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元婚約者side
しおりを挟む施設にいた人間を一人残らず殴り飛ばした。
面白い。
少し力を入れただけで人間がボールのように飛んでいくんだ。壁に叩きつけられて人間は血をだらだら流してピクリとも動かない。
はははは!
いい気味だ!
僕をモルモット扱いした報いだ!
目の前に火柱がたつ。ちっとも熱くない。ガラスの破片がそこらかしこに落ちている。裸足だというのに痛みを感じない。違う。僕が踏むとガラスの方が壊れていくんだ。
崩れ落ちてくる天井も怖くない。
当たっても全く痛みを感じない。それどころか、天井そのものが僕に当たって砕けていく。
凄い、凄い、凄い!
僕は強いんだ!
誰も僕には勝てない!
外に出ると見知らぬ森だった。
まるで施設自体を隠すかのように気で覆われている。
久しぶりに見る月。
「美しいな。月ってこんなにキレイだったんだ」
白衣の男達は僕を「特別な人間」にしていた。
「王都は西か……」
夜行性の動物になった気分だ。
夜目が効くだけじゃない。目を凝らせば数千キロも離れた場所まで見える。
この力があれば。
「あいつ等に復讐が出来る」
僕を不幸に陥れた者達。
貴族でなくなった途端に手のひらを返した奴ら。
一切味方をしなかった人達。
「そもそもヘスティアが僕と婚約を解消するのがいけないんだ」
僕はちょっと勘違いしていただけじゃないか。「愛人を持つな」と言うなら、ヘスティアがもっと僕を構うべきなんだ。「公爵家の勉強が忙しいのです」って一緒に居る時間が減ったんだ。
何だよ、勉強って!
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ヘスティアがちゃんと僕を見てくれないからいけないんだ!
「やっぱり僕は悪くない。僕はただ寂しかっただけなんだ」
だから、あの程度の女で手をうったんだ。寂しさを埋めるために。ヘスティアがもっと僕を見てくれたら平民の女なんかに手を出さなかった!
こんな仕打ちを受けるなんて……間違ってる。
「絶対に許さない」
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