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新世代

明編 消費電力

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新暦〇〇二九年五月七日。



原子力電池の一種であるアミダ・リアクターは、放射性同位体の崩壊そのものを電気に変えるという発電装置だ。その発電能力は、燃料となる放射性同位体にもよるが、基本的には理論上数万年に渡って電気を生み出し続けるとされている。

まあそれが事実かどうかはまだ実際に数万年が経過したアミダ・リアクターが存在しないから確かめようもないものの、少なくとも最初期に作られたそれが、数百年経った今でも現役で使われてるそうだから、数万年というのはただの理論値にしても、数千年単位の寿命はあると考えてもいいんだろう。

光莉ひかり号の補機としてのものが三基、俺のローバーに搭載されたものが一基の計四基のアミダ・リアクターがあるから、一般的な住宅なら千軒以上は余裕で賄える計算になる。

ただし、だからといって頼り切りにするというのもマズいと思う。故障などの可能性もそうだが、実は消費電力の問題もある。

現代の人間社会では住宅は家電製品の塊でもあるものの、それぞれのエネルギー効率が高く、消費電力そのものは二十一世紀初頭頃のそれよりもむしろ少ないそうだ。

しかし、今の俺達の技術、と言うかここで手に入る資源を基にして作られたもののエネルギー効率は、一般的に出回っているそれらの半分にも届かないんだ。だから家電製品の数は少なくても、消費電力はむしろ多いと見積もる必要が出てくる。

光莉ひかり号やコーネリアス号の主機が使えたら住宅なんてそれこそ数十万軒いけるんだが、修理できる可能性なんて現時点では全くないからな。そもそも主機が修理できればここから脱出できる可能性もあるので話が全く違ってしまう。

だから、万が一の場合のバックアップとして補助電源も必要だろう。

とは言っても、ここで手に入る材料と、現在の設備では、地球で二十一世紀初頭頃に作られたものと同等程度の太陽電池しか作れないが。

変換効率としてはせいぜい三十パーセントである。コーネリアス号に予備電源として搭載されていたものの変換効率が八十パーセントを超えているから、正直、玩具に毛が生えた程度でしかない。

さりとて、今確保できる資材では、火力発電などを行おうにも、効率的に発電できる規模のものは作れない。

なので当面は、光莉ひかり号に搭載されたアミダ・リアクターが生む電気を、無線給電器を通じて送電するのをベースに、太陽電池を補助として使う形になるだろうな。

それで間に合う暮らしを心掛けていくしかない。現状での俺達の暮らしがちょうどその感じなので、これを基準にすることになるだろう。

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