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大家族
咆哮(何が起こった!?)
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エレクシアとメイフェアの闘いは、完全に生物が割り込めるようなレベルではなかった。巻き込まれたグンタイ竜はただただ滅茶苦茶になるばかりで、その返り血で二人の体が真っ赤に染まっていくのがドローンカメラによって捉えられていた。
なのに、グンタイ竜の方も、まったく引き下がる様子もなくひたすら飛び掛かっていく。獣なら有り得ない行動とも思えた。凶が率いていた時にはまだ獣っぽい行動も見せてたが、今では完全に<アリ>のそれだ。外敵に対して自らの命などまるで厭わず向かっていく。
群れをつくるタイプのアリやハチについて、『<巣>ないし<群れ>そのものが一個の生命体であり、働きアリや働きバチはあくまでそれを構成する細胞に過ぎない』と解釈している専門家もいるそうだが、俺もこいつらの様子を見てるとそれを感じてしまった。個々のグンタイ竜は単なる<免疫細胞>に過ぎず、有害な細菌を排除しようとひたすら襲い掛かってる様子にも思えた。
となると、今のこいつらの姿を憐れむのも少し違うのかもしれないな。こいつらはこいつらの生態に従ってただ生きてるだけなんだ。そして、侵入してきた<細菌>に負ければ死ぬ。それだけということか。
無論この場合の<細菌>とは、エレクシアのことだが。
メイフェアを破壊しないように手加減はしつつ、しかし彼女に全力稼働を強いるエレクシアの姿が、グンタイ竜の血を浴びてまるで悪魔のようにさえ見える。
対して、女王を、<秋嶋シモーヌ>を守る為に必死に抗うメイフェアは、顔に点いた血が流れ、泣いているようにも見えてしまった。自分が勝てないことをとことんまで思い知らされ、あまりの悔しさに血の涙を流しているような……
だが、メイフェアも、俺がエレクシアに『メイフェアを壊すな』と命じていることは分かっていた。だから無茶をする。自分が壊れれば、エレクシアにとっては命令を果たせなかったことになるからだ。そうすればエレクシアは、一瞬、オーバーフローを起こして動きが鈍るかもしれない。
それを狙っているかのように、メイフェアは、腕や脚を取られればその時こそ好機とばかり攻撃を繰り出した。自分が壊れることさえ構わずに。
マズい…マズいぞ。このままじゃバッテリーが尽きる前にメイフェアが壊れてしまうかもしれない。
俺が焦りを感じ始めたその時、何かが叫んだ。
「うおぉぉぉおおぉぉーっっ!!」
まるで、叩きつけるかのような咆哮だった。その場にいるもの全てを威圧しようとするかのような、圧倒しようとするかのような。
そしてそれは、メイフェアの動きを止めた。エレクシアがその隙を見逃す筈もなく、彼女を振り切って女王へと迫り、ナイフを下から上へと奔らせたのだった。
なのに、グンタイ竜の方も、まったく引き下がる様子もなくひたすら飛び掛かっていく。獣なら有り得ない行動とも思えた。凶が率いていた時にはまだ獣っぽい行動も見せてたが、今では完全に<アリ>のそれだ。外敵に対して自らの命などまるで厭わず向かっていく。
群れをつくるタイプのアリやハチについて、『<巣>ないし<群れ>そのものが一個の生命体であり、働きアリや働きバチはあくまでそれを構成する細胞に過ぎない』と解釈している専門家もいるそうだが、俺もこいつらの様子を見てるとそれを感じてしまった。個々のグンタイ竜は単なる<免疫細胞>に過ぎず、有害な細菌を排除しようとひたすら襲い掛かってる様子にも思えた。
となると、今のこいつらの姿を憐れむのも少し違うのかもしれないな。こいつらはこいつらの生態に従ってただ生きてるだけなんだ。そして、侵入してきた<細菌>に負ければ死ぬ。それだけということか。
無論この場合の<細菌>とは、エレクシアのことだが。
メイフェアを破壊しないように手加減はしつつ、しかし彼女に全力稼働を強いるエレクシアの姿が、グンタイ竜の血を浴びてまるで悪魔のようにさえ見える。
対して、女王を、<秋嶋シモーヌ>を守る為に必死に抗うメイフェアは、顔に点いた血が流れ、泣いているようにも見えてしまった。自分が勝てないことをとことんまで思い知らされ、あまりの悔しさに血の涙を流しているような……
だが、メイフェアも、俺がエレクシアに『メイフェアを壊すな』と命じていることは分かっていた。だから無茶をする。自分が壊れれば、エレクシアにとっては命令を果たせなかったことになるからだ。そうすればエレクシアは、一瞬、オーバーフローを起こして動きが鈍るかもしれない。
それを狙っているかのように、メイフェアは、腕や脚を取られればその時こそ好機とばかり攻撃を繰り出した。自分が壊れることさえ構わずに。
マズい…マズいぞ。このままじゃバッテリーが尽きる前にメイフェアが壊れてしまうかもしれない。
俺が焦りを感じ始めたその時、何かが叫んだ。
「うおぉぉぉおおぉぉーっっ!!」
まるで、叩きつけるかのような咆哮だった。その場にいるもの全てを威圧しようとするかのような、圧倒しようとするかのような。
そしてそれは、メイフェアの動きを止めた。エレクシアがその隙を見逃す筈もなく、彼女を振り切って女王へと迫り、ナイフを下から上へと奔らせたのだった。
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