私達は結婚したのでもう手遅れです!

椿蛍

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番外編

彼女へのお土産

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旅行の醍醐味。
それはお土産を買うこと!!
いざ、出陣!
頭の中で法螺貝ほらがいの音が響く。

「寄るところ、寄るところで買いすぎだろー!」

観光バスのお年寄り達に混じって、真剣にお土産を選ぶ私を見て竜江さんが呆れた様子で言った。

「ここでお土産ポイントがラストなんですよ!」

私のわくわく旅行のしおりに従って、冬悟さんはちゃんと行動してくれた。
私にお土産うんぬん言っている竜江さんだけど、しっかり楽しんでいたことはわかっているんですよ!
酒造とワイナリーに寄った時なんて、仙崎さんと竜江さんはお酒が好きらしく、真剣に見ていた。
ワイナリーはとても素敵だった。
レンガ造りのワイナリーのそばにリンゴ園が広がって、青い葉を茂らせていて、レストランがあった。
そこはチェックが甘かった私。
次はリンゴの季節に来て赤い実を眺めながら、食事を楽しみたい。
冬悟さんと二人で(重要)
ワインに詳しくない私でも雰囲気を楽しんでいると、『たくさん買っていただきありがとうございます。お嬢ちゃんに自家製のリンゴジュースどうぞ』と言われて、経営者らしい老夫婦から一瓶いただいてしまった。
ちょっとお嬢ちゃんに引っかかったけど、迫力ある三人といたらお嬢ちゃん呼びされてしまうのもうなずける。
そんなワイナリーで竜江さんが一番張り切っていたのを私はしっかりこの目で見ているんですよ!!

「竜江さんだって、ワインと日本酒、たくさん買ってたじゃないですか」

「別にいいだろ!それくらい!」

「カード払いしてたくせに」

「俺はそこだけ!ワイナリーだけだし!」

「そんな言い逃れできると思っているんですか?もしかして、彼女さんですか?特別に包装してもらっていたのをみていたんですよ?」

珍しく竜江さんが言葉に詰まった。
ふっ……!
人妻となった私。
そんな私の目をごまかせるとでも思ったら、大間違いなんですよ。
珍しくうろたえる竜江さん。

「竜江さん、彼女がいるんですね」

「ま、まぁなー」

「どんな彼女なんですか?」

「美人で性格がきつめで俺に冷たい」

「えっ!それって竜江さんだけに冷たいんじゃ……」

思い当たることがあるのが、竜江さんは顔色を変えた。

「そんなわけあるかっ!」

がしっと両肩をつかんで揺さぶられた。

「ぎゃー!」

私の悲鳴にゴスッと冬悟さんの鋭い蹴りが背後から竜江さんに入った。

「羽花になにをしているんだ。お前は」

「い、いてぇー!ち、違うんですよ。羽花さんがひどいことを俺に言うから!」

「言ってません。事実です!」

「彼女が俺だけに冷たいとか言うから」

竜江さんは哀しい目をしていた。

「竜江はそんな女がタイプなんだろう?本当にお前はマゾいな。ほら、羽花。ご当地キャラクターのキーホルダー」

「あっ!買うの忘れるところでした」

「小学生か」

竜江さんがさっきの仕返しとばかりに言ってきた。

「わかってないですね。こういうのがいいんですよ。そうだ。百花にも買って行ってあげよう」

「えっ!?百花―――百花ちゃんもそういうの好きなのか?」

「そうですよ。女子に人気のキャラクター、ご当地グッズは私も百花も憧れだったから」

竜江さんは真剣な顔をしていた。

「早く言えよ!」

なぜか叱られた。
けれど、竜江さんに構っている場合じゃない。
ご当地キャラグッズはいろいろあるから、厳選しなくちゃ。
一番可愛いのを買うんですよ!

「ひとつでいいのか?全部、買えばいいだろう?」

「揃えていく過程を楽しむんです。旅行にくるたびに一つずつ買おうと思って」

「可愛いな、羽花は」

「そんなことないです!」

私と冬悟さんがイチャイチャしていると、竜江さんがご当地キャラのボールペンやお菓子を買っていた。
冷たいという彼女へのお土産だろうか。
竜江さんの彼女って大人な女性のイメージだったけど、違うのかな。

「実用的なものなら断れないだろうしな……」

ぶつぶつと竜江さんがボールペンを真剣に眺めていた。
あの目は本気だ。
今まででふざけた人だと思っていたけど、彼女へのお土産選びは真剣なんですね。

「どんな女の人なのかな」

「なんだ。竜江の女が気になるのか?」

「はい。冬悟さんは知ってますか?」

「いや、知らないな。あいつは女をすぐに変えるからな。本気なら俺に紹介するだろ」

「本気なら……本気じゃないのに女の人と付き合うのはよくありません!」

「俺は羽花だけだぞ」

「えっ!?あ、ありがとうございます」

お礼を言ったけど、私が言ったのは竜江さんだ。
もしかして、あのご当地キャラクターグッズで女の人を誘惑する気じゃ?
遊び相手にされてしまうとか?
なんて不誠実な!

「竜江さん。そんな可愛いキャラクターを黒い策略に使わないでくださいね」

「黒い策略って、冬悟さんじゃあるまいし。俺なんか、冬悟さんに比べたら素直で可愛い竜江だ」

「竜江」

冬悟さんに凄まれて竜江さんは慌てて否定した。

「冗談、冗談っすよ!」

またよけいなこと言って竜江さんは冬悟さんに叱られていた。
懲りてないんだから。
最後のお土産ポイントも終わり、旅行はすべて終わった。

「冬悟さん。旅行、すごく楽しかったです」

「そうか。よかった」

「また行きましょうね」

「ああ」

窓を開けると涼しい風が入ってきた。
田植えがすんだ青い田んぼを眺める。
いつもと違う風景も楽しかった。
眺めているうちに眠くなり、冬悟さんに寄りかかって眠ってしまっていた。

「竜江。お前が付き合っている女のことだが―――」

まどろむ私の耳に冬悟さんの話しかける声が聞こえた。
竜江さんにきっと注意をしてくれているんだと思って、ほっとした。
さすが冬悟さん。
頼れる私の旦那様ですね。
安心して眠ろう。
意識が遠のき、私はそれ以上三人の会話を聞いていなかった。
けれど、ちゃんと聞いておけばよかったと後々、後悔した。
この時の私は旅行から帰った私が竜江さんが買ったのと同じボールペンを身近なところで目にすることになろうとは、思いも寄らなかったのだった。
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