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幸せ

このような展開は(下策もいいところだろう)

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仲間を二頭もやられて、駿しゅん達も怒り心頭ということだろうか。

「ガアァッ!!」

「グアッッ!!」

怒声にも聞こえる吠え声を上げて樹上のアサシン竜アサシンを睨み付けていた。人間ほど複雑な精神活動はしていなくても、仲間がやられるとそれに対して<怒る>程度の反応を見せる個体もいるのは分かっている。

と言うか、駿しゅんの群れには特にその傾向が顕著かもしれない。実際、そういう反応を殆ど見せず冷淡に振る舞う群れもあるから、俺達の近くで俺達と関わっていることで何らかの影響が出ている可能性もあるな。

などと、そういう考察はさて置いて、アサシン竜アサシンとの攻防を見守ろうとは心掛ける。

それでも正直、駿しゅん達に肩入れしてしたい気分にはなってしまう。俺達にとって<良き隣人>になりつつあったのは確かだから。

だが、河を恐れて近付こうとしない筈のアサシン竜アサシンが一匹でこちらに渡ってきてしまったことも、当のアサシン竜アサシンにとってはたまらなく不安なことだったかもしれない。

同族もいない見慣れない環境で、一匹で生きることになったのは、こいつにとってはどれほどのことなんだろう。

そこまでは気にしてないかもしれないが、ついそんな風にも思ってしまう。もっと単純に、このアサシン竜アサシンのことを<悪者>として見て割り切ってしまえば、ただただ駿しゅん達を応援できたのかもしれないが。

なんて俺の心情にはお構いなしで、状況は動く。

捕らえたボクサー竜ボクサーを樹上で貪りながら、アサシン竜アサシンは次の一手を虎視眈々と狙っているかのようにも見えた。

やはり、数の上では圧倒的に優位に立つ駿しゅん達も、相手が樹上では手が出せない。

が、その時、アサシン竜アサシンの姿にスッと影が差した。

「!?」

画面を見ていた俺達が『あっ』と思うよりも早く、<それ>はアサシン竜アサシンに一撃を浴びせていた。

すい!?」

咄嗟に声を上げてしまう。

確かにそれは、ようの息子のすいだった。全く何の前触れもなく脈絡もなく、突然、アサシン竜アサシンに襲い掛かったのだ。

いや、もしかするとアサシン竜アサシンが捕えていたボクサー竜ボクサーを横取りしようとしたのかもしれない。

それにしてもまさかの展開に、俺もシモーヌも呆然とするしかできなかった。

もっとも、俺達以上にアサシン竜アサシンが驚いたかもしれないが。

タカ人間アクシーズであるすいの強力な足の爪の一撃は、致命傷とまでは行かなかったものの、アサシン竜アサシンの左目を抉り、完全に潰したのが分かった。

普通、フィクションなどであればこのような展開は下策もいいところだろうが、現実の自然の中では、好機と見れば<場の流れ>など読まないのが当然だろう。

人間の都合など、彼らは一切、考慮してくれないからな。

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