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~初恋の章~
第50話次期東宮
しおりを挟むこの年の春に、兄の一の宮が次期東宮に決まった。
日本語が妙だけど、間違ってない。まだ東宮じゃないからね。
今の東宮は僕の叔父上。
桐壺帝の同母弟だ。
この東宮が最近体調を崩しているらしく、近々『東宮位』を返上すると専らの噂。東宮には子供がいない事も理由にあるのだろう。先行きが不安だから、という事で東宮直々に異母兄を次期東宮に指名してきた。だから?というか母方の祖母からの文が届き始めた。
【一の宮よりも二の宮の方が全てにおいて優れているというのに、何故、帝は二の宮を東宮させなかったのでしょう。それもこれも有力な後見人がいなかったばかりに、このような悲劇に見舞われたのでしょう。後ろ盾さえ確かならば間違いなく二の宮が選ばれていたはずです。
我が娘は更衣の身分ではありますが、元は大納言の家系。本来ならば、女御にも引けを取らぬ身分でありましたものを……(以下略)】
延々と僕が次期東宮に選ばれなかった事を嘆いている文章だった。
ばー様はバカなの?
「大弐の乳母、おばば様は耄碌してるよ」
僕は手紙を大弐の乳母に見せた。
だって正気じゃないでしょ?こんな手紙送って。
もし、平安版の認知症なら早めに対策しないといけない。
「若君、二条の祖母君は四十歳を超えてらっしゃいますが、耄碌はされておりませんよ。手紙の内容から見て、若君が東宮に立たれる事を疑っていなかったようですね。それが一の宮様の時期東宮の知らせが入ったので落胆なさっているのです」
「いや、それは無理だよ。東宮は誰が見ても兄上が成るべきでしょう?血筋だって、後見人だって、才覚だって、次の帝に相応しいんだもの」
「それでも、桐壺の更衣様と若君に対する帝の寵愛は大変なものです。世間でも『もしかしたら』と随分噂されておりましたからね」
「いやいや、愛情だけでどうにかできる問題じゃないよ?後ろ盾がないってだけで侮られるんだもん。噂話を真に受けるなんて、おばば様もどうかしてるよ」
「そうおっしゃらないでください。御本人は本気なのですから」
めんどくせーババアだ。
婆といい、女房といい、母方関係にはまともな人がいないんじゃない?
身の程を知れ!!!
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