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新世代

翔編 魔法で動く人形

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六十世紀現在、ロボットはもはや<魔法で動く人形>同然になってるらしい。

ただ、実際に分解してみると構造は意外とシンプルで、人間の骨格を模した金属フレームを、人間の筋肉を模した<筋繊維アクチュエータ>と呼ばれる人工筋肉が繋ぎ合わせて、それらを人工皮膚で覆っているというのが大まかな構造だそうだ。

さらに、人間で言うと心臓や肺がある辺りにAIを収納する頑丈な箱があって、そのAIそのものも、透明な樹脂でコーティングされた板状の部品が何層にも重なったような形になっているだけなんだと。そこにバッテリーなどの補助的な装置が組み合わさってる。

だから、バラバラに分解しただけじゃ何がどうやって動いているのかさっぱり分からないと聞く。

で、実はその部品一つ一つがものすごい複雑な機械と言うか、それら自体が一個の完結した小さなロボットであって、その小さなロボットを何百個も組み合わせて一つの形にしてあるのが、メイトギアやレイバーギアといったロボットなんだ。

しかも、それぞれの部品にも簡易ながらAIが搭載されてる。

で、その部品一つ一つに搭載されてるAIが、二十五世紀頃の、メイトギアなどに搭載されていたAIとほぼ同レベルなんだとか。

つまり、今のメイトギアは、二十五世紀頃のメイトギア数百体分の性能を持つと考えていいってことかもしれない。

もっとも、その辺りはもはや技術者の自己満足の産物という面もあって、実は日常的な使い方をしている分にはその半分も機能が活かされていないという。

要人警護仕様のメイトギアが戦闘モードで全力稼働してても、それはあくまで<運動機能>についてであって、AIそのものの機能は逆に絞られるという話もある。余計な思考をしないからな。

しかしここまで行ってしまうと人間の手作業でどうこうできる部分は、単に部品の交換くらいなもので、壊れた部品そのものを手作業で修理するなんてのは、それこそ死んだ昆虫を生き返らせようとするようなものなんだと。

さすがにそんなものを再現できるとは思えないからなあ。

なお、現時点までで試作されたAIは、母艦ドローンに搭載して運用テスト中だ。観測目標を自律的に選定して追跡、内蔵したドローンを放出して詳細な観測を行う。

それらがいかに効率的に確実に行われるかっていうデータを蓄積して、改良を加えていってる状態だな。

規格が同じなら単にエレクシア達からデータをコピーすればいいんだが、次元が違い過ぎてコピーできないんだよ。今のAIが持ってるデータはほとんどが有機的に紐付されてて、コピーしようとしても、プールの水をコップに注ごうとするようなもので、一瞬で溢れてしまう。紐付されたデータを全部ほどいて最低限のだけを抽出するにもバカみたいに時間がかかる。

それよりはこうやって地道にそれ用のデータを蓄積した方が確実だそうだ。

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