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食べるか眠るか(7)
しおりを挟む結局、三人でエレベーターに乗り、沈黙したまま下まで降りてきた。
エントランスから出ると、一ヶ月ぶりに出る外。
ずっと部屋にいたせいか、ひどく眩しく見えた。晴れていて日差しが強い、それもあるかもしれないが。
「雪哉、本当に大丈夫なのか? 目的地まで車で送って……」
「目的地なんかねえって。わかってるだろ?」
遮るように言うと、白鳥が心配そうなまま黙る。
それに、雪哉にはまだ一つ聞かなければならないことがあった。
「……そういや、お前の嫁どうなったんだよ」
「嫁……由里子のことか」
あのときは他人のことなんてどうでもいいと思っていた。今でも基本そうだが、雪哉に少しでも原因でもあるのなら知っておくべきだと思ったのだ。それに、白鳥は少なくとももう他人ではない。
「離婚したんだ。今はもう、彼女にも別に大切な人がいる」
別に面倒ごとが降りかかってくることを懸念していたわけではないが、円満に解決したから大丈夫だと白鳥が付け加えた。
「……そうか」
すると突然、
「雪哉……俺はまだ、雪哉のことを想っていてもいいか」
と、全く持って話は変わり、そんなことを言い出した。
しかし、何かを期待している顔ではない。
……全く、ただ想うことに許可など必要ないのに。
だから、雪哉はいつもの自分でいることにした。
「別に、好きにすれば」
そう言ってやれば、白鳥の表情が明るくなった。
「それに、これで完全に縁が切れるわけでもないし」
珍しくフォローしてやると、白鳥がえっ、と驚く。
「ちょっと待て、いや……てっきりこれでもう終わりだと思っていたから。ありがとう、雪哉。……それから、この一ヶ月、本当にすまなかった」
白鳥は少し微笑みながら、でも申し訳なさそうに眉を下げた。
自分たちは恋人でも友人でもない。大きすぎる感情はいらない。だから、礼も謝罪もこれくらいでいい。
雪哉は体を翻す。
「じゃあ、もう行くから。世話になったな」
「ああ、じゃあな」
歩き出すと、白鳥もそれ以上ついてくることはない。
雪哉も振り向かずに、先の角を曲がってしまえば、姿は見えなくなった。
────のだが、
「……なんでついてくんだよ、奏斗」
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