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第二章
十四話
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湖の中に浮かぶ街、シャーム。
明るめのレンガで造られた建物が、整然と並べられている美しい街並みだ。
並んだ建物の間に入るのは、石が敷き詰められ舗装された道などではなく、穏やかに流れている水路のみである。
ここは浄化装置がうまく働いているのか、街の中の水はとても澄んでいて、小魚もゆらゆらと泳いでいるのが見えるほどに透明だ。
いくら綺麗な街だからといって、いつまでも入口で見惚れているわけにはいくまい。
私たちは小船に乗って、街の中心にある広場まで渡った。
「ソアはギルドに行くんだろ? 俺はこの街の領主にちょっとだけ顔出してくるわ。一応、親族だもんで」
「おっけー」
了解了解です。
どうやらリオは、東側に住んでいらっしゃる親戚のお貴族さんに会いに行くようだ。
つまり、ここで一旦コンビ解散っすね。
ならば私は、今から自分のペースで行動するのみ。
広場から正面にある大きな橋を進んだら、一際大きくて目立つ、派手な建物の前に着いた。
この建物こそが、この街のギルド本部であり、様々な冒険者や旅人が行き交う交流の場でもある。
私は聖獣の目撃情報を目当てに、ギルドの中へと入った。
ここのギルド内部はかなり広々としている。
わりと賑やかだが、そこまで混雑しているほどではない。
さっそく私は、近くにある受付カウンターの女性に聖獣の話を伺うと、面白い話を聞くことができた。
しかもこれは、ごく最近入ってきて、まだあまり知られていない希少な情報なのだとか。
受付嬢から聞いた動物を、もし見つけることができたら、世紀の大発見となるかもしれない。
しかもそれをテイムなんかできちゃったりしたら、それこそ王様とかから表彰されたりして……。
(うひゃあ、そんなことになったらどうしよう……ギ、ギネスブックに載るかしら? って、この世界にギネス記録なんてものは存在していなかったわね)
私は受付の女性にお礼を言ってギルドから出た。
そして、街の中心広場に戻り、今度は小船で西に向かう。
西側の住宅街の中を船で進み、しばらく経つと離れ小島のような場所についた。
ここの小島には、この国の騎士団が駐在する建物があり、王都から派遣された騎士が適度に滞在しているのだ。
門の前にいる兵士に名前を告げると、私のことに気がついたのか、すぐにシュウカンを呼びに行ってくれる。
(私ってけっこう有名人だったりするのよね……ナターリア関連やリオとの関係性から)
白くて大きな建物から、一人の騎士が駆け足でこちらに向かってきた。
シュウカン・リペンドール……ソアとよく似ている青色の髪に、まつ毛が長くキリッとしたグリーンの瞳を持つ、リアル王子様のような彼は、ソアの実の兄である。
「ソア、久しぶりだね。まさか、シャームの街で会えるとは思わなかったよ」
「お兄様、お久しぶりですね! お会いできて嬉しいです!」
私は兄が門から出てくると同時に、喜びのあまり彼に飛びついた。
シュウカンは私を軽々と抱き上げると、そのまま小島の外れにある綺麗な庭園に連れて行ってくれる。
(お兄様……妹をお姫様抱っこしてくれるなんて、なんとお優しい! あぁ、これはますます惚れちゃいます!)
シュウカンは、庭園のベンチに私をゆっくりと降ろすと、静かに横に座った。
「ソア、少し見ない間にさらに綺麗になったね」
「キャア! お兄様ったら!」
ふへへへ。
そうであろう、そうであろう。
ソアは元々美少女だが、ここ一年の間でさらに美しさに磨きがかかった。
今の自分の姿とはいえ、鏡を見ているだけで涎が出るわい。
(転生で美少女の姿になってありがたいけれど、実際の中身はただの日本人学生だから、ついソアを客観的に見てしまう)
育った環境とか根本的な性格とかはそうそう変わるものじゃないし、ソアを褒められるのは嬉しいけれど、それが=自分っていう風にはならないところがまた、内心複雑なところね。
まぁ、それはそれとして、私は久しぶりに兄との会話を楽しんだ。
できれば二人で腕を組んで、街を散策したり兄妹でイチャイチャと甘やかされたかったが、彼はまだ公務中だ。
これぐらいにしないと、迷惑がかかってしまう。
「……そうだ、ソアにこれをあげる」
「まぁ、なんでしょう?」
「さっき余興用にって、道具屋の主人からいただいたんだけど、俺が使うよりもソアにあげた方が面白いかなって。興味があったら使ってみて」
「はい! ありがとうございます、お兄様」
この推し兄からもらえるものならば、なんであっても最高だ~の一言に尽きる。
私は受け取ったアイテムをじっと見た。
これは、日本の忍者がよく使う煙玉の見た目に似ているが、前にライライを助ける時に役立った、一日だけ変身できるパーティグッズである。
(あ、これでこっそり香桜の姿に変わったら、ちょっと面白いかもとか思っちゃった……本当に誰も気づかなかったりして……)
特に、リオの反応が見ものだ。
はてさて気がつくかな?
無理だろうなぁ……人種から何からまるで違うし。
「ソアと素敵な時間を過ごせて楽しかったよ。たまにはリペンドール家にも顔を出してね」
「こちらこそです、お兄様。公務頑張ってくださいませ」
私は兄にお礼を行って別れ、再び船で小島から出た。
明るめのレンガで造られた建物が、整然と並べられている美しい街並みだ。
並んだ建物の間に入るのは、石が敷き詰められ舗装された道などではなく、穏やかに流れている水路のみである。
ここは浄化装置がうまく働いているのか、街の中の水はとても澄んでいて、小魚もゆらゆらと泳いでいるのが見えるほどに透明だ。
いくら綺麗な街だからといって、いつまでも入口で見惚れているわけにはいくまい。
私たちは小船に乗って、街の中心にある広場まで渡った。
「ソアはギルドに行くんだろ? 俺はこの街の領主にちょっとだけ顔出してくるわ。一応、親族だもんで」
「おっけー」
了解了解です。
どうやらリオは、東側に住んでいらっしゃる親戚のお貴族さんに会いに行くようだ。
つまり、ここで一旦コンビ解散っすね。
ならば私は、今から自分のペースで行動するのみ。
広場から正面にある大きな橋を進んだら、一際大きくて目立つ、派手な建物の前に着いた。
この建物こそが、この街のギルド本部であり、様々な冒険者や旅人が行き交う交流の場でもある。
私は聖獣の目撃情報を目当てに、ギルドの中へと入った。
ここのギルド内部はかなり広々としている。
わりと賑やかだが、そこまで混雑しているほどではない。
さっそく私は、近くにある受付カウンターの女性に聖獣の話を伺うと、面白い話を聞くことができた。
しかもこれは、ごく最近入ってきて、まだあまり知られていない希少な情報なのだとか。
受付嬢から聞いた動物を、もし見つけることができたら、世紀の大発見となるかもしれない。
しかもそれをテイムなんかできちゃったりしたら、それこそ王様とかから表彰されたりして……。
(うひゃあ、そんなことになったらどうしよう……ギ、ギネスブックに載るかしら? って、この世界にギネス記録なんてものは存在していなかったわね)
私は受付の女性にお礼を言ってギルドから出た。
そして、街の中心広場に戻り、今度は小船で西に向かう。
西側の住宅街の中を船で進み、しばらく経つと離れ小島のような場所についた。
ここの小島には、この国の騎士団が駐在する建物があり、王都から派遣された騎士が適度に滞在しているのだ。
門の前にいる兵士に名前を告げると、私のことに気がついたのか、すぐにシュウカンを呼びに行ってくれる。
(私ってけっこう有名人だったりするのよね……ナターリア関連やリオとの関係性から)
白くて大きな建物から、一人の騎士が駆け足でこちらに向かってきた。
シュウカン・リペンドール……ソアとよく似ている青色の髪に、まつ毛が長くキリッとしたグリーンの瞳を持つ、リアル王子様のような彼は、ソアの実の兄である。
「ソア、久しぶりだね。まさか、シャームの街で会えるとは思わなかったよ」
「お兄様、お久しぶりですね! お会いできて嬉しいです!」
私は兄が門から出てくると同時に、喜びのあまり彼に飛びついた。
シュウカンは私を軽々と抱き上げると、そのまま小島の外れにある綺麗な庭園に連れて行ってくれる。
(お兄様……妹をお姫様抱っこしてくれるなんて、なんとお優しい! あぁ、これはますます惚れちゃいます!)
シュウカンは、庭園のベンチに私をゆっくりと降ろすと、静かに横に座った。
「ソア、少し見ない間にさらに綺麗になったね」
「キャア! お兄様ったら!」
ふへへへ。
そうであろう、そうであろう。
ソアは元々美少女だが、ここ一年の間でさらに美しさに磨きがかかった。
今の自分の姿とはいえ、鏡を見ているだけで涎が出るわい。
(転生で美少女の姿になってありがたいけれど、実際の中身はただの日本人学生だから、ついソアを客観的に見てしまう)
育った環境とか根本的な性格とかはそうそう変わるものじゃないし、ソアを褒められるのは嬉しいけれど、それが=自分っていう風にはならないところがまた、内心複雑なところね。
まぁ、それはそれとして、私は久しぶりに兄との会話を楽しんだ。
できれば二人で腕を組んで、街を散策したり兄妹でイチャイチャと甘やかされたかったが、彼はまだ公務中だ。
これぐらいにしないと、迷惑がかかってしまう。
「……そうだ、ソアにこれをあげる」
「まぁ、なんでしょう?」
「さっき余興用にって、道具屋の主人からいただいたんだけど、俺が使うよりもソアにあげた方が面白いかなって。興味があったら使ってみて」
「はい! ありがとうございます、お兄様」
この推し兄からもらえるものならば、なんであっても最高だ~の一言に尽きる。
私は受け取ったアイテムをじっと見た。
これは、日本の忍者がよく使う煙玉の見た目に似ているが、前にライライを助ける時に役立った、一日だけ変身できるパーティグッズである。
(あ、これでこっそり香桜の姿に変わったら、ちょっと面白いかもとか思っちゃった……本当に誰も気づかなかったりして……)
特に、リオの反応が見ものだ。
はてさて気がつくかな?
無理だろうなぁ……人種から何からまるで違うし。
「ソアと素敵な時間を過ごせて楽しかったよ。たまにはリペンドール家にも顔を出してね」
「こちらこそです、お兄様。公務頑張ってくださいませ」
私は兄にお礼を行って別れ、再び船で小島から出た。
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