いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)

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アルフと犯人

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    アルフとサイラスはアッカー家に戻る為に馬車へ乗っていた。
   午後は過ぎて夕方前だ。もうじき着く。


「あの〇〇□は館に居る者だと思ってるんだ。」

「どうしてだ?」

「義兄上の尻に執着してるから。」

「………。」

   何故尻で?サイラスは困惑するしかない。

    と、車窓から遠目に、アッカー家の裏口から
こそこそと人が出て来るのが見えた。

「アルフ、裏口から人が出て来た。あの書き込みも嘘ばかりでは無かったようだぞ。」

「…何?」

   アルフも車窓から外を見た。

「女か?」

   サイラスは目を凝らす。

「いや…あれは女の格好をしているが、男だな。」

「何?!女装か?!そいつが犯人に違い無い!」

   アルフは動いている馬車から飛び出した。


「お…おいアルフ!!」

「坊っちゃん方?!」

   御者が狼狽うろたえているが仕方ない。

「すまない!アルフを追いかける!」


   サイラスも飛び降りたが、少し走った所で悲鳴が聞こえた。

「何だ?!ああもう …アルフも心配だが仕方ない!どこだ?!」

    サイラスは悲鳴の聞こえた方へ走った。
すると、遠くに荷馬車が見える。
゛勘゛としか言えないが、その馬車が怪しく見えた。

    追いつくのは骨が折れそうだが、追いかける事にした。

―――――――――――――――――――

   アルフは裏口から出て行った人影を追いかけた。
   案外足が速い。

「くっ!逃がすか!」

足に力を込めて速度を上げる。
まったく、サイラスは何処へ行ったんだ?!
弓を射てくれれば、足止めできるのに。

「仕方ない!」

    剣を引抜き、さやを思いっ切り投げた。
ガツンと見事に人影へヒットした。

「何だっ?!」

「止まれ!!不審者め!!」

すぐさま飛び掛かり、蹴り上げ、
地面に倒した所へ剣を突き出し、立上がらないよう威嚇する。

「捕まえたぞ!変態が!」

「くっ…!好きで女装している訳では無い!
普段は男装で、この仕事用の変装だったのに…
何故分かった?!」

「僕を侮るな。僕は、アッカー家を守る為にここへ来た!」

    暫しばし睨み合いが続く。

「私をどうするつもりだ。」

「もちろん罪を償なってもらう。簡単に許されると思うなよ。」

    フフフ…女装男は笑った。

「アッカー家とこの国は安泰だろうよ…。
   次代がバカだと言うから、簡単にこの領を、我が国が掌握しょうあく出来ると思ったのにな…。」

「バカだから手に入れられるとは、甘く見るな…ん?…領…??」

「まったく、その通りだった。
ここで捕まるとはな…もうちょっとだったのに。」

「…ん?」

    途中から会話が府に落ちないものの、
アルフは女装男をしっかり縛り上げ、義父の元へ引っ立てた。


「でかしたぞアルフ!!スパイを捕まえるなんて…アッカー領だけでなく、国も守ったな!
    王より直々に労いを下さるそうだぞ!王の覚えもめでたく、アッカー伯爵家は安泰だ!」

    ……狙いと違ったと言えずに、アルフは苦笑いするしかなかった。

「あの、義父上…
    何や間やで陽も沈んでしまいましたが、義兄上とサイラスを見かけませんでしたか?」

「その2人なら、何故か町に居るようで、
もう遅いから泊まると連絡をもらったぞ。」

「はぁ?!」

    サイラス…居なくなったと思ったら、
何で義兄上とお泊まりなんだよ?!


無い!ありえ無い!!


「ずるい……!!」

    その晩アルフは義父と義母に褒められながらも、うらやましくて泣いた……。



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