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第一章
51.新しい妃3
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数日後――
「そこをどきなさい!!」
目の前にいるのは郭婕妤。
彼女は通り道を塞ぐようにして立っていた。
「お久しぶりです。謹慎は解けたのですね」
「ふん!ちょっとしたことなのに一々煩いのよ、あのおばさん!お陰で長いこと謹慎させられる羽目になったわ」
それはそうでしょう。
あの徳妃と揉め事を起こしてどうして何もない、と思えるのか何故だわ。しかも、自分の方が格上だと勝手に思い込んでいるらしく尊大な態度も相変わらずだった。何故か私を敵視しているのも謎だわ。こちらとしては迷惑極まりない。関わりたくないのでさっさと立ち去ろうとしたのだが腕を組んで阻まれる。
「なに勝手に立ち去ろうとしてるのよ!」
え?
何、この子?
人の話を聞かないタイプなの?
十六歳と聞いてはいるけれど、なんだか年齢よりも幼く感じてしまう。そして、どうして何時も喧嘩腰なのかしら……。はぁ、と心の中で溜息をつきつつ向き直った時だった。
「おやめなさい、郭婕妤」
現れたのは郭貴妃。
彼女の姿を見て郭婕妤は表情を変え、先ほどまでの威勢のいい態度は何処へ行ったのか借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
「郭貴妃様……」
「巽才人、ごきげんよう。郭婕妤がごめんなさいね」
「いえ……」
その通りです、とは言えない。相手は貴妃。にっこりと優しく微笑みかける郭貴妃に対し私も笑顔を浮かべて挨拶をする。
「郭婕妤、貴女はあれほど叱ったというのに、まだ懲りずに他の妃と醜い争いをしていると聞きましたよ」
ああ……やっぱり。
懲りていなかったのね。予想通りの展開に何も言えない。普通、格上の徳妃を怒らせたんだから反省して大人しくしておくものだけど、この郭婕妤は妙な処で反骨精神があった。
それでも実の叔母である郭貴妃には逆らえないようで、彼女の言葉に郭家のドラ娘の顔色がみるみると青ざめていく。
「ち、違います!わ、私は何もしていません!」
郭貴妃に反論しようとした瞬間――
「嘘を言うのではありません。貴女の行動は侍女たちから逐一報告を受けています。現に今も巽才人の腕を掴んでいるではないですか」
「こ、これは……その……」
「言い訳は許しません。巽才人に謝りなさい」
厳しい声音で命じる郭貴妃に逆らえるはずもなく、けれど、よっぽど私に謝るのが嫌なのか口元をもごもごさせていた。
「わ、悪かったわ!!」
叫ぶように言うと、そのまま走り去ってしまう。
アレで謝罪したつもりなのだろうか?
あれでは余計に相手を怒らせるのでは?と思ってしまう。それでも、これ以上関わるつもりはなかった。ただでさえ、忙しいのに後宮内でのいざこざに巻き込まれるのは御免である。私もこのまま立ち去ってしまおうかと考えていると、郭貴妃が私の方を見て微笑んでいた。
「そこをどきなさい!!」
目の前にいるのは郭婕妤。
彼女は通り道を塞ぐようにして立っていた。
「お久しぶりです。謹慎は解けたのですね」
「ふん!ちょっとしたことなのに一々煩いのよ、あのおばさん!お陰で長いこと謹慎させられる羽目になったわ」
それはそうでしょう。
あの徳妃と揉め事を起こしてどうして何もない、と思えるのか何故だわ。しかも、自分の方が格上だと勝手に思い込んでいるらしく尊大な態度も相変わらずだった。何故か私を敵視しているのも謎だわ。こちらとしては迷惑極まりない。関わりたくないのでさっさと立ち去ろうとしたのだが腕を組んで阻まれる。
「なに勝手に立ち去ろうとしてるのよ!」
え?
何、この子?
人の話を聞かないタイプなの?
十六歳と聞いてはいるけれど、なんだか年齢よりも幼く感じてしまう。そして、どうして何時も喧嘩腰なのかしら……。はぁ、と心の中で溜息をつきつつ向き直った時だった。
「おやめなさい、郭婕妤」
現れたのは郭貴妃。
彼女の姿を見て郭婕妤は表情を変え、先ほどまでの威勢のいい態度は何処へ行ったのか借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
「郭貴妃様……」
「巽才人、ごきげんよう。郭婕妤がごめんなさいね」
「いえ……」
その通りです、とは言えない。相手は貴妃。にっこりと優しく微笑みかける郭貴妃に対し私も笑顔を浮かべて挨拶をする。
「郭婕妤、貴女はあれほど叱ったというのに、まだ懲りずに他の妃と醜い争いをしていると聞きましたよ」
ああ……やっぱり。
懲りていなかったのね。予想通りの展開に何も言えない。普通、格上の徳妃を怒らせたんだから反省して大人しくしておくものだけど、この郭婕妤は妙な処で反骨精神があった。
それでも実の叔母である郭貴妃には逆らえないようで、彼女の言葉に郭家のドラ娘の顔色がみるみると青ざめていく。
「ち、違います!わ、私は何もしていません!」
郭貴妃に反論しようとした瞬間――
「嘘を言うのではありません。貴女の行動は侍女たちから逐一報告を受けています。現に今も巽才人の腕を掴んでいるではないですか」
「こ、これは……その……」
「言い訳は許しません。巽才人に謝りなさい」
厳しい声音で命じる郭貴妃に逆らえるはずもなく、けれど、よっぽど私に謝るのが嫌なのか口元をもごもごさせていた。
「わ、悪かったわ!!」
叫ぶように言うと、そのまま走り去ってしまう。
アレで謝罪したつもりなのだろうか?
あれでは余計に相手を怒らせるのでは?と思ってしまう。それでも、これ以上関わるつもりはなかった。ただでさえ、忙しいのに後宮内でのいざこざに巻き込まれるのは御免である。私もこのまま立ち去ってしまおうかと考えていると、郭貴妃が私の方を見て微笑んでいた。
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