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4 騎士と破壊のお姫さま編

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 前回の全体会議の翌日。

 意識不明だった第四師団長が復活したらしい。
 その報を受け、さっそく第四師団長含めた会議がもたれた。

 復活といっても、意識が戻っただけだろうに。昨日の今日で、会議なんて出て大丈夫なの?

「上位竜種だからな」

 事も無げに言うラウ。

「魔力が尽きて寝てただけだ。寝てるんだから意識なんてあるわけないだろ」

 え? そういうもの?

「たいていものは寝れば治る」

 …………上位竜種、コワい。




「そういうわけで、まずは第四師団の立て直しからだ」

 集まった面々を前にして、総師団長がそう切り出した。

 昨日は情報共有や話し合いの色が濃かったため、正副師団長に副官と勢揃いした会議だったが、今日は師団長ともう一人くらいの人数でおさまっている。
 第四師団長含めての、今後の動きの確認程度だからだろう。

 第六師団はラウと私とでの参加だ。

 スヴェート関連のこともあるし、それにカーネリウスさんはルミアーナさんなしではまだ少し頼りない。
 それもあっての私の参加だ。

 昨日、またもや私の隣に座れなかったから、私の隣に座りたくて私を参加させたのではない。

 真横に座らされて、ベッタリくっついているように見えるのも、きっと、気のせいだ。

 私が隣のラウにちょっとだけ気を取られているうちに、話は進む。

 進んでみたところで、昨日、説明されたことを、第四師団長と話を詰めていくだけなので、ほぼ確認作業。

「いつも通り、俺と人事班で話し合って、応募者から選抜する形でいいんですか?」

「その予定だ。募集は内外一斉に始めるが、内部の選定が終わってから、外部の選定を始める」

「分かりました」

「あと、今回の件を受けて、重要人物の警護の見直しも行うことになったよな。その人員の募集と選定も同時に行う」

「第三師団の増員ということですか?」

「その通りだ」

 どうやら護衛師団である第三師団も、人員の拡充が行われるようだ。

 そして、復活したばかりだというのに、大変そうな第四師団長。口に出すとラウが拗ねるので言わないけど。

 それでも、受け答えはしっかりしているし、体調は問題なさそうだ。
 とはいえ、まだ魔力の流れが不安定だし、魔力量が衰え気味なところもある。そこはおそらく、寝れば治るんだろう。

 うん、上位竜種、コワい。
 回復具合が常人離れしている。

 うん? 私はどうだったっけ?

 昔から病気ひとつしないし、ケガもしないからな。何を食べてもお腹壊さないしな。
 このへんは、丈夫な身体にしてくれた元親に感謝しとかないとな。

 最初に魔力が尽きたときは、私も延々と一週間も寝ていたらしい。こういうところは、赤種も竜種と似ているのかも。

「それじゃあ、後は細かいところだな」

 それから、細かい段取りやら、自分の師団から志願者が出たらどうするか、などなど、説明と質疑応答が続いた。

 第六師団は、皆の話を聞いているだけ。
 うちからも志願者が出たら、どうするのかな。

「ラウは質問しなくていいの?」

 心配になって、ラウの耳元でこそこそと囁いてみた。
 ラウはくすぐったそうな、それでいて何とも嬉しそうな顔をして、私の疑問に答える。

「第六師団から他に移りたいやつなんていないぞ、フィア」

「え? そうなの?」

「他がダメで、うちに来たやつしかいないからな」

「え! そうなの!」

「だから、他から拒否されるんだ」

 うん、理由がヤバかった。

「他に、何か質問は?」

 会議室が静まる。
 もちろん、とんでもない理由で、第六師団も質問なし。

「ならば、以上だ」

 総師団長の締めの言葉で、全体会議は終了となった。
 後は募集が内外に公示され、必要に応じて全体会議や個別の会議となるようだ。




「紫竜、まだ本調子じゃなさそうだな」

 全体会議が終了して、ラウと二人で、復活したばかりの第四師団長の席に行ってみた。

「あぁ、まだ眠いよ」

「これから忙しくなるんだから、よく寝とけよ」

「あぁ、そうする」

 ラウの背後から、ちょこんと顔を出して、ラウと第四師団長との会話を聞いていると、

「よう、紫竜に黒竜」

 横から声をかけられた。第五師団長だ。

 私だけ声がかからない。

 のではなく。

 勝手に、他の伴侶に声をかけてはいけない。これが公の場でのルールなんだって。

 だから、第五師団長も、もちろん初めに声をかけた第四師団長も、私に対しては目礼をしている。

 後からやってきた第五師団長は、気だるそうな第四師団長とは違って、はつらつとしていた。

「機嫌、良さそうだな、銀竜」

「奥さんと仲直りできたんだね」

「あぁ、よく分かったな」

「「そりゃあな」」

 第五師団長のところ、夫婦喧嘩してたのか。
 竜種は皆、愛妻家だって話だけれど、何が原因でケンカなんてするものなのかな。

「あぁ、トリシーちゃんと観劇してきたんだ!」

「良かったね」「良かったな」

 第五師団長は奥さんの話になると、キャラが崩壊する。
 威圧感抑え目のクールな様相がぶっ飛んで、デロ甘系の完全にヤバい人。

 今も、恐ろしい勢いで奥さんのサイコーなところを列挙している。ヤバい。

 第五師団長のヤバさに引いて、ラウの背後に隠れたところで、奥さんの話から別の話に切り替わってくれた。

「黒竜、見に行ったか? シュタム劇場で大人気のやつ!」

「いや。そんなに流行ってるのか?」

「知らないのか? 奥さんや彼女と見に行くのに絶好のタイトルだぞ」

 何々? 何の話?

 大人気の言葉に釣られて、私は再び、ラウの背後から顔を出した。

「俺、今、それどころじゃないから」

「あぁ、悪い悪い。身体、まだ休めた方がいいよな」

「それじゃ、また」

「あぁ、ゆっくり休めよ」

 そうだよね。最初にまだ眠いって言ってたよね。

 帰っていく第四師団長に目を向けると、他の人たちも少しずつ帰っていくのが見えた。

 まだ会議室に残っているのは、総師団長に第二師団長、第八師団長に第一塔長くらい。

「第四師団長さん、まだ、だるそうだったね」

 私はラウの真横に移動して話しかける。

「まぁ、仕方ないな」

「スヴェートの魔法、かなりダメージあったんだね」

 私の発言を聞き、なぜだか、顔を見合わせるラウと第五師団長。

「フィア、覚えてないのか?」

「何を?」

「君、第四師団チームと対戦したよね?」

 真顔で話しかけてくる二人。

 これでも赤種だ。記憶力には定評があるし、あの対戦を忘れるわけがない。

「精霊王が三体も出てきたやつね」

「フィアが精霊王を二体、つぶしたじゃないか」

「うん、つぶしたね」

 思いの外、あっさりつぶせたよね。

「そのせいで、紫竜のやつ、魔力がごっそり削られたんだよね」

 え?

「それもあって、スヴェートの取るに足らない魔法に引っかかってな」

 嘘?

「残ったわずかな魔力を、根こそぎ持ってかれたみたいなんだよね」

 本当に?

「精霊王を二体もつぶされたのが、致命的だったよな」

「精霊王をつぶされるなんて、ないからね。それも二体同時に。いい経験になったんじゃない?」

「つまり、第四師団長の不調って、私のせい?」

「「だな」」

「えーーー」

 聞きたくない事実を知ってしまった瞬間だった。
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