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ジャックの群れ
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<ジャックの群れ>は、一番年上でもジャックより二年程度上なだけの、非常に若いそれだった。若すぎるそれだった。数は二十四頭。完全に成体になっている者、三。ほぼ成体と変わらない者、ジャックを含めて五。それ以外はまだ完全に幼体だった。しかもその半数は生まれて数ヶ月である。
対して<キングの群れ>は十一頭。かなり小さな群れになってしまったものの、その半数は雌なので、子供が生まれれば何とかなるだろう。しかし、ジャックの群れの方は、幼体達が大きくなるまで果たして持ち堪えられるのかどうか……
だがそれでも、こうなってしまった以上はやるしかない。
<縄張り>を確保するにはキングや他の群れのボスを倒して奪うしかないが、今はまだ確実に勝てる目算が立たない。なのでジャックは、キングの縄張り内に隠れ住むようにして何とか対処しようとした。
キングの群れが狩りのために向かう場所はおおむねローテーションが決まっていて、ジャックはそれをよく知っていた。だからこそキング達の狩りの邪魔をすることなく、別動隊を繰り出すことができたのだ。
なので、自分が今以上に力をつけて確実にキングか他の群れのボスを倒せるようになったらその時こそ縄張りを奪い取り、そこを自分達の安住の地とすることを目指すべきと考えた。
とは言え、キング達に見付からないように常に寝床を変えるのは、決して楽なことではなかった。ジャックはキングの縄張り内をほぼすべて記憶していて、寝床になりそうな場所については把握しているものの、ほとんど毎日それを変えるというのは大変だった。
それというのも、オオカミ竜の習性として、<寝床>はそんなにしょっちゅう変えるものではなかったからだ。外敵の襲撃を受けたり、寝床に適さない状態になった場合には移動するものの、その頻度は精々数ヶ月に一度。でないと落ち着いて幼体を育てられないのだ。
実際、ほとんど毎日のように寝床を変えるストレスの所為か、特に幼かった幼体達の内の二頭が、一ヶ月もしない間に立て続けに死んだ。
他の幼体達が起きても起きてこず、ジャックが揺すっても起きなかったのだ。
「……」
完全に死んでいることを確かめると、ジャックはその幼体を容赦なく食らった。オオカミ竜は人間のように泣いたりはしないが、その表情はどこか悔しそうにも見えた。
『自分が不甲斐ないばかりに幼体を死なせてしまった』
と……
けれど仲間達は、ジャックを責めたりはしなかった。こんな形で死ぬのはそれは弱かったからだと、生きる力がなかったからだと、オオカミ竜なら考えるからだ。
対して<キングの群れ>は十一頭。かなり小さな群れになってしまったものの、その半数は雌なので、子供が生まれれば何とかなるだろう。しかし、ジャックの群れの方は、幼体達が大きくなるまで果たして持ち堪えられるのかどうか……
だがそれでも、こうなってしまった以上はやるしかない。
<縄張り>を確保するにはキングや他の群れのボスを倒して奪うしかないが、今はまだ確実に勝てる目算が立たない。なのでジャックは、キングの縄張り内に隠れ住むようにして何とか対処しようとした。
キングの群れが狩りのために向かう場所はおおむねローテーションが決まっていて、ジャックはそれをよく知っていた。だからこそキング達の狩りの邪魔をすることなく、別動隊を繰り出すことができたのだ。
なので、自分が今以上に力をつけて確実にキングか他の群れのボスを倒せるようになったらその時こそ縄張りを奪い取り、そこを自分達の安住の地とすることを目指すべきと考えた。
とは言え、キング達に見付からないように常に寝床を変えるのは、決して楽なことではなかった。ジャックはキングの縄張り内をほぼすべて記憶していて、寝床になりそうな場所については把握しているものの、ほとんど毎日それを変えるというのは大変だった。
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と……
けれど仲間達は、ジャックを責めたりはしなかった。こんな形で死ぬのはそれは弱かったからだと、生きる力がなかったからだと、オオカミ竜なら考えるからだ。
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