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新世代

明編 クモ人間

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「この<ビアンカ>を保護する…!」

俺がそう声を上げると、エレクシアは、

「了解しました」

と冷静に応えた。

ひかりあかり、要救助者が出た。俺とエレクシアで救助に向かう。留守を頼む!」

たぶん、気配を感じたんだろうひかりあかりが家から出てきたところにそう声を掛けて、俺はローバーに乗り込む。

「助けてあげては欲しいですけど、無理はしないでくださいね」

エレクシアがローバーのコンディションをチェックしている間にシモーヌが窓越しに言う。

たぶん、自分のことを思い出したんだろう。コーネリアス号乗員である秋嶋あきしまシモーヌのコピーとして生まれたものの、そんな自分を受け止めるまでにはやはりかなりの葛藤があって、本心では、

『生まれてくるんじゃなかった』

と思ってしまったこともあるそうだ。

もちろん今では、

『生まれてきて良かった』

と思ってはくれてるものの、果たして<ビアンカ>も自分と同じように今の自分を受け止められるのか分からなかったらしい。

なにしろ、体が透明な以外は普通の人間のそれと変わらない姿で生まれることができた自分と違い、今回のビアンカは明らかな<異形>だ。自分自身を肯定できるようになるには相当なハードルがあるだろう。そんな彼女を危険を冒してまで助ける必要があるのかと思ってしまったのだと、後で話してくれた。

そんなシモーヌを『薄情だ!』と非難する人間もいるかもしれない。しかしこればかりは、実際にそういう形で生まれてしまった者にしか分からない心の動きがあるのも事実だと思うんだ。少なくとも俺は彼女を責める気にはなれない。

「ああ、分かってる。その辺はわきまえてるさ」

窓を開け、思わず手を伸ばして子供達にするように彼女の頭を撫でてしまった。大人の女性に対しては少々失礼だったかもしれないが、何とも言えない表情をしていた彼女があどけなく見えてしまってな。

まあ、俺から見たらオリジナルの秋嶋シモーヌでさえ半分も生きてなかったんだ。正直、子供みたいなもんだな。加えてこちらのシモーヌは、オリジナルの記憶や人格を受け継いでいるとは言っても実際に『生まれて』からはまだ十数年しか経ってない。そういう意味でも俺にとっては<娘>同然だというのもある。

「いってらっしゃ~い♡」

ひかりに抱かれたまどかがそう言って手を振ってくれる。そんな姉の真似をしてひなたも「しゃ~♡」と笑顔で手を振ってくれた。

そうして家族に見送られ、俺とエレクシアはビアンカが発見された河岸へと向かう。

本人がどう思うかは分からないが、できれば助けたい。

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