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大家族

走(まさに走り回ってるんだよな)

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新暦〇〇〇三年九月二十五日



そうふくが産んだ男の子だ。生まれて一ヶ月ほどでハイハイを始め、三ヶ月ほどでもう走り回ってた。

で、どういう子かと一言で言うと、

「家の中で走り回るなっつってるだろうが!」

ってのが一番適切な表現かもしれない。興奮した子猫みたいに延々と走り回って、しかも猫科っぽいからか、サルっぽいほまれには及ばないものの動きが立体的で壁を駆け上がって頭の上から飛び掛かってきたりもする。まだ一歳にもなっていないが体格的には明らかに人間のそれより大きく、三歳と言われてもたぶん違和感はないだろう。

そして、ほまれとはまさに<犬猿の仲>と言うか、とにかく寄ると触るとケンカになる。しかも、同じふくから生まれた弟妹であるかいしんともしょっちゅうケンカをしている。

とは言え、意外なことに、見た目にも種の違うほまれを三人で束になって一方的にイジメるようなことは殆どなく、どうも、ほまれしんそうかいという組み合わせに分かれてケンカになることが多いようだ。もしかするとしんは自分の兄弟よりもほまれに対して親近感を抱いているのかもしれない。

が、そんなしんも、ほまれと二人きりになるとケンカばかりだが。

そうの話に戻すと、彼がそんなことをしてるのも、結局は狩りの練習だったりするのだろう。俺に飛び掛かってくる時には首筋に噛み付いてきたりもする。完全に獲物を倒そうとする行動だ。まだ牙が十分に育ってなくて顎の力も十分じゃないから甘噛みの範囲だとは思うものの、時々、シャレにならないくらいに痛かったりもする。

さらには、そんな子供達のことをふくは完全にほったらかしで寝ていた。全てが生きていく為の練習と言うか訓練と言うかになってるってことなんだろうな。

ドローンを使ったこれまでの調査で、ふくの仲間は、群れは作るもののその規模は決して大きくなく、雌同士の序列はあるらしいが群れ全体としてのルールはそれほど厳格なものでもなく、個人主義と言うかそれぞれが好き勝手にしているようだ。ただし群れのボスである雄の機嫌を損なうと雌も子供も容赦なくぶちのめされる感じなので、少々DVっぽくはある。それでもまあ、ここで生きていくにはそういう激しさが必要だということなんだろう。人間の感覚を押し付けても意味がない。それに、雌に逆襲されて負けるとその雄は群れを追い出されてしまうようでもある。

だがその場合でも、他の雌が雄に加勢して勝つと、それも雄の勝ちになるらしい。

ん? それって、エレクシアの忠誠と強さを後ろ盾にしてる俺と同じなのか……?

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