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幸せ

光は真面目だから(考えすぎてしまうんだ)

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新暦〇〇二四年十月六日。



「え…! ふくが……!?」

それが、治療カプセルから出てきてふくのことを聞いたひかりの第一声だった。そして、

「ごめんなさい……私、こんな時に……」

と。

たぶん、

『自分のミスでじゅんに怪我をさせた上に、寝てた所為でふくの臨終に立ち会えなかった』

ことについて言ってるんだろうなとはすぐに分かった。

だが俺はもちろん、そんなことでひかりを責める気なんか毛頭ない。

俺が責める気がなくても真面目なひかりは気にしてしまうんだろうな。

ひかり。今度のことで自分を責めるのは違うと俺は思う。前にも言ったとおり、本当に間が悪かっただけなんだ。人生にはこういうことが往々にしてあるんだ。

俺だって、妹のことで自分を責めた時期は何度もあった。あの子が苦しんでるのは俺の所為だと思ったことも数えきれないくらいある。

でもな、それは違ってたんだ。それは結局、<逃げ>でしかなかったんだよ。誰かの所為にしてそいつを責めて少しでも気を紛らわせたいという誤魔化しでしかなかったんだ。たまたまその<誰か>が自分自身だったというだけだ。

なにしろ、自分が悪いということにしておけば、万が一それが的外れな八つ当たりだったとしても、詫びる必要もないもんな。いくらでも好きなだけ責めることができる。

だがやっぱりそれは、『責めるべき相手が存在しない』という現実から目を逸らす為の誤魔化しでしかなかったんだって今なら分かる。

ひかりは真面目な子だから自分の責任だと思ってしまうんだろうが、それは違うんだ。誰も悪くなくてもこういうことは起こってしまう。そんな時に責めやすい誰かを見付けてそいつを責めるというのは、卑怯者のすることだと俺は思うんだ。

たとえ責める相手が、自分自身だったとしてもな。

ひかり。『誰も悪くなくても辛いことは起こってしまう』という現実から目を背けないでほしい。安易に自分を責めることに逃げないでほしい。

ひかりには、現実を受け止められる人間になってほしいと俺は思ってるんだ。

もちろんそれを押し付けるつもりはない。ただ、現実と向き合えなければ、問題の解決もままならないということだけは分かってほしいんだ」

「お父さん……」

俺の言ったことがどこまで伝わったのかは分からない。だが少なくとも、俺を見詰める彼女が何となくホッとしたような表情になったのだけは確かだと思う。

ひかりは真面目なだけに、自分の責任について考えすぎてしまう傾向がある。真面目という部分は別としても、昔の俺もそうだった。

あれこれ考えてしまう癖は今でもそうだが、少なくとも今では無駄に自分を責めすぎないようにするという意味合いもあるんだよな。

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