17 / 95
気苦労の連続
しおりを挟む
ジャックは賢いからこそ群れを分割することは得策ではないと考えた。群れが大きくなって餌がたくさん必要になる点についても、自分が工夫してより確実に狩りを成功させれば何とかなるはずだった。
けれど、ジャックをボスに据えようと考える者達にとっては、それはさほど重要なことじゃなかったらしい。その者達はとにかくジャックをボスとして掲げたかったのだろう。
だからある時、ジャックが仲間を連れて狩りに出た時に、彼を慕う者達が全員、ついてきてしまったのだ。
ジャックはキング達のところに戻ろうと促すが、仲間達はもうそれには従わなかった。
「グウウ……」
この事態に、さすがのジャックも狼狽えた。キング達のところに戻ろうと歩き出すもののついてこない仲間達を見て、引き返してくる。それを何度も繰り返し、逡巡する。
現在の<ボス>はあくまでキングだ。そのキングに従えないのなら確かに群れを出て行くしかないだろう。そして自分はキングをボスとして仰いでいる。
けれど、今、この者達だけで群れを離れれば早晩、壊滅するであろうことは、ジャックには予測できてしまった。
『みんな死んでしまう……』
と。
自分が指揮しなければまだまだまともに狩りも成立しないのだから。そして子供達の面倒を見る成体も少なく、守り切れないだろう。猪竜にでも遭遇すればそれこそその場で皆殺しになるかもしれない。
加えて、『群れを出る』ということは新たに縄張りを確保しなければいけない。この辺りで空いている場所などなかったはずなので、どうやって縄張りを得るというのか? なのに仲間達は、キングの下には帰ろうとしない。
「グ…ググ、グルルッウル」
ジャックはなんとか説得を試みるものの、聞いてくれない。
仲間達も、確信があったようだ。ジャックは自分達を見捨てないと。自分達がキングの下に戻ることを頑として拒めば、ジャックは折れてくれると。
そしてそれは、事実だった。
仲間達の固い意志に根負けして、ジャックはそのまま仲間達を率い、新しい群れの<ボス>に収まることとなった。
しかしそれは、ジャックにとっては気苦労の連続となった。
新しく縄張りを確保するにも他の群れと戦って奪い取るしかない。それこそキングを倒してキングの群れの縄張りを奪ってしまうという選択もあるだろうが、今のジャックではキングを相手に確実に勝てる見通しが立たなかった。
彼は賢いが、キングを出し抜くだけならまだ何とかなりそうだったが、根本的な<力の差>はまだいかんともしがたかったのだ。
けれど、ジャックをボスに据えようと考える者達にとっては、それはさほど重要なことじゃなかったらしい。その者達はとにかくジャックをボスとして掲げたかったのだろう。
だからある時、ジャックが仲間を連れて狩りに出た時に、彼を慕う者達が全員、ついてきてしまったのだ。
ジャックはキング達のところに戻ろうと促すが、仲間達はもうそれには従わなかった。
「グウウ……」
この事態に、さすがのジャックも狼狽えた。キング達のところに戻ろうと歩き出すもののついてこない仲間達を見て、引き返してくる。それを何度も繰り返し、逡巡する。
現在の<ボス>はあくまでキングだ。そのキングに従えないのなら確かに群れを出て行くしかないだろう。そして自分はキングをボスとして仰いでいる。
けれど、今、この者達だけで群れを離れれば早晩、壊滅するであろうことは、ジャックには予測できてしまった。
『みんな死んでしまう……』
と。
自分が指揮しなければまだまだまともに狩りも成立しないのだから。そして子供達の面倒を見る成体も少なく、守り切れないだろう。猪竜にでも遭遇すればそれこそその場で皆殺しになるかもしれない。
加えて、『群れを出る』ということは新たに縄張りを確保しなければいけない。この辺りで空いている場所などなかったはずなので、どうやって縄張りを得るというのか? なのに仲間達は、キングの下には帰ろうとしない。
「グ…ググ、グルルッウル」
ジャックはなんとか説得を試みるものの、聞いてくれない。
仲間達も、確信があったようだ。ジャックは自分達を見捨てないと。自分達がキングの下に戻ることを頑として拒めば、ジャックは折れてくれると。
そしてそれは、事実だった。
仲間達の固い意志に根負けして、ジャックはそのまま仲間達を率い、新しい群れの<ボス>に収まることとなった。
しかしそれは、ジャックにとっては気苦労の連続となった。
新しく縄張りを確保するにも他の群れと戦って奪い取るしかない。それこそキングを倒してキングの群れの縄張りを奪ってしまうという選択もあるだろうが、今のジャックではキングを相手に確実に勝てる見通しが立たなかった。
彼は賢いが、キングを出し抜くだけならまだ何とかなりそうだったが、根本的な<力の差>はまだいかんともしがたかったのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

『星屑の狭間で』(対話・交流・対戦編)
トーマス・ライカー
SF
国際総合商社サラリーマンのアドル・エルクは、ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』の一部として、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』に於ける、軽巡宙艦艦長役としての出演者募集に応募して、凄まじい倍率を突破して当選した。
艦長役としての出演者男女20名のひとりとして選ばれた彼はそれ以降、様々な艦長と出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦う事にもなっていく。
本作では、アドル・エルク氏を含む様々な艦長がどのように出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦い合いもしながら、その関係と関係性がどのように変遷していくのかを追って描く、スピンオフ・オムニバス・シリーズです。
『特別解説…1…』
この物語は三人称一元視点で綴られます。一元視点は主人公アドル・エルクのものであるが、主人公のいない場面に於いては、それぞれの場面に登場する人物の視点に遷移します。
まず主人公アドル・エルクは一般人のサラリーマンであるが、本人も自覚しない優れた先見性・強い洞察力・強い先読みの力・素晴らしい集中力・暖かい包容力を持ち、それによって確信した事案に於ける行動は早く・速く、的確で適切です。本人にも聴こえているあだ名は『先読みのアドル・エルク』
追記
以下に列挙しますものらの基本原則動作原理に付きましては『ゲーム内一般技術基本原則動作原理設定』と言う事で、ブラックボックスとさせて頂きます。
ご了承下さい。
インパルス・パワードライブ
パッシブセンサー
アクティブセンサー
光学迷彩
アンチ・センサージェル
ミラージュ・コロイド
ディフレクター・シールド
フォース・フィールド
では、これより物語が始まります。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。
青花美来
ライト文芸
目が覚めたら、病院のベッドの上だった。
大怪我を負っていた私は、その時全ての記憶を失っていた。
私はどうしてこんな怪我をしているのだろう。
私は一体、どんな人生を歩んできたのだろう。
忘れたままなんて、怖いから。
それがどんなに辛い記憶だったとしても、全てを思い出したい。
第5回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
【なろう440万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。

アンドロイドちゃんねる
kurobusi
SF
文明が滅ぶよりはるか前。
ある一人の人物によって生み出された 金属とプラスチックそして人の願望から構築された存在。
アンドロイドさんの使命はただ一つ。
【マスターに寄り添い最大の利益をもたらすこと】
そんなアンドロイドさん達が互いの通信機能を用いてマスター由来の惚気話を取り留めなく話したり
未だにマスターが見つからない機体同士で愚痴を言い合ったり
機体の不調を相談し合ったりする そんなお話です

Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる