*婚前なれそめファンタジー* 盟主は手綱を握りたい! ※ 猜疑心強めのいじわる盟主は、光の溺愛男に進化する ※

保志見祐花

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第60話「愉快・不愉快・居場所ない」(1P)

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 ────それは、毎月の業務。
 会費回収とご機嫌伺いの時間。



 総合服飾工房オール・ドレッサービスティーの軋む扉をそっと引き 音を殺して声を聞く。



 店の奥から聞こえる、男女の声。



「……他のところでもやってるんじゃないだろうな?」
「付き合ってくれる人などおらん!」
「…………だろうな」



 いつもの店。
 いつもの工房。


 女性だけで穏やかに営む総合服飾工房オールドレッサー


 
 しかし今日
 そこで花開いていたのは
 見慣れた男われらがボスと、女店員の会話だった。



 思わず目を見張る光景・・・・・・に、

「────こんにちは、失礼します」
 スネークは、すまし顔をそのままに高らかに声をかける。


 まるで『見ていますよ』と言わんばかりの、響く声で。



「……スネークさん!」
「こんにちは、ミリアさん」
「…………! …………」









 その日 昼の3時を回った頃。
 「商工会組合長」スネーク・ケラーが声をかけると
 縫製服飾工房オール・ドレッサービスティにいた男女は、全く違う反応を見せた。




 自分の声掛けに立ち上がったミリアという女店員。
 素早く表情を殺した様子の青年ボス



 明と暗。
 歓迎と拒絶。
 はっきりと分かれた対応を、すました瞳で嘗め回すと



(…………ほう、これはこれは。
 なるほど、そうですか)



 ”愉快”と言わんばかりに僅かに口元を緩ませ、呟いた。



 商工ギルドと互いの利益のために連携を組んでいる
 組織「ラジアル」のボスが
 『お誂え向き』を見つけたのは知っていた。





 しかし、どこの誰かまでは────
 今までも、そして今回も
 絶対に漏らすことはなかった。



 のに。



 スネークは、店の中。
 順々に


 ────ミリア

 ────ボス 

 と 二人交互に視線を送る。
 



 狙いを澄まして微笑みかけるのはミリアの方。
 彼はにこにこと帽子をぬぐと、それを胸に置き口を開く。



「──ミリアさん。
 お取り込み中、申し訳ありません。
 集金に参りました」
 

 しれっと。
 言って退けてみせる糸目のスネーク。


 彼の視界の外側
 地味~~~……に感じる『圧』には、当然
 気づかないふりをして。



「あ、はいはい集金ですね!
 いつもお疲れ様です♪」
「いえいえ。ミリアさんこそ。
 ドレスの見立てからクリーニングの修繕まで、ご苦労様です」
「ふふふ、仕事ですから~♡」

 
 カウンターに手を突きながらくすくす笑うミリアに、まずはねぎらいの一言。


 コツコツと床を鳴らして近づく自分に、店の奥
 ボスはこちらを見向きもしない。




 そんな二人をスネークは
 様子を窺うように目で舐めると



「────お邪魔でしたか?」
 気を使った風に問いかける。

 
「あ、いえいえ! ぜんぜん!」
 その問いに、瞬間的に手と首を振るミリアと対照的に



「…………」
 表情を動かさぬエリックボス



 その様子に、
(────それは、そうでしょうね)
 愉快だと言わんばかりに呟いた。




 ボスの性格は知っている。

 スパイ組織のボスで
 猜疑心も警戒心も強く、決して群れることのない男。


 『一匹狼』と表現するのが適切な『隙のない男』。
 組織のトップとして『配下』はいるが、群れて何かをすることはない。



 余計な情報の一切を排除し
 物事に対して、最適な答えを導き出す男だ。


 盟主『エルヴィス』として接したこともあるのだが、これはこれで見事な仮面の被りっぷりだった。



 盟主エルヴィスの
 煌びやかでニコニコとした笑顔の下に滲ませる


 ”誰にも隙は見せない”
 ”本音など、見せてたまるか”
 そう、言わんばかりの『壁』と『棘』。



 だからこそ『今』・『この状況』は『愉快』で仕方ない。




 ビスティ内をするりと見渡し、
 先ほどまで喋っていたのが嘘のように、ただじっと黙りこくるボスをもう一度


 その目線で舐め 



 スネークは
 ミリアの言葉にわざとらしく目を丸くし小首を傾げると



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