俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

文字の大きさ
148 / 239
第一部 決闘大会編

百四十八話

しおりを挟む
「インサイド……内側……う~ん」

 俺は、床にゴロンと転がった。
 指に挟んだ紙を電灯に透かす。……別に、針で穴が開けてあるとか、あぶり出しってわけでもねえらしい。
 二見から渡されたメモ……どういう意味だろう。
 テスト中も、自主練の最中も、寮に帰って来てからも。「インサイド」って何のことか、ずーっと考えてみてんだけどさ。

「なにが内側なんだ?」

 そういや俺、当てものクイズとかヘタッピだからなあ。イノリと一緒にやったら、もうちょい出来んだけど……。
 
「ええい!」

 足を振り上げて、ふりこの反動で起き上がる。
 だめだ。
 こりゃ、わからん。

「インサイドキックなら、分かんだけどなっ」

 フォームを作って、ぶん、と黄金の右を素振りした。机の脚に、したたかに小指をぶっつける。

 のわーー!

 悶絶し、部屋中をピョンピョン飛びはねた。
 間抜けな俺をよそに、夜は更けて行く……。








――バシン!

 くわん、と頭が揺れる。
 一瞬、何が起きたかわかんなくて、ジンジンする頬を押さえる。
 目の前の男にぶっ叩かれたって、やっと気づいた。
 こいつ、こないだ下駄箱であった奴だ。

「嘘つきッ!」

 鬼の形相で、相手は叫んだ。分厚いバインダーを握りしめる手が、わなわなと震えてる。

「――嘘つき! 嘘つき! 嘘つき!!」
「ちょ、何のことだよ?」

 俺はめっちゃ困惑しながら、問い返す。
 出会い頭にぶん殴られて、「嘘つき」なんてひでえじゃん。
 って言ったら、相手はますます激昂する。

「しらばっくれて……卑怯者! お前が、お前が桜沢くんに言ったくせに!」
「へっ? イノリ?」

 なんでイノリが出てくんのよ。
 で、俺が何かを言ったって、どういうこと? ますます意味が分かんない。
 ポカンとしていると、相手がバインダーを振り上げた。

「うぎゃ!」
「お前が! お前が、桜沢くんに悪口言ったんだろ! 僕を勝手に悪者扱いしてッ! ――桜沢くんに嫌わせようとしたんだろッ!? じゃなきゃ、――あん、あんなこと、桜沢くんが言うわけないッ!!」
「ちょ、あだっ! やめろって!」
「卑怯者!――卑怯者! 死んじまえ、馬鹿野郎!」

 凄まじい泣き声に、罵られまくった。
 その間にも、バインダーが無茶苦茶に振り下ろされる。腕に、肩に鈍い痛みが走る。
 俺は、ボクサーよろしく腕でガードして、叫んだ。

「やめろってばっ!」

 一瞬のスキを突いて、バインダーを弾き飛ばす。ギュンギュン回転して、靴箱の上をすっ飛んでいった。――ああ、そうだ、ここは昇降口だ。放課後で、だから誰もいないんだ。
 相手は、悔し気に顔を歪めている。
 夕焼けに照らされて、充血した目が真っ赤に光っていた。
 俺は、なるたけ荒ぶらせないように、話しかける。

「……あのさ、よくわかんねえけど誤解だよ。俺、イノリになんか言ったとかないよ。だって――」
「うるさい」

 聞けよなぁ!?
 俺の言葉を遮って、相手はカラカラの声で言う。

「お前のせいだ。お前がいなきゃ……」

 ブツブツ呟いて、ふらふら歩き去って行く。
 俺は、慌てて靴を替えると、昇降口を出た。

「――!」

 校庭まで出て、一度、後ろを振り返る。
 と、誰か背の高い人影に、彼が駆け寄ったのが見えた。






――ズキッ。

「……!」

 目が覚めた。
 ハッとして、左腕を見る。
 また、カーテンから突き出た「腕」に、何か突き立てられている。

 田野先生! 絶ってー、夢じゃないと思うけどなぁ!?
 
 俺はまた、気を失った。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

オム・ファタールと無いものねだり

狗空堂
BL
この世の全てが手に入る者たちが、永遠に手に入れられないたった一つのものの話。 前野の血を引く人間は、人を良くも悪くもぐちゃぐちゃにする。その血の呪いのせいで、後田宗介の主人兼親友である前野篤志はトラブルに巻き込まれてばかり。 この度編入した金持ち全寮制の男子校では、学園を牽引する眉目秀麗で優秀な生徒ばかり惹きつけて学内風紀を乱す日々。どうやら篤志の一挙手一投足は『大衆に求められすぎる』天才たちの心に刺さって抜けないらしい。 天才たちは蟻の如く篤志に群がるし、それを快く思わない天才たちのファンからはやっかみを買うし、でも主人は毎日能天気だし。 そんな主人を全てのものから護る為、今日も宗介は全方向に噛み付きながら学生生活を奔走する。 これは、天才の影に隠れたとるに足らない凡人が、凡人なりに走り続けて少しずつ認められ愛されていく話。 2025.10.30 第13回BL大賞に参加しています。応援していただけると嬉しいです。 ※王道学園の脇役受け。 ※主人公は従者の方です。 ※序盤は主人の方が大勢に好かれています。 ※嫌われ(?)→愛されですが、全員が従者を愛すわけではありません。 ※呪いとかが平然と存在しているので若干ファンタジーです。 ※pixivでも掲載しています。 色々と初めてなので、至らぬ点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。 いいねやコメントは頂けましたら嬉しくて踊ります。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

その告白は勘違いです

雨宮里玖
BL
高校三年生の七沢は成績が悪く卒業の危機に直面している。そのため、成績トップの有馬に勉強を教えてもらおうと試みる。 友人の助けで有馬とふたりきりで話す機会を得たのはいいが、勉強を教えてもらうために有馬に話しかけたのに、なぜか有馬のことが好きだから近づいてきたように有馬に勘違いされてしまう。 最初、冷たかったはずの有馬は、ふたりで過ごすうちに態度が変わっていく。 そして、七沢に 「俺も、お前のこと好きになったかもしれない」 と、とんでもないことを言い出して——。 勘違いから始まる、じれきゅん青春BLラブストーリー! 七沢莉紬(17) 受け。 明るく元気、馴れ馴れしいタイプ。いろいろとふざけがち。成績が悪く卒業が危ぶまれている。 有馬真(17) 攻め。 優等生、学級委員長。クールで落ち着いている。

処理中です...