弾ける。
凌だった。少し間合いを取って戦いを見守っていた凌が、自分の方に吹っ飛んできた龍然の頭に容赦ない蹴りを食らわしたんだ。
チャンスと見れば躊躇わない。まったくさすがだよ。
しかも、弾かれたと思った頭が今度は逆方向に弾かれる。
エレクシアの蹴りだった。
間髪入れない頭部への連続攻撃に、遂に龍然が膝を付いた。付いたのに、なおもあいつは体を横方向に飛ばし、凌の追撃を躱す。
しかし―――――
しかし、跳んだ先で、再びエレクシアの蹴りが。
それが決め手だった。
とてつもないタフネスぶりを見せていた龍然の体が、明らかに力なく地面を転がる。
意識を失ったんだ。
『死んだ……?』
殺したくはなかった。殺したくはなかったが、ここまでの龍然の怪物ぶりを見ると、命を奪うことでしか止められないような気にさえ、確かになっていた。
だが――――
「バイタル確認。頭部の血流にも異常を示す所見なし。気を失っているだけですね」
龍然の頭に触れて、頭部を流れる血流の<音>まで含めた詳細なバイタルサインを取得したエレクシアの声。
「マジか……」
もうローバーを運転どころじゃなく停車させて画面を注視してた俺は思わず呟いていたのだった。
殺さずにおこうと考える俺が甘いんだろう。しかしいつも言ってる通り、殺さずに済むなら殺したくない。
だからこれで懲りて来なくなって欲しいと思う。
が、龍然はエレクシアを相手にしてさえ、引き下がろうとしなかった。
人間の一流格闘家を優に凌ぐすさまじい蹴りがエレクシアの頭を捉える。人間ならまず間違いなくこの一撃で昏倒するだろうな。
何しろエレクシアが、通信で、
「ただいまの蹴りの威力は、私が持つ人間の格闘家のデータを大きく上回っています」
と伝えてきたくらいだし。
まったく。どんだけだよ。非常識過ぎんだろ。
しかし、要人警護仕様のエレクシアにそんなものは通じない。攻撃の一切が通じないことを分からせるためにエレクシアはわざと受けたんだ。ただし、インパクトの瞬間にごくわずかに体を動かして衝撃を緩和してるのも事実だ。決して無防備に食らってるわけじゃない。
それでもお構いなしに龍然は自分から飛び込んできて、頭をぶつけてくる。頭突きだ。
エレクシアはそれを肘で受ける。
これまた、人間なら攻撃してきた方が大きなダメージを受けるやつだ。下手したら頭蓋骨骨折で命にかかわるぞ。
その上でエレクシアは左膝で顔面を狙う。なのに龍然は体をひねってそれを躱しやがる。
だがやっぱりエレクシアの方が上手で、跳ね上げた左膝の反動を活かして自分の体をひねりそのまま左回し蹴りへと移行、不安定な体勢になった龍然を蹴り飛ばす。
それなのにあいつは、再び派手に吹っ飛ばされつつも空中で体勢を整え、今度は木の幹に着地してみせた。
と思った瞬間、龍然の頭がガツン!と弾ける。
凌だった。少し間合いを取って戦いを見守っていた凌が、自分の方に吹っ飛んできた龍然の頭に容赦ない蹴りを食らわしたんだ。
チャンスと見れば躊躇わない。まったくさすがだよ。
しかも、弾かれたと思った頭が今度は逆方向に弾かれる。
エレクシアの蹴りだった。
間髪入れない頭部への連続攻撃に、遂に龍然が膝を付いた。付いたのに、なおもあいつは体を横方向に飛ばし、凌の追撃を躱す。
しかし―――――
しかし、跳んだ先で、再びエレクシアの蹴りが。
それが決め手だった。
とてつもないタフネスぶりを見せていた龍然の体が、明らかに力なく地面を転がる。
意識を失ったんだ。
『死んだ……?』
殺したくはなかった。殺したくはなかったが、ここまでの龍然の怪物ぶりを見ると、命を奪うことでしか止められないような気にさえ、確かになっていた。
だが――――
「バイタル確認。頭部の血流にも異常を示す所見なし。気を失っているだけですね」
龍然の頭に触れて、頭部を流れる血流の<音>まで含めた詳細なバイタルサインを取得したエレクシアの声。
「マジか……」
もうローバーを運転どころじゃなく停車させて画面を注視してた俺は思わず呟いていたのだった。
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