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新世代

翔編 中の世界 その2

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『僕達以外は誰もいない……』

と、レックスがそう告げた瞬間、

「え……?」

って、二人で声を揃えてしまってた。

だって、自分達が見ている目の前で、突然、人が現れたから。しかも、二人と同じく何一つ身に着けていない、完全な全裸で。その瞬間、二人は察した。自分達もこうして裸でここに現れたのだと。その上で、

久利生くりう!?」

レックスが声を上げる。それは確かに、私達の仲間の<久利生遥偉くりうとおい>だった。

「どういうことだ……? 転送…? いや、でも、物質転送はいまだ実験段階だったはずだ……! しかも受信機もないところになんて……!」

そう。SFとかでよく見る<物質転送>については、理論だけは成立していて、しかも、分子レベルでは実験も成功していたものの、銀河暦千年(三十七世紀末頃から三十八世紀初頭頃)の時点では実用化はされていなかった。

と言うのも、

『転送された物体は、果たしてオリジナルと同一と言えるのか?』

っていう議論の決着がついていなかったから。

転送された<もの>が果たして本当にオリジナルと同一のものであるのかという議論については、あの時点でも数十年に亘って続けられていても完全に平行線だったことで、本格的な技術検証へと進めない状態だった。

分子レベルでの実験段階では、物理の面から見れば差異は見付けられないことははっきりしてる。でも、人間の心理というのは物理では割り切れない。

<穢れ>という概念がまさにそれを顕著に表してる。細菌が付いているわけでもない、汚染物質が着いてるわけでもないものに対してでも、人間の感覚は『穢れてる』と感じてしまうことがある。

それと同じことでしょうね。

その議論は、二千年以上経った六十世紀になっても続けられてるそうだった。それに、わざわざ人間を<転送>なんてしなくても、必要とあれば、高度に進化したメイトギアを遠隔操作すれば、僅かにタイムラグはあるとしても当人がそこにいるのとほとんど変わらないレベルで対応できるから、面倒臭い議論を続けるよりはそれで間に合わせてしまった方が早いという流れにもなってるみたいで。

総合政府から完全に独立して独自の路線を突き進んでいる惑星などでは転送装置の実験を熱心に行っているところもあるそうだけど、理論が完成して二千年以上が経った今なお、機器のトラブルなどによって、年間数件だけど事故もあるという話。送信ミスや受信ミスで<消滅>しちゃったり、同じものが二つできちゃったりっていう。

そういう話を聞くと、私も正直、利用しないかなと思う。

なにしろ、さっきも言ったとおりメイトギアを遠隔操作するだけでもほとんど間に合ってしまうし、どうしても自分が行くしかないとなれば、他の惑星に行くのも恒星間航行技術ハイパードライブで簡単に行ける。

それを考えるとね。

だから彼女達は、

『この世界に転送された』

ことに気付いた時点である種の諦観を得てしまったのかも知れない。

少なくともレックスとシモーヌの二人は。

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