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第二章
十三話
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あ、朝から……致してしまったぁあ!
しかも初めて泊まった村で……。
(リオも、家帰ったらって言ってたのに……)
「いや~いい体力使ったわ。朝の走り込みやめて、こっちを日課にすっかな」
「絶対にイヤ」
そんなんされたら、こっちが死ぬわ。
こやつ……妙にスッキリした顔しおって。
「頼む、ソアを孕ませたいんだ」
「うわっ」
真面目な顔して、またおかしなこと言い出した。
さて、どう切り抜けようか。
「うーん、ナターリアの任務が終わるまでは無理?」
「ちっ……なら仕方ねぇな」
あ、なんか通じた。
そうそう、仕方ないのだよ、リオくん。
本当はナターリアから子作りに励めって言われたけど、そんなことをリオに伝えたら、毎日一日中とかシャレにならないことになりそうだから、そういうことにしておこう。
「んで、ナターリアの任務って?」
「簡単に言うと聖獣集めっすねぇ」
「なるほど、確かに簡単で分かりやすい」
とりあえず今はそっち優先で構わないだろう。
子どもができたら、聖獣探しになんか行けないしね。
「リオはこれから王都に戻るの?」
「そのつもりだが……お前はルルムに戻らねぇのか?」
私は頷いた。
「聖獣の情報をもっと得ようと思って、とりあえずこの村の近くにある大きな街のギルドに寄って行こうかなと」
ギルド以外にも別の目的があるんだけどさ。
リオに言うと、なんか面倒くさいことになりそうだから、あえて話題にしない。
「ふ~ん……じゃ、俺もそこに行くわ」
げっ……じゃなくて、
「えっ、リオは仕事大丈夫なの?」
「さぁ?」
さぁじゃねーだろ。
いくらナターリア案件が優先事項とはいえ、ちょっと本職の方をサボり過ぎではなくて?
神に認められた侯爵の息子だから、即クビになったりとかはしないだろうけどさ。
「またドラゴンみたいなヤツ相手だったら、ソア一人じゃ危ねぇし。ソアが死んだら元も子もねぇんだから、こっち優先で良いんだよ」
「そのドラゴンが仲間になったから、私の戦力もけっこう上がったと思うんだけどな」
召喚はまだ無理だけど、かなりランクアップしているはずだ。この世界ではレベル〇〇! みたいなものはないけれど。
「確かに、ソアも強くなってんな。このまま聖女として認められるのも時間の問題かもしれねぇ」
聖女かぁ……そんな柄じゃないんだけどね。
中身はただのオタク学生だったわけだし、そこは今もあまり変わりゃあしやせん。
「俺が勇者、魔法使い、剣士と全部担ってやるから安心してついてきな」
リオはそう言って、例のドヤっとした顔を披露した。
私はにこやかに微笑み返す。
魔王が抜けてるよ。
◇ ◇ ◇
私とリオは食事を終えると、すぐにこの村を発つことにした。
護衛の二人は、今回のことをギルドへ報告しに、朝早くからルルムに帰ってしまったので今は二人である。
正確には、トクともう一頭の馬もいるけれど。
「この村から近い街って言うと、湖に囲まれたシャームの街だな」
「そうそう、私初めて行くのよ。どんな所なのかなぁ」
この辺まで来ると、隣国の方も地形的にかなり近くなってくる。
この世界での国越えはそんなに難しいことではなくて、どこも比較的友好な国同士が多いので、わりと行き来もしやすいらしいのだ。
「けっこう綺麗な街だぞ。建物の往来は橋か船で行くんだが、シャームは有名な観光地でもある」
イタリアのヴェネツィアみたいな感じかな?
なんか楽しそう。
『お嬢、あそこは食べ物も美味しいんだって。観光地なもんで、有名な職人が集まってくるらしいよ。僕も行くのは初めてなんだけど』
「へぇ、そうなんだ」
トクは馬なのに街事情に詳しいのね。
「なに?」
「トクがね、食べ物も美味しいって」
「ほぅ、よく知ってんな」
トクは白馬のアナから聞いたらしい。
アナはリオの愛馬だ。
トク同様に私の大事な友達でもある。
「アナは、確かにシャームへ何度か行ったことがある。そういや……あれだ、最近はお前の兄貴も仕事でシャームによく出ていると言っていたな」
おっと……リオも知っていましたか。
そうですそうです、実はシャームの街はこの体の実の兄であるシュウカン・リペンドールが遠征によく行く場所でもあるのです。
そして何を隠そう、彼こそが私が前世の時にハマった乙女ゲームのNo. 1推しキャラ(のモデルにされた人)だったのだ。
この一年、学校のない長期の休日はソアの実家に帰省して、妹という立場を使いシュウカンとの甘々なブラコンライフを堪能していたが、リオと結婚してルルムの屋敷に移り住んでからは、あまり彼に会えていない。
ナターリアの誓いによって、私やリオが他の異性と何かあった場合、相手が一族ごと呪われるとかなんとかいう、よく分からん制約も、兄であるシュウカンならば平気だ。
つまりシュウカンは、リオ以外の異性で私が堂々と甘えられる、唯一の存在なのである。
だから、もしかしたら今日、シャームの街にいないかなぁなんて淡い期待もあったりして。
(いるなら待ってて! 愛しのお兄様!)
しかも初めて泊まった村で……。
(リオも、家帰ったらって言ってたのに……)
「いや~いい体力使ったわ。朝の走り込みやめて、こっちを日課にすっかな」
「絶対にイヤ」
そんなんされたら、こっちが死ぬわ。
こやつ……妙にスッキリした顔しおって。
「頼む、ソアを孕ませたいんだ」
「うわっ」
真面目な顔して、またおかしなこと言い出した。
さて、どう切り抜けようか。
「うーん、ナターリアの任務が終わるまでは無理?」
「ちっ……なら仕方ねぇな」
あ、なんか通じた。
そうそう、仕方ないのだよ、リオくん。
本当はナターリアから子作りに励めって言われたけど、そんなことをリオに伝えたら、毎日一日中とかシャレにならないことになりそうだから、そういうことにしておこう。
「んで、ナターリアの任務って?」
「簡単に言うと聖獣集めっすねぇ」
「なるほど、確かに簡単で分かりやすい」
とりあえず今はそっち優先で構わないだろう。
子どもができたら、聖獣探しになんか行けないしね。
「リオはこれから王都に戻るの?」
「そのつもりだが……お前はルルムに戻らねぇのか?」
私は頷いた。
「聖獣の情報をもっと得ようと思って、とりあえずこの村の近くにある大きな街のギルドに寄って行こうかなと」
ギルド以外にも別の目的があるんだけどさ。
リオに言うと、なんか面倒くさいことになりそうだから、あえて話題にしない。
「ふ~ん……じゃ、俺もそこに行くわ」
げっ……じゃなくて、
「えっ、リオは仕事大丈夫なの?」
「さぁ?」
さぁじゃねーだろ。
いくらナターリア案件が優先事項とはいえ、ちょっと本職の方をサボり過ぎではなくて?
神に認められた侯爵の息子だから、即クビになったりとかはしないだろうけどさ。
「またドラゴンみたいなヤツ相手だったら、ソア一人じゃ危ねぇし。ソアが死んだら元も子もねぇんだから、こっち優先で良いんだよ」
「そのドラゴンが仲間になったから、私の戦力もけっこう上がったと思うんだけどな」
召喚はまだ無理だけど、かなりランクアップしているはずだ。この世界ではレベル〇〇! みたいなものはないけれど。
「確かに、ソアも強くなってんな。このまま聖女として認められるのも時間の問題かもしれねぇ」
聖女かぁ……そんな柄じゃないんだけどね。
中身はただのオタク学生だったわけだし、そこは今もあまり変わりゃあしやせん。
「俺が勇者、魔法使い、剣士と全部担ってやるから安心してついてきな」
リオはそう言って、例のドヤっとした顔を披露した。
私はにこやかに微笑み返す。
魔王が抜けてるよ。
◇ ◇ ◇
私とリオは食事を終えると、すぐにこの村を発つことにした。
護衛の二人は、今回のことをギルドへ報告しに、朝早くからルルムに帰ってしまったので今は二人である。
正確には、トクともう一頭の馬もいるけれど。
「この村から近い街って言うと、湖に囲まれたシャームの街だな」
「そうそう、私初めて行くのよ。どんな所なのかなぁ」
この辺まで来ると、隣国の方も地形的にかなり近くなってくる。
この世界での国越えはそんなに難しいことではなくて、どこも比較的友好な国同士が多いので、わりと行き来もしやすいらしいのだ。
「けっこう綺麗な街だぞ。建物の往来は橋か船で行くんだが、シャームは有名な観光地でもある」
イタリアのヴェネツィアみたいな感じかな?
なんか楽しそう。
『お嬢、あそこは食べ物も美味しいんだって。観光地なもんで、有名な職人が集まってくるらしいよ。僕も行くのは初めてなんだけど』
「へぇ、そうなんだ」
トクは馬なのに街事情に詳しいのね。
「なに?」
「トクがね、食べ物も美味しいって」
「ほぅ、よく知ってんな」
トクは白馬のアナから聞いたらしい。
アナはリオの愛馬だ。
トク同様に私の大事な友達でもある。
「アナは、確かにシャームへ何度か行ったことがある。そういや……あれだ、最近はお前の兄貴も仕事でシャームによく出ていると言っていたな」
おっと……リオも知っていましたか。
そうですそうです、実はシャームの街はこの体の実の兄であるシュウカン・リペンドールが遠征によく行く場所でもあるのです。
そして何を隠そう、彼こそが私が前世の時にハマった乙女ゲームのNo. 1推しキャラ(のモデルにされた人)だったのだ。
この一年、学校のない長期の休日はソアの実家に帰省して、妹という立場を使いシュウカンとの甘々なブラコンライフを堪能していたが、リオと結婚してルルムの屋敷に移り住んでからは、あまり彼に会えていない。
ナターリアの誓いによって、私やリオが他の異性と何かあった場合、相手が一族ごと呪われるとかなんとかいう、よく分からん制約も、兄であるシュウカンならば平気だ。
つまりシュウカンは、リオ以外の異性で私が堂々と甘えられる、唯一の存在なのである。
だから、もしかしたら今日、シャームの街にいないかなぁなんて淡い期待もあったりして。
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