目が覚めたらゲームの世界にいるようです―帰るためにゲームクリアを目指す!!―

月詠世理

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ある日の僕、ある日の小人(22話)

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 ある日、1人の小人がいた。大きな独り言が聞こえてきている。これは不貞腐れているのだろうか。

「チィのせいだ。我は仕事をこなしていただけなのに、まとめ役から大説教を喰らった。3ヶ月分の減給もされた。すべてチィのせいだ!! ええい、突っ立ってないで我のクエストの手伝いをするが良い。泣いて喜べ!!」

 まったくもって反省の色が見られない。自ら行ったことを棚に上げて僕のせいにするフーラさん。危険なクエストを人に振っておいて手伝いを要求する開き直りもすごい。呆れる意味で。

「泣いて嫌がりはするけど、喜ぶようなことは一切ないよ。フーラさんのせいで死ぬかもしれなかったし」
「あまり過去を振り返るものではないぞ? 今、チィは生きている。それがすべてだ。だから、我は許される」
「いやいや、許されないから。生きてるから問題ないってことじゃないよ!?」
「うるさいぞ。我の稼ぎは減る。その分はクエストで稼ぐしかない。チィのせいで我はこんなことをする羽目になった。しばらくは面倒を見てもらわねば困る」

 図々しいな。それに、僕の命より金の心配かよ。フーラさんのせいで危機的な状況に陥ったのに。「ごめんなさい」と謝ることはできないものか。謝られたところで許すわけではないが。求めすぎなのかもしれないけれど、何か一言でもあればいいのに、と思ってしまう。

「手伝えとか面倒を見ろとか言う前に、何か言うことはないんですか?!」
「すまなかったな。さっさと手伝えっ!! チィの手続き全般を行ったのは我だぞ? 恩は返してもらうわねばな」

 謝罪が軽い。気持ちがまったくこもってない。こんな悪びれない謝罪を僕自身がされる側になるとは思ってもいなかった。ツッコミたいところは他にもあるが……。

「それがフーラさんの仕事だったでしょ! 恩も何もないわ。僕に酷いことした自覚ないでしょ?」
「チィ、何を言っておる? もともとは我ではなくイールの仕事だ。それにな、我はチィを信じていた。必ず生きて帰ってくると! だから、信じて待っていた我を手伝うべきだ!!」

 白々しい。ものっすごく嘘くさい。もっとマシな言い分があっただろうと白い目で見てしまう。それに、僕が覚えていなといとでも思っているのだろうか。クエストを合格した後に向かった小人ノ事務所で僕と会った時の一言目が「生きていたのか」だったことを。この言葉があったのに、「信じてた」なんて言えるのがすごいや。
 それと、確かに窓口1番の人が初回手続を行うとされているが、それを無視してやりたいようにやったのはフーラさんだよ。本来なら、灰色の帽子を被った小人のイールさんがやるべきことだった。早く手続き終わらせてやるって言って自ら行動したのはフーラさんだったんだけどな。責任転嫁は良くないよ。

 掲示板を見ていたはずが、僕はなぜこんなことに巻き込まれているのか――。
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