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ハーレム

昆虫(いや、シルエット的にはそうは見えんが)

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もしひそかが、夢色星団に逃げ込んだ人間の末裔なら、要はただの地球人の成れの果てってことだから、世紀の大発見とはいかない。だがそう考えると今度はこの急激な変化の理由が分からない。たとえ千年前、いや、最初期の調査隊とかが遭難して住み着いたんだとしても二千年程度にしかならない筈だから、その間でここまで人間離れしてしまうかな。

実際、俺達人間だって、まだ地球にいた頃から何千年経っても、そんなにびっくりするほどは変化もしてないし。俺が子供の時に本で読んだ、地球にいた頃の人間が想像したという未来人の姿のように、頭でっかちで顎が退化した怪物みたいな外見にはなってない。普通はそんなものの筈なんだ。

しかし、見れば見るほど、体毛を別にしたらやっぱり人間そっくりすぎだよな。人間以外の生物が人間そっくりに進化するのと、人間がたった千年や二千年の間にここまで変化するのと、どっちが有り得るかなあ。

なんてことを考えている時、エレクシアが警告を発した。

「伏せて!!」

エレクシアが俺に覆いかぶさるのと、俺の頭があった位置を何かが奔り抜けるのとは、ほんの一瞬の差しかなかった。

「なんだ!?」

地面に伏せた俺が視線を向けた先に、何かがいた。明らかに生き物だった。昆虫のそれを思わせるキチン質っぽい質感の表面は玉虫色に輝いていて、正直、綺麗だとも思った。だがそいつのシルエットは、昆虫のそれとはぜんぜん違っていた。と言うか、人間…か?

頭の大きさと体とのバランス。顔の部分の目、鼻、口らしきそれぞれのパーツの形と位置関係、手足も二本ずつで長さ的にも微妙に長すぎる気はするがそれでも人間っぽい範疇には収まってるようにも見える。しかも、胸の辺りにはご丁寧に乳房を連想させる膨らみさえ二つある。

「おいおい、今度は昆虫少女ってか?」

思わず呟いてしまった通り、それは、昆虫っぽい少女と言うか、少女っぽい昆虫と言うかという、奇怪きっかいな生き物だった。

が、その少女っぽい見た目に反して、俺の背中にはびっしょりと汗が噴き出ていた。冷や汗だ。俺の体が本能的に危険を感じてしまったらしい。

『こいつ…肉食だ……』

よくよく見ると、そいつの手は、指が四本しかなかった。いや、違うな。小指にあたる部分が異様に長くて腕に添うように伸びてるんだ。しかも、鋸状にギザギザになっている。まるで、カマキリのカマのように。

俺を庇いつつ地面に膝をついて身構えるエレクシアの後ろで、俺はハンドガンのセーフティーを外していた。

だがその時、<カマキリ少女>の意識が俺とエレクシアから外れるのが分かった。

「ヤバい!」

俺が叫ぶのと同時に、カマキリ少女が凄まじい速さで動いた。その先には、ひそかの姿があったのだった。

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