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大家族
狂乱(このボクサー竜の群れは何かがおかしい)
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密林の奥から響いてきた悲鳴は、おそらく深のものだろうと思われた。ただならぬ気配に俺の神経も掻き乱される。そんな俺を、「パパ…」と声を掛けながら光が案じてくれていた。
その頃、伏はまさに般若の如き形相で、エレクシアの援護を受けながらもボクサー竜を薙ぎ払いつつ悲鳴がした方へと突き進んでいる真っ最中だった。
「ガルッ! ガァッッ!! グァハァアッッ!!」
恐ろしい咆哮を上げる伏に次々と飛び掛かるボクサー竜も、明らかにおかしい。いくら数のうえで有利といえどこれほどまでの相手に躊躇うことなく襲い掛かるとか、これじゃまるで狂乱状態じゃないか。
タブレットに映しだされる映像を見ながらそんなことを考えた俺の頭に、あの、ボスらしき透明な個体の姿がよぎる。もしかするとあいつの所為か…?
ボクサー竜は確かに凶暴で危険な猛獣だが、反面、野生の動物らしい臆病さや慎重さも兼ね備えているのは分かっていた。だから俺がまだここに来て間もない頃は、俺という見慣れない動物を警戒してか近寄っても来なかったくらいにも拘らず、この群れはとにかく何かおかしいのだ。数も多すぎる。普通はここまで大きな群れは作らない…筈だ。実際、他の群れはこれほどの規模じゃない。となればやはりあの透明な個体の影響の疑いが濃厚だな。
一体、あいつは何なんだ? 不定形生物が変化したものだろうというのはまあ間違いないにしても、生態が異常だ。外見はボクサー竜やオオカミ竜に似ていても、もしかするとキメラ化した何かかもしれないな。
多数の群れで自分よりはるかに大きい相手にも怯まず襲い掛かるところなど、グンタイアリに生態が似ている気もする。そして、グンタイアリに似た昆虫が、この惑星にもいることが既に確認されていた。幸い、生息域が河の向こうまでになっているようだからこっちまでは来ないが、クモ人間の存在もそうだし、対岸の方はかなりおっかない環境のような気もする。
だが今はそんなことはどうでもいい。深だ。深は無事なのか? とその時、タブレットの映像が切り替わった。そこに映し出されていたのは―――――
「深!?」
俺の口から思わず声が漏れる。しかも、光までが「深!」と声を上げていた。当然か、彼女にとっても自分の妹であり家族だからな。
だがそんな俺達が覗き込んでいた画面に映っていたのは、何者かに抱き抱えられてぐったりとなった深の姿だった。そしてその深を抱き抱えていたモノ。
「ヒョウ人間…か……?」
そう。それは紛れもなく、深や伏に似た姿を持ち、密林の覇権を争う猛獣の一角、ヒョウ人間なのだった。
その頃、伏はまさに般若の如き形相で、エレクシアの援護を受けながらもボクサー竜を薙ぎ払いつつ悲鳴がした方へと突き進んでいる真っ最中だった。
「ガルッ! ガァッッ!! グァハァアッッ!!」
恐ろしい咆哮を上げる伏に次々と飛び掛かるボクサー竜も、明らかにおかしい。いくら数のうえで有利といえどこれほどまでの相手に躊躇うことなく襲い掛かるとか、これじゃまるで狂乱状態じゃないか。
タブレットに映しだされる映像を見ながらそんなことを考えた俺の頭に、あの、ボスらしき透明な個体の姿がよぎる。もしかするとあいつの所為か…?
ボクサー竜は確かに凶暴で危険な猛獣だが、反面、野生の動物らしい臆病さや慎重さも兼ね備えているのは分かっていた。だから俺がまだここに来て間もない頃は、俺という見慣れない動物を警戒してか近寄っても来なかったくらいにも拘らず、この群れはとにかく何かおかしいのだ。数も多すぎる。普通はここまで大きな群れは作らない…筈だ。実際、他の群れはこれほどの規模じゃない。となればやはりあの透明な個体の影響の疑いが濃厚だな。
一体、あいつは何なんだ? 不定形生物が変化したものだろうというのはまあ間違いないにしても、生態が異常だ。外見はボクサー竜やオオカミ竜に似ていても、もしかするとキメラ化した何かかもしれないな。
多数の群れで自分よりはるかに大きい相手にも怯まず襲い掛かるところなど、グンタイアリに生態が似ている気もする。そして、グンタイアリに似た昆虫が、この惑星にもいることが既に確認されていた。幸い、生息域が河の向こうまでになっているようだからこっちまでは来ないが、クモ人間の存在もそうだし、対岸の方はかなりおっかない環境のような気もする。
だが今はそんなことはどうでもいい。深だ。深は無事なのか? とその時、タブレットの映像が切り替わった。そこに映し出されていたのは―――――
「深!?」
俺の口から思わず声が漏れる。しかも、光までが「深!」と声を上げていた。当然か、彼女にとっても自分の妹であり家族だからな。
だがそんな俺達が覗き込んでいた画面に映っていたのは、何者かに抱き抱えられてぐったりとなった深の姿だった。そしてその深を抱き抱えていたモノ。
「ヒョウ人間…か……?」
そう。それは紛れもなく、深や伏に似た姿を持ち、密林の覇権を争う猛獣の一角、ヒョウ人間なのだった。
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