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九十話「筆頭公爵ヴュルデ・アインス」②
しおりを挟むーーアインス公爵視点ーー
国王は知らないだろう、私がどれだけ憤っているかを。
私は許していない。
躾の出来ていない性欲の強いバカ王子が、ザフィーアにしたことを。
王太子はザフィーアという婚約者がいながら神子の色仕掛けにひっかかりザフィーアを裏切った。神子にそそのかされザフィーアをパーティー会場で断罪した。
王太子だけではなく、神子も許せん。
神子は王太子をそそのかし、ザフィーアに有りもしない罪を着せ大勢の前で断罪し、ザフィーアを傷つけた。それだけでは飽き足らず、牢屋にいるザフィーアをならず者たちに襲わせ汚そうとした。
この国にいてはいずれザフィーアは辱めを受ける。私はザフィーアを死んだことにして隣国に逃がす決断をした。
王が不在なので王太子に掛け合い、筆頭公爵家の権力を使い取りしらべと言うなの拷問をなくし、ザフィーアを王都からの追放処分にし、国外れの教会に幽閉することにした。
神子の魔の手からザフィーアを守るため、ザフィーアには冷たい態度を取るしかなかった。
ザフィーアが神子の手の者に襲われないよう、牢屋の外で一晩中見張りをした。
神子は筆頭公爵である私が直に牢屋の番をするとは思っていなかったのだろう。一晩中見張りをした甲斐があり、ザフィーアの身を守ることができた。
神子は執念深い性格で性根が腐っている。理由は分からないがザフィーアを目の敵にし、汚す事に妄執している。
牢でザフィーアを陵辱することに失敗した神子は、ザフィーアを移送する兵士を買収するだろう。
私の予想通り神子は兵士を買収し、移送中のザフィーアを輪姦してから殺せという命じた。
おのれ神子め! 私の息子をどこまで傷つければ気が済むのだ!
ザフィーアを移送する兵士は三人。そのうちの一人アモルドは、昔からザフィーアを神のように崇拝していた。
彼ならばザフィーアを守ってくれるだろう。
アモルドをこちら側につけ、移送中に他の二人の兵士を殺し、ザフィーアを連れて隣国へ逃げるように命じた。
神子には逃げようとしたザフィーアと兵士が斬り合いになり、全員谷底に落ちて死んだと報告する。この時期は雪解け水で川の水量が増えている、死体が見つからなくても誰も不振に思うまい。
ザフィーアは剣術の腕はからっきしだが、類まれな魔法の才がある。相打ちになったと報告しても疑問は持たれまい。
だがすべてが計画通りにいくことはなかった。数日後、青ざめた顔で帰ってきたアモルドから、ザフィーアは自ら崖に身を投げ自害したと聞かされた。
私は息子を守ることが出来なかった
アモルドは他の二人と口裏を合わせ、神子には「逃げようとしたのでザフィーアを斬った、死体は谷底に落ちた」と報告すると言っていた。
執念深い神子に報告するなら、ただ崖から落ちたと報告するより、斬ってから落ちたと報告した方が良いだろう。
アモルドは他の二人の兵士に「ザフィーア様を犯すことも殺すことも出来ず、自害されたと報告したら、神子様の逆鱗に触れ殺される。ザフィーア様は俺たちが殺し死体は谷底に落ちたと報告しよう」と言い、上手くいい含めたと言っていた。
二人の兵士も命は惜しいらしく、アモルドの言葉に従ったようだ。
谷底に落ちたザフィーアの捜索は、ボワアンピール帝国の皇太子の力を借り、極秘に行う。
縛られたまま谷底に落ちては助からないだろうが、万に一つでも生きているの可能性があるなら、その可能性を無視することはできない。
そして今日、ボワアンピール帝国の皇太子からザフィーアが生きているという知らせが届いた。
ザフィーアが生きていることが分かり、どれほど安堵したこたか。
結局アモルド以外の兵士は神子の不興を買い殺されたが、嘘の報告が露見するリスクが下がり、こちらとしては好都合だ。
見目の良いアモルドだけは命を奪われずにすんだが、神子に捉えられ性行為を強要されている。
教会の教えを厳格に守るアモルドには、望まぬ相手と結婚前に性行為するなど、焼きごてで太ももを焼かれるより辛い仕打ちだろう。
ザフィーアを崇拝しているアモルドには、死ぬことより辛い仕置きかもしれん。だが家族を人質にされているので、死ぬことも許されない。
アモルドには悪いが、そのまま神子と性的な関係を持っていてもらおう。
その上でアモルドには、神子が不貞を働いた証人になってもらう。
首を洗って待っていろ神子!
◇◇◇◇◇
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