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第一部 決闘大会編
百四十九話
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絶っ対、おかしいって。
俺はシャーペンを動かしながら、むっと眉間に皺を寄せた。
左手で問題用紙をめくる。
肘は、痛くもかゆくもなくて。そんでも、痣がもう一個増えていたりする。
そもそも、俺は昨夜ベッドに入った覚えがねえんだよな。
記憶のある限りじゃ、ドテラを羽織って、机に向かっていたはずで。
また寝ぼけて、ベッドに潜り込んだってこと?
いや。いくら俺でも、色々あった後だから。無意識に行くほど、ベッドが愛おしくはない気がする。
じゃあワンチャン、佐賀先輩がベッドに運んでくれたとか。
先輩、机で寝てたりすると、「ちゃんと布団で寝ろや」って怒るし。怖えーけど、面倒見良いんだよ。
でも、朝になんにも言われなかったんだよなぁ……。
「はい、残り十五分ねー」
「ああっ!」
悶々と考えてるうちに、時間がとんでもないことになっていた。
俺は、泡を食って問題に食らいついた。
「ふぃー」
ちょっとアクシデントあったけど、午前は無事に終わった。たぶん。
305のいつもの席で、俺はうーんと伸びをする。
イノリが来れねえってわかってても、つい来ちまうんだよなぁ。なんかこの部屋、すげえ落ち着くんだもん。
ふあっと欠伸が出た。
ああ、眠い。
めずらしく、考え事なんかしたせいかなあ。
とはいえ、午後からもテストだ。
姫子先生の薬学の試験だってある。かなり長丁場らしいから、しっかり食べてパワー溜めねえと。
ちくわパンとあんパンをぱくぱく食って、緑茶を飲んで。
「よしっ。テストの準備すっか」
気合を入れて、ノートを開く。
授業プリントをわさわさ漁って、今日作る薬の手順の確認をする。ノートに手順の書き洩らしがないか、チェックしてく。さすがに教科書は駄目だけど、ノートは持ち込んでオッケーなんだって。
「……ふあ」
欠伸を、口の中でもごもごかみ殺す。
真冬と言えど、今日はいい天気だ。ノートのページに日差しが当たって、目が擽られる。
シャーペンを無意味に握り直したり。座ったまま、タタタとステップワークしてみたりして。
そんな抵抗もむなしく、いつしか俺は眠りに落ちていた。
「……ん」
なんか、ぽかぽか暖かい。
あと、優しく米神を梳かれてるような。
きもちいい……。
天国みてぇ。
うとうとと、微睡む。
「――桜沢さん、早くしてください」
「……………もー、静かにしてよぉ。起きちゃうでしょー……」
んっ?
ふいに聞こえてきた声に、意識がふっと浮上する。
ええと、寝てたんだっけ。昼休みで……。
てか今、イノリの声しなかった?
「あ!?」
「わっ」
がばぁ! と身を起こす。
と、目を丸くしたイノリが、軽くのけ反っていた。
亜麻色の髪が、ぱさりと揺れる。
え、嘘。
「い、い、イノリ!?」
「ん。ごめんねぇ、起こしちゃった」
「いやいやいや。なんで? なんでいんの?」
俺は、喉がカラカラになる。
だって、しばらく来れねえって言ってたじゃん!
あっ、そうだ。
もしかして、これこそ夢だろうか?
思わず手を伸べて、イノリの頬をぎゅっとつまんでやる。
「ひょ、いひゃいよー」
「ぬくい。本物……?」
すべすべしてる。何気に感心していると、涙目になったイノリに、手を放された。手首を握るでっかい手から、じんわり熱が伝わってくる。
信じらんない気持ちで、ふあと間抜けな声が出る。
なんか、よくわかんねえけど。
どきどき胸が鳴りだして。俺はぎゅっと拳を握った。
俺はシャーペンを動かしながら、むっと眉間に皺を寄せた。
左手で問題用紙をめくる。
肘は、痛くもかゆくもなくて。そんでも、痣がもう一個増えていたりする。
そもそも、俺は昨夜ベッドに入った覚えがねえんだよな。
記憶のある限りじゃ、ドテラを羽織って、机に向かっていたはずで。
また寝ぼけて、ベッドに潜り込んだってこと?
いや。いくら俺でも、色々あった後だから。無意識に行くほど、ベッドが愛おしくはない気がする。
じゃあワンチャン、佐賀先輩がベッドに運んでくれたとか。
先輩、机で寝てたりすると、「ちゃんと布団で寝ろや」って怒るし。怖えーけど、面倒見良いんだよ。
でも、朝になんにも言われなかったんだよなぁ……。
「はい、残り十五分ねー」
「ああっ!」
悶々と考えてるうちに、時間がとんでもないことになっていた。
俺は、泡を食って問題に食らいついた。
「ふぃー」
ちょっとアクシデントあったけど、午前は無事に終わった。たぶん。
305のいつもの席で、俺はうーんと伸びをする。
イノリが来れねえってわかってても、つい来ちまうんだよなぁ。なんかこの部屋、すげえ落ち着くんだもん。
ふあっと欠伸が出た。
ああ、眠い。
めずらしく、考え事なんかしたせいかなあ。
とはいえ、午後からもテストだ。
姫子先生の薬学の試験だってある。かなり長丁場らしいから、しっかり食べてパワー溜めねえと。
ちくわパンとあんパンをぱくぱく食って、緑茶を飲んで。
「よしっ。テストの準備すっか」
気合を入れて、ノートを開く。
授業プリントをわさわさ漁って、今日作る薬の手順の確認をする。ノートに手順の書き洩らしがないか、チェックしてく。さすがに教科書は駄目だけど、ノートは持ち込んでオッケーなんだって。
「……ふあ」
欠伸を、口の中でもごもごかみ殺す。
真冬と言えど、今日はいい天気だ。ノートのページに日差しが当たって、目が擽られる。
シャーペンを無意味に握り直したり。座ったまま、タタタとステップワークしてみたりして。
そんな抵抗もむなしく、いつしか俺は眠りに落ちていた。
「……ん」
なんか、ぽかぽか暖かい。
あと、優しく米神を梳かれてるような。
きもちいい……。
天国みてぇ。
うとうとと、微睡む。
「――桜沢さん、早くしてください」
「……………もー、静かにしてよぉ。起きちゃうでしょー……」
んっ?
ふいに聞こえてきた声に、意識がふっと浮上する。
ええと、寝てたんだっけ。昼休みで……。
てか今、イノリの声しなかった?
「あ!?」
「わっ」
がばぁ! と身を起こす。
と、目を丸くしたイノリが、軽くのけ反っていた。
亜麻色の髪が、ぱさりと揺れる。
え、嘘。
「い、い、イノリ!?」
「ん。ごめんねぇ、起こしちゃった」
「いやいやいや。なんで? なんでいんの?」
俺は、喉がカラカラになる。
だって、しばらく来れねえって言ってたじゃん!
あっ、そうだ。
もしかして、これこそ夢だろうか?
思わず手を伸べて、イノリの頬をぎゅっとつまんでやる。
「ひょ、いひゃいよー」
「ぬくい。本物……?」
すべすべしてる。何気に感心していると、涙目になったイノリに、手を放された。手首を握るでっかい手から、じんわり熱が伝わってくる。
信じらんない気持ちで、ふあと間抜けな声が出る。
なんか、よくわかんねえけど。
どきどき胸が鳴りだして。俺はぎゅっと拳を握った。
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