いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)

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デニスとサイラス

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    サイラスの勘は当たっていて、追いかけた荷馬車は、デニスを乗せた荷馬車だった。

    荷馬車はアッカー領の水路へ向かっていた。
バロードはそこから一気に船で逃げるつもりだったが、デニスのエロい姿に馬車を止めてしまった。


――にじり寄ってくるバロード。
デニスは逃げようともがき、馬車から転がり落ちた。

「わぷっ!」

    水路の近くには水溜まりも多い。
デニスは水溜まりに落ち、水を被ってしまった。

――濡れて気持ち悪い。

   こんなに動いても、縄はまだ外れない。

   ガタガタと震え、涙が溢れる。


「まったく、こんなに愛してるのに、
    なんで逃げるのかな?」

    バロードが近付いてくる。

    その時、1本の矢が天から飛んで来て、二人の間に刺さった。


「動くな!!何をしている?」

男がこちらを睨んでいた。
矢を構え、バロードに向けたままやって来る。

   (か…カッコいい!!)

 …デニスには、男に後光が差して見えた。

    水路のきらめきを背負って、真っ直ぐにバロードの目を射ぬく。

   その輝きに見惚れた。ドキドキと心臓が煩く鳴る。


「だ…誰だお前は!」

「サイラス=スライだ。
    …もう1度聞く、何をしている?」


(助けてくれようとしてる?)

   デニスは胸が熱くなった。


「そ…その人は私のモノだ!
    何をしようと構わないだろう!!お前こそ…
    ん?…待て、サイラス=スライ?」


       ――ヒュン!―――


    サイラスが矢を放った。
    矢は見事にバロードの髪、1本だけを吹っ飛ばした。

「な…な……ひゃぁぁぁ?!
    サイラス=スライってもしかして、 あの女神の祝福のサイラスか?!
     ……無理ですっ!敵いません!!」

バロードは恐怖に引きつった顔で逃げて行った。


(…助かった……!!)

    デニスはほっとして力が抜けた。

そこへ
弓を納めながら、サイラスが近付いて来る。

「あ!」

 今さらながら、
 尻を上げたとんでもない姿な事に気付いた。

 みっともなくて暴れたら、
あんなに頑固だった縄があっさりズレて、
今度は胸の辺りを締め上げ、乳首をツンと見せるような、反り返ったポーズになった。

「……やっ…やだっ…!!」

何で何で?!また涙が溢れる。


と、サイラスが言った。

「女神だ……。」

「?!」




―――荷馬車を追いかけていたサイラスが見たものは、荷馬車から転がり落ちた゛何か。゛

   その゛何か。゛はヒラヒラと羽のようなフリルに、丸く玉子のように綺麗に持ち上がった尻。


     普通に考えれば滑稽なはずだったが、サイラスにはとても美しく見えた。

    ――目に涙を溢れさせ、ぽたぽたと水滴を滴らせている。――

    水路の光を受け、さながら妖精の羽化……いや、神話で聞く、女神の誕生シーンのように見えた。


     あんなに神々しくて美しいものに、不埒な者が近付こうとしている…!
     思わずサイラスは弓を構え打ち放った。

(俺は女神の祝福を受けし腕、と呼ばれる者。)

    ならば、あれは俺の女神だ。そう思ったのだ。


     不届き者を追い払って近付くと、女神は涙をこぼし羽化した。
    玉子の姿から人の形へ。


――このタイミングの良さ!
       やっぱり、俺の女神に違い無い!―――

    浮かれたサイラスは歓喜して、女神に膝まづいた。


「生まれたての女神様。…貴方が好きです。
    俺を愛して頂けませんか?」


    サイラスは穏やかな水音がする中、
女神(勝手に認定)に微笑みかけ、愛を乞うた。


   デニスはサイラスを、天の戦士のようだと思った。
   光を纏い、弓を構え、人を助ける天の戦士。
今回はオレを助ける為に来てくれた…。

「オレも…貴方が恋しい…。
    貴方に愛して欲しいです。」


    その返事をもらって、
    サイラスはデニスを強く抱きしめた。

    どちらともなく顔を寄せて

    思いを込めて口付けをした。



    ……ロマンチストぶりは互角だった。


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