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ハーレム

刃の習性(完全に昆虫のそれじゃないよな)

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じんは、すごく慎重にゆっくりと近付いてきた。それに比して、ひそかは距離を取る。まあこの辺は当然だろうから今はいい。

危険を感じてるのは俺だけじゃなくじんもそうなんだと実感できたことで、俺は自分が意外なほど落ち着いてるのを感じてた。相変わらず首筋にピリピリした気配はあるから緊張はしてるんだと思うが、恐怖はそれほどじゃない気がする。

お互いの手が届くほどの距離まで来て、じんは、差しのべられた俺の手にそっと指を触れさせた。瞬間、ビクッと引っ込めたが、俺がそのままにしてるのを見て、再度、指を触れさせてくる。その仕草に、あれほど危険を感じてた凶暴な猛獣の気配は感じ取れなかった。

まあそうか。一般的に猛獣と呼ばれてる動物にしたって、基本的にはものすごく臆病なんだ。怖いから攻撃的になり、手加減ができなくなる。じんもそれと同じだ。

こうしてみるとやはり昆虫ではなくトラやライオンといったタイプの猛獣に近いんだと分かる。昆虫は肉体の構造からして人間とは異質すぎるしそもそも精神とか心理とかいったものを持ち合わせていないから共感のしようもないが、その点ではまだトラやライオン程度には分かり合えそうだ。しかもじんの場合は、外見上も人間に近い部分もある。

じんは、指を触れても俺が何もしてこないことを確かめて、今度は両手で俺の手を掴んできた。しかし力は入ってない。いきなり指に噛り付いたりってこともあるかも知れないが、その為に体に力が入ればエレクシアはそれを察知して止めてくれるだろう。心配はない。

両手で触れても大丈夫と思ったのか、今度は鼻を近付けて臭いをかぎ始めた。この辺りもやはり昆虫とは違うな。どちらかと言えば犬や猫に近い行動だと思った。

するととうとう、俺の手を自分の首に擦り付け始めた。触れた感触は、思ったより柔らかい。胸の辺りの外皮は三八口径の弾丸でも貫通できない程度の強度はあるようだが、首の辺りは明らかにそれより柔らかそうだった。つまり、首はじんにとっても弱点だろう。その弱点を俺に触れさせるというのは、彼女がそれだけ俺に気を許したということだと思った。

後で詳しく調べて分かったことだが、じんの首筋にはフェロモンを分泌する部分があり、この時の行動は、自分のフェロモンを俺に付けて自分のものだと主張する為のものだったようだ。

この時点ではまだそこまで分からなかったものの、俺の手を自分の首筋に擦り付けるじんの姿も、親に甘える子供のように見えて、可愛らしいと思ってしまったのだった。

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