俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第一部 決闘大会編

百六話

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 ほんと言うとさ。
 いろいろ忘れてるっぽいこと、あんまり気にしてはなかったんだ。
 覚えてなくても、生活に支障はなかったし。だったら、無理に思い出さなくてもいっかなぁって思ってた。
 けど、いざ二見に教えてもらうって決めたら、なんかスッキリしたぞ。
 俺は貰ったメモを手帳に挟み込んで、ポケットにしまう。

「ところでさあ、吉村くん。大丈夫なわけ」
「へ、何が?」

 ニコニコとソファに座ってると、書類をコピー機にかけながら二見が言った。

「教科書とか無いと不便っしょ。なんか当てあんの?」
「あ!」

 俺は、ハッとして立ち上がる。
 そうだった。風紀で、教科書を借りられないか、聞くつもりだったんだ! 俺は慌てて、二見に事情を打ち明ける。
 図書室の教科書が全部貸し出し中だって話をしたら、二見は目を丸くしていた。

「でさ、風紀室は忘れ物の貸し出ししてるって聞いて……良かったら、貸して貰えねえかな?」

 パン、と手を合わせてお願いする。二見は気の毒そうな顔になった。

「ごめん。貸してあげたいのは山々なんだけど、無理」
「えっ、何で?」
「いやあ、それがさ。ちょうど最近、忘れもの箱の整理しちゃって、もう何もないんだよね」
「ええ?!」

 ぎょっと目を見開いた。
 二見いわく、白井さんが忘れ物の箱を整理していたらしく。
 中に教科書があるのを見つけて「試験期間なのに困るだろう」って、持ち主に返しに行ってあげたんだって。
 そんで、どうせだから他のも何とか手分けして、持ち主のところへ返したんだそう。

「めっちゃ親切じゃん!」
「でしょ?」

 得意げに髪をかき上げる二見に、手をパチパチ叩く。いや、すげえよ。持ち主の人、嬉しかっただろうなあ。

「けど、吉村くんにはごめんね。教科書、貸してあげられなくて」
「あっ」

 申し訳なさそうに言われて、我に返った。
 マジだ、どうしよう……。










 階段を降りながら、うーんと考え込む。

「――教科書のことは、僕が貸せるものは貸しだす」

 葛城先生に相談すると、そう言ってくれた。けど、先生だって教科書使うだろうし、そう甘えてもらんねえ。
 とはいえ、ダチにだって借りられない。だって、授業の時間だって被るのに、教科書持ってくなんて、ふつうに強盗だもんな。
 ああ、どうしよう。

「まったく、ひでえことするぜ!」

 ぷんすか怒りながら歩いていると、前から体操服の集団がやってくる。ジャージの色からして、一年だ。
 邪魔になんないように端に避けると、人波の中に森脇を発見する。

「森脇~」
「あ、よ吉村くん」

 手をぶんぶん振ると、森脇がパッと顔をあげた。はにかんで、弾むように手を振り返してくれる。
 移動中だから、立ち止まったりできねえけど。近づいたときに、ちょっと言葉を交わす。

「いまから演習?」
「う、うん。吉村くんは?」
「俺は数学! 頑張ってな」
「あっありがとう!」

 森脇は、なんども振り返りながら、歩いて行った。笑って手を振ると、くさくさした気分がどっかに消えていく。
 よし、俺も授業へ行くぞ。
 意気揚々と、足を踏み出したとき。――また、チリッ、と項が熱くなる。
 
 ドンッ。

「わあっ!」

 いきなり横っ腹を押され、バランスを崩した。ドタドタと千鳥足で階段を駆け下りて、ぼてっと踊り場に膝をつく。
 あ、危ねええ。高いとこじゃなくてよかった……!
 ドッドッと早鐘を打つ胸を押さえ、振り返ると。
 やいやい騒ぎながら去って行く、ジャージの集団の背中が見えた。
 なんか、見覚えがある。――そうだ、E組のバンドやってそうな奴らだ! 
 あいつら、まさか俺のこと押した? いや、でも。
 だとしたら、何でって話だよな?

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